Page:Ainu monogatari takekuma.pdf/22

提供:Wikisource
このページは検証済みです
著者より發行者に送りたる自書[1]
  1. 入力者注:以下に文字起こししたものを示す。
    拝啓
    時節柄益〻繁栄の趣き奉賀候
    扨て小生ハ元來土人に生れ土人敎育に志し大正三年以來之に從事致し居り候世上土人に関する著書出版致され候もの種々有之候へども土人の實况を穿ちたるもの少く誠に遺憾に存候に付拙文を顧みず「アイヌ物語」と題し聊か著述いたし度旣に起草中に有之候
    尤も物語のみならず土人敎育上の狀態其に他土人研究者の参考と相成る事をも記する心得に御座候
    土人は今尙憐むべき境遇に有之候之が救濟には世上有志諸賢の御同情と御助力とを仰ぐの外無之と存候
    拙著は小形の本にて約百頁內外寫眞等も多少挿入すべき豫定に御座候
    右に付出版販賣等御店に御依賴致し度幸に御承諾下され候はゞ詳細御恊議いたすべく候
    先は右御同申上候

    草々

     二月十六日

    武隈德三郞

    中村信以殿