首のない男

提供: Wikisource
ナビゲーションに移動 検索に移動

Wikisource:文学 < 『死刑宣告

本文[編集]

首のない男
萩原恭次郎

   ● ●●●●●煙突
            屋根
              屋根
               黒ずんだ屋根の下で
        俺は麻酔者のやうな状態で
         見えない鎖を
    腰のまはりから引きち切つてゐる


獣のやうな瞳
   四角の肩の下にある乳房
鹿のやうな女をつれた紳士
  ——腐れた肺が胸にせはしく動いてゐる
  ——頬つぺたの青い林檎色
両側から噴き出す食糧品と香水の匂ひ

俺は オモチヤのやうに
  廻転つてゐる外景の下積みで
ア—————ア
●●●●●黒煙の街巷に
    今日から
  ? ? ? ? ? ? ? ? ?
俺は 俺は 俺は 俺は 俺は 俺は

「キ―サ―マ―ハ―タレダ!!」
 「摑首された
    荒れた都会の川底に
  蟹のやうに ネムルオトコ!
「恐怖と\
     \飢餓の食ひちがつた寝床で
  墓場へ 墓場へ
ハイ ユカウトオモツテ
         ユケナイ オトコ!」
ヅドンと 午砲が
  腹部とアタマの頂点で鳴つた!
外景が凹んで
   グルリと廻つた!

解題[編集]

作者:萩原恭次郎

底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1

表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。本文28行目から29行目にかけての斜線は原文では2行掛ける5文字にわたるものである。