『天地位し』位すといふのは其の處に安んするといふ意味。日月星辰の運行が其の度を失はず、風雨寒暑が其の度に合すること。
『萬物育す』民人及禽獸草木が各其の生を遂げ、育成すること。中庸に「中也者天下之大本山也。和也他者天下之達道也。致㆓中和㆒、天地位焉萬物育焉」と出てゐる。
『六合に照臨し』天下に君臨し給ふことで、六合とは天地四方をいう。
『宇內を統御す』天下を統御することで、尸子に「天地四方を宇といふ」と出てゐる。
『斯の道』上古神聖の立てられた道。
『寶祚』皇位。
『蒼生』民人。
『蠻夷戎狄……率服す』外國も相率ゐて服從する。三韓の朝貢、新羅王子及秦王の子孫が歸化した類を指す。支那では自國を中國と稱し、外國を方位に依つて東夷、西戎、南蠻、北狄と呼んでゐた。何れも之を賤んだ言葉である。
『聖子神係』御歷代の天皇。
『人に取りて……樂しむ』好んで他の善い處を取入れて己が資となすことを樂しみとした。孟子に『禹聞㆓善言㆒則拜。大舜有㆑大㆑焉。善與㆑人同。舍㆑己從㆑人、樂㆘取㆓於人㆒以爲㆖㆑善」と出てゐる。
『西土』支那。
『唐虞三代の治敎』唐は帝堯の姓、虞は帝舜の姓、三代は夏、殷、周の三朝をいふ。堯帝、舜帝、夏の禹王、殷の湯王、周の文王、武王、周公は何れも聖人で、此等の聖人の道を統合大成したのが孔子である。從つてここにいふ治敎とは孔子の敎と言つても儒敎といつてもよい。
『皇猷』天皇の御政治。猷は道又は謀の意。
『斯の道愈大に愈明かに』我が國の道は、元來日常行爲の間に自然に存してをつて、之に仁義忠孝友愛恭敬等の名義はついてゐない。儒道を取入れることになつて日常實踐の道に名義を結びつけ、且つ之を同化攝取して愈々宏大に愈々明瞭になつた。
『復た尙ふるなし』此の上につけ加へるものがない。
『中世以降』佛敎渡來以後をいふ。
『異端邪說』主として佛敎を指す。正しい道の外に別に一派を立てたものを異端と稱す。
『俗儒曲學』俗儒は大體に通ぜざる儒者、曲學は自信を枉げて人氣に阿ねる學者。
『此を舎て、彼に從ひ』正しい斯の道を捨てて、邪な異端に從ふ。