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ゆ故に今日稀に純粹アイヌの談話を耳にすることあれど一般兒童の如きに至りては凡て日本語を敎ゆるに至りぬ其言語風習共に各地方に於て多少の相違あるが故に之を一樣に記述する能はず何となれば一村落一地方の眞事實必ずしも他部落の眞事實にはあらざるなり、されば凡てを通じて其正鵠を得んとすることは現代記者に取ては尤も至難の業なり。

 余は武隈氏の努力を慶賀すると同時に氏が一層勉勵の上將來更に一大著述を以て世に貢献せられんことを衷心より切望して止まず。

 アイヌ敎師たる氏は大なる責任と幾多善行をなすべき立派なる機會を有するものにあらずや。