Page:旧朝鮮半島出身労働者問題をめぐるこれまでの経緯と日本政府の立場 (ファクトシート).pdf/2

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とが確認されたことから、本年1月9日、日本政府は、旧朝鮮半島出身労働者問題に関し、日韓両国間に、日韓請求権協定の解釈及び実施に関する紛争が存在することは明らかであるとして、韓国政府に対し、同協定第3条1の規定に従い、外交上の協議を正式に要請した。

4 1月9日以降、2月12日の督促を含め、累次にわたる我が国からの求めにもかかわらず、4か月以上、韓国政府は協議に応じなかった。また、原告側による日本企業の資産差押えの動きが進む中、5月1日には売却申請を申し立てた旨の発表が行われた。このような事情を総合的に勘案し、日本政府は、日韓請求権協定に基づく協議によっては本件を解決することができなかったものと判断し、本年5月20日、同協定第3条2に従い、この紛争を日韓両国が設置する仲裁委員会に付託するための公文を韓国政府に対して発出し、韓国との間に仲裁の手続を開始した。

5 日韓請求権協定第3条2及び同条3に従い、韓国は、この紛争に対応するために仲裁委員会の設置について義務を負っている。そのための手続の第一段階は、韓国政府が日本政府の公文を受領した日から30日の期間内に1名の仲裁人を任命することだったが、韓国政府はこれを行わなかった。加えて、韓国政府は、締約国に代わって仲裁委員を指名する第三国を選定する第二段階としての義務についても同協定に規定された期間内に履行しなかった。韓国が同協定第3条の手続に従わなかったことにより、5月20日に付託した日韓請求権協定に基づく仲裁委員会を設置することができなかったことは、極めて遺憾である。

6 なお、6月19日に韓国政府は、(1)「日韓両国の企業が自発的な拠出金により財源を造成し、確定判決の被害者らに慰謝料の該当額を支給することにより、当事者間の和解がされることが望ましい」、(2)「日本側がこのような内容を受け入れる場合、日本政府が要請した・・・協定第3条1の協議手続の受入れを検討する用意がある」旨の提案を発表した。

これに対し、日本政府としては、この韓国政府の提案について、韓国の国際法違反の状態を是正することにはならず、この問題の解決策にはならない、また、日本政府としては、韓国政府に対し、協定上の義務に従い仲裁に応じるよう求める立場に変わりはないとして、同提案を拒否した。

7 このように旧朝鮮半島出身労働者問題に関し、日本政府としては、法の支配を重視する観点から、日韓請求権協定に基づき解決すべく努力を重ねてきた。一方、韓国側は、昨年の一連の韓国大法院判決並びに関連の判決及び手続による日