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れ、左様な際に受傷したとすれば創の状況と相照し最も適合すると思う旨の記載、

一 昭和十年八月十二日付陸軍一等軍医正竹内釼の作成に係る死体検案書中判示永田鉄山の創傷の部位程度に照応する記載、

一 同日付同軍医正の作成に係る死亡診断書中永田鉄山は昭和十年八月十二日午前十一時三十分陸軍省軍務局長室に於て刀創に因る脱血に依り死亡したる旨の記載、

一 同日付陸軍一等軍医出月三郎の作成に係る診断書中判示新見英夫の創傷の部位程度に照応する記載、

一 押収に係る軍刀一振 (証第一号) の存在

を総合考覈こうかくして之を認定す。

依て判示事実は其の証明ありたるものとす。

法律に照すに、被告人の判示所為しよい中永田少将に対し兵器を用いて暴行を為したる点は陸軍刑法第六十二条第二号に、同人を殺したる点は刑法第百九十九条に、新見大佐の上官たることを認識せずして同人の身体を傷害したる点は同法第二百四条に各該当する処、右用兵器上官暴行殺人及傷害は一箇の行為にして数箇の罪名に触るるものなるを以て、同法第五十四条第一項前段第十条に依り其の最も重き殺人罪の刑に従い其の所定刑中死刑を選択して処断すべく、押収に係る軍刀一振 (証第一号) は本件犯行に供したる物にして被告人以外の者に属せざるを以て、同法第十九条第一項第二号、第二項に依り之を没収すべきものとす。

よつて主文の如く判決す。

昭和十一年五月七日

〔第一師団軍法会議〕

裁判長 判士 陸軍少将 内藤 正一

裁判官  陸軍法務官 杉原 瑝太郎

裁判官 判士 陸軍歩兵大佐 木村 民蔵

〃〔裁判官判士陸軍〕 輜重兵大佐 立石 益太

〃〔裁判官判士陸軍〕 歩兵中佐 若松 平治