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財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定

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財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定

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 日本国及び大韓民国は、

 両国及びその国民の財産並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題を解決することを希望し、

 両国間の経済協力を増進することを希望して、

 次のとおり協定した。

第一条

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1 日本国は、大韓民国に対し、

(a) 現在において千八十億円(一◯八、◯◯◯、◯◯◯、◯◯◯円)に換算される三億合衆国ドル(三◯◯、◯◯◯、◯◯◯ドル)に等しい円の価値を有する日本国の生産物及び日本人の役務を、この協定の効力発生の日から十年の期間にわたつて無償で供与するものとする。各年における生産物及び役務の供与は、現在において百八億円(一◯、八◯◯、◯◯◯、◯◯◯円)に換算される三千万合衆国ドル(三◯、◯◯◯、◯◯◯ドル)に等しい円の額を限度とし、各年における供与がこの額に達しなかつたときは、その残額は、次年以降の供与額に加算されるものとする。ただし、各年の供与の限度額は、両締約国政府の合意により増額されることができる。
(b) 現在において七百二十億円(七二、◯◯◯、◯◯◯、◯◯◯円)に換算される二億合衆国ドル(二◯◯、◯◯◯、◯◯◯ドル)に等しい円の額に達するまでの長期低利の貸付けで、大韓民国政府が要請し、かつ、3の規定に基づいて締結される取極に従つて決定される事業の実施に必要な日本国の生産物及び日本人の役務の大韓民国による調達に充てられるものをこの協定の効力発生の日から十年の期間にわたつて行なうものとする。この貸付けは、日本国の海外経済協力基金により行なわれるものとし、日本国政府は、同基金がこの貸付けを各年において均等に行ないうるために必要とする資金を確保することができるように、必要な措置を執るものとする。

 前記の供与及び貸付けは、大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない。

2 両締約国政府は、この条の規定の実施に関する事項について勧告を行なう権限を有する両政府間の協議機関として、両政府の代表者で構成される合同委員会を設置する。

3 両締約国政府は、この条の規定の実施のため、必要な取極を締結するものとする。

第二条

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1 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。

2 この条の規定は、次のもの(この協定の署名の日までにそれぞれの締約国が執つた特別の措置の対象となつたものを除く。)に影響を及ぼすものではない。

(a) 一方の締約国の国民で千九百四十七年八月十五日からこの協定の署名の日までの間に他方の締約国に居住したことがあるものの財産、権利及び利益
(b) 一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であつて千九百四十五年八月十五日以後における通常の接触の過程において取得され又は他方の締約国の管轄の下にはいつたもの

3 2の規定に従うことを条件として、一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であつてこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であつて同日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする。

第三条

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1 この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。

2 1の規定により解決することができなかつた紛争は、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各締約国政府が任命する各一人の仲裁委員と、こうして選定された二人の仲裁委員が当該期間の後の三十日の期間内に合意する第三の仲裁委員又は当該期間内にその二人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁委員会に決定のため付託するものとする。ただし、第三の仲裁委員は、両締約国のうちいずれかの国民であつてはならない。

3 いずれか一方の締約国の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかつたとき、又は第三の仲裁委員若しくは第三国について当該期間内に合意されなかつたときは、仲裁委員会は、両締約国政府のそれぞれが三十日の期間内に選定する国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員をもつて構成されるものとする。

4 両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。

第四条

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 この協定は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかにソウルで交換されるものとする。この協定は、批准書の交換の日に効力を生ずる。


 以上の証拠として、下名は、各自の政府からこのために正当な委任を受け、この協定に署名した。


 千九百六十五年六月二十二日に東京で、ひとしく正文である日本語及び韓国語により本書二通を作成した。

 日本国のために

   椎名悦三郎

   高杉 晋一

 大韓民国のために

   李 東 元

   金 東 祚

第一議定書

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 財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(以下「協定」という。)に署名するに当たり、下名は、各自の政府から正当な委任を受け、協定第一条1(a)の規定の実施に関し、協定の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。     

第一条

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 日本国が供与する生産物及び役務を定める年度実施計画(以下「実施計画」という。)は、大韓民国政府により作成され、両締約国政府間の協議により決定されるものとする。

第二条

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1 日本国が供与する生産物は、資本財及び両政府が合意するその他の生産物とする。

2 日本国の生産物及び日本人の役務の供与は、日本国と大韓民国との間の通常の貿易が著しく阻害されないように、かつ、外国為替上の追加の負担が日本国に課されないように、実施されるものとする。

第三条

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1 第五条1の使節団又は大韓民国政府の認可を受けた者は、実施計画に従い生産物及び役務を取得するため、日本国民又はその支配する日本国の法人と直接に契約を締結するものとする。

2 1の契約(その変更を含む。)は、(i)協定第一条1(a)及びこの議定書の規定、(ii)両政府が協定第一条1(a)及びこの議定書の実施のため行なう取極の規定並びに(iii)その時に適用される実施計画に合致しなければならない。これらの契約は、前記の基準に合致するものであるかどうかについて認証を得るため、日本国政府に送付されるものとする。この認証は、原則として十四日以内に行なわれるものとする。定められた期間内に認証が得られなかつたときは、その契約は、協定第一条2の合同委員会に付託され、合同委員会の勧告に従つて処理されるものとする。その勧告は、合同委員会がその契約を受領した後三十日以内に行なわれるものとする。この項に定めるところに従つて認証を得た契約は、以下「契約」という。

3 すべての契約は、その契約から又はこれに関連して生ずる紛争が一方の契約当事者の要請により、両政府間で行なわれることがある取極に従つて商事仲裁委員会に解決のため付託される旨の規定を含まなければならない。両政府は、正当になされたすべての仲裁判断を最終的なものとし、かつ、執行することができるようにするため必要な措置を執るものとする。

4 1の規定にかかわらず、生産物及び役務の供与は、契約によることができないと認められる場合は、契約なしで、両政府間の合意により行なうことができる。

第四条

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1 日本国政府は、第五条1の使節団又は大韓民国政府の認可を受けた者が契約により負う債務並びに前条4の規定による生産物及び役務の供与の費用に充てるための支払を、第七条の規定に基づいて定める手続によつて、行なうものとする。この支払は、日本円で行なうものとする。

2 日本国は、1の規定に基づく支払を行なうことにより、その支払を行なつた時に、その支払に係る生産物及び役務を、協定第一条1(a)の規定に従い、大韓民国に供与したものとみなされる。

第五条

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1 大韓民国政府は、同政府の使節団(以下「使節団」という。)を日本国内に設置する。

2 使節団は、協定第一条1(a)及びこの議定書の実施を任務とし、その任務には次の事項を含むものとする。

(a) 大韓民国政府が作成した実施計画の日本国政府への提出
(b) 大韓民国政府のための契約の締結及び実施
(c) (b)の契約及び大韓民国政府の認可を受けた者の締結する契約の認証を受けるための日本国政府への送付

3 使節団の任務の効果的な遂行のため必要であり、かつ、もつぱらその目的に使用される使節団の日本国における事務所は、東京及び両政府間で合意することがある他の場所に設置する。

4 使節団の事務所の構内及び記録は、不可侵とする。使節団は、暗号を使用することができる。使節団に属し、かつ、直接その任務の遂行のため使用される不動産は、不動産取得税及び固定資産税を免除される。使節団の任務の遂行から生ずることがある使節団の所得は、日本国における課税を免除される。使節団が公用のため輸入する財産は、関税その他輸入について又は輸入に関連して課される課徴金を免除される。

5 使節団は、他の外国使節団に通常与えられる行政上の援助で使節団の任務の効果的な遂行のため必要とされるものを日本国政府から与えられるものとする。

6 大韓民国の国民である使節団の長、使節団の上級職員二人及び3の規定に従つて設置される事務所の長は、国際法及び国際慣習に基づいて一般的に認められる外交上の特権及び免除を与えられる。使節団の任務の効果的な遂行のため必要があると認められたときは、前記の上級職員の数は、両政府間の合意により増加することができる。

7 大韓民国の国民であり、かつ、通常日本国内に居住していない使節団のその他の職員は、自己の職務の遂行について受ける報酬に対する日本国における課税を免除され、かつ、日本国の法令の定めるところにより、自用の財産に対する関税その他輸入について又は輸入に関連して課される課徴金を免除される。

8 契約から若しくはこれに関連して生ずる紛争が仲裁により解決されなかつたとき、又は当該仲裁判断が履行されなかつたとき、その問題は、最後の解決手段として、契約地の管轄裁判所に提起することができる。この場合において、必要とされる訴訟手続上の目的のためにのみ、使節団の法務部長の職にある者は、2(b)の契約に関し訴え、又は訴えられることができるものとし、そのために使節団における自己の事務所において訴状その他の訴訟書類の送達を受けることができるものとする。ただし、訴訟費用の担保を供する義務を免除される。使節団は、4及び6に定めるところにより不可侵及び免除を与えられてはいるが、前記の場合において管轄裁判所が行なつた最終の裁判を、使節団を拘束するものとして受諾するものとする。

9 最終の裁判の執行に当たり、使節団に属し、かつ、その任務の遂行のため使用される土地及び建物並びにその中にある動産は、いかなる場合にも強制執行を受けることはない。

第六条

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1 両政府は、生産物及び役務の供与が円滑かつ効果的に行なわれるため必要な措置を執るものとする。

2 生産物又は役務の供与に関連して大韓民国内において必要とされる日本国民は、その作業の遂行のため大韓民国への入国、同国からの出国及び同国における滞在に必要な便宜を与えられるものとする。

3 日本国の国民及び法人は、生産物又は役務の供与から生ずる所得につき、大韓民国における課税を免除される。

4 日本国により供与される生産物は、大韓民国の領域から再輸出されてはならない。

5 いずれの一方の締約国の政府も、日本国により供与される生産物の運送及び保険に関し、公正かつ自由な競争を妨げることがある他方の締約国の国民及び法人に対する差別的措置を、直接又は間接に執らないものとする。

6 この条の規定は、協定第一条(b)に定める貸付けによる生産物及び役務の調達についても適用されるものとする。

第七条

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 この議定書の実施に関する手続その他の細目は、両政府間で協議により合意するものとする。


以上の証拠として、下名は、この議定書に署名した。

 千九百六十五年六月二十二日に東京で、ひとしく正文である日本語及び韓国語により本書二通を作成した。


 日本国のために

   椎名悦三郎

   高杉 晋一

 大韓民国のために

   李 東 元

   金 東 祚

第二議定書

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 財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(以下「協定」という。)に署名するに当たり、下名は、各自の政府から正当な委任を受け、さらに、協定の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。

第一条

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 大韓民国は、日本国と大韓民国との間の清算勘定の残高として千九百六十一年四月二十二日の交換公文により両締約国政府間で確認されている日本国の債権である四千五百七十二万九千三百九十八合衆国ドル八セント(四五、七二九、三九八・◯八ドル)を協定の効力発生の日から十年の期間内に、次のとおり分割して返済するものとする。この場合においては、利子を附さない。

 第一回から第九回までの年賦払の額 各年四百五十七万三千合衆国ドル(四、五七三、◯◯◯ドル)

 第十回の年賦払の額 四百五十七万二千三百九十八合衆国ドル八セント(四、五七二、三九八・◯八ドル)

第二条

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 前条の各年の賦払金について大韓民国の要請があつたときは、その要請のあつた金額に相当する協定第一条1(a)の規定による生産物及び役務の供与並びに前条の規定による賦払金の支払が行なわれたものとみなし、これにより、協定第一条1(a)の規定による生産物及び役務の供与の額並びにその年の供与の限度額は、同条1(a)の規定にかかわらず、その金額だけ減額されるものとする。

第三条

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 第一条にいう日本国の債権の額の返済に関し、大韓民国は、第一回の年賦払を協定の効力発生の日に行なうものとし、第二回以降の年賦払を各年において第一回の支払期日と同一の日までに行なうものとする。

第四条

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 第二条の大韓民国政府の要請は、日本国の財政上の慣行を考慮して、前条の規定による支払期日が属する日本国の会計年度が始まる暦年の前年の十月一日までに、当該支払期日に支払われるべき賦払金について行なわれるものとする。ただし、第一回の支払(及び本文の規定によることができない場合の第二回の支払)についての要請は、協定の効力発生の日に行なわれるものとする。

第五条

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 大韓民国の要請は、第一条にいう各年の賦払金の全部又は一部について行なうことができる。

第六条

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 大韓民国の要請が第四条の規定による期日までに行なわれず、かつ、賦払金の全部又は一部の支払が第三条の規定による支払期日までに行なわれなかつたときは、その賦払金の全部又は一部について第二条の大韓民国の要請があつたものとみなす。


 以上の証拠として、下名は、この議定書に署名した。

 千九百六十五年六月二十二日に東京で、ひとしく正文である日本語及び韓国語により本書二通を作成した。


 日本国のために

   椎名悦三郎

   高杉 晋一

 大韓民国のために

   李 東 元

   金 祚 東

第一議定書の実施細目に関する交換公文

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日本側書簡

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 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日署名された財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(以下「協定」という。)の第一議定書(以下「議定書」という。)に言及する光栄を有します。日本国政府は、両国政府が議定書第七条の規定に基づいて次のとおり合意することを提案いたします。

I 実施計画

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1 議定書第一条の年度実施計画(以下「実施計画」という。)は、両政府がその始期及び終期を合意する年度について決定されるものとする。

2 実施計画の決定は、原則として次のとおり行なわれるものとする。

(a) 第一年度を除く各年度の実施計画は、その適用される年度の開始に先だつて決定される。このため当該年度の実施計画は、その年度の開始の少なくとも六十日前に協議のため日本国政府に提出される。

(b) 第一年度の実施計画は、協定の効力発生の日から六十日以内に決定される。このため同年度の実施計画は、できる限りすみやかに日本国政府に提出される。

3 実施計画は、当該年度中に大韓民国による調達が予定されている日本国の生産物及び日本人の役務を掲げるものとする。
4 実施計画は、両政府間の合意により修正することができる。

II 契約

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1 議定書第三条1の契約は、日本円で通常の商業上の手続によつて締結されるものとする。

2 議定書第三条2の契約(以下「契約」という。)の実施に関する責任は、議定書第五条1の使節団(以下「使節団」という。)又は大韓民国政府の認可を受けた者及び議定書第三条1の日本国民又は日本国の法人で、契約の当事者であるもののみが負うものとする。

3 議定書第三条3の適用上、商事仲裁委員会とは、契約のいずれか一方の当事者が仲裁への付託を要請した場合における他方の当事者が居住する国にある商事仲裁機関をいう。

III 支払

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1 大韓民国政府は、日本国の法律に基づき外国為替公認銀行として認可され、かつ、日本国民によつて支配されている日本国の銀行のうちから、議定書の実施に関する業務を行なう銀行を指定する。

2 使節団又は大韓民国政府の委任をうけた機関(以下「機関」という。)は、1に規定する指定銀行と取極を行ない、大韓民国政府の名義で特別勘定を開設してそれらの銀行に日本国政府からの支払の受領等を授権し、かつ、日本国政府に対しその取極の内容を通告するものとする。特別勘定は、利子を附さないものとする。

3 使節団又は機関は、契約の規定に基づいて支払の義務が生ずる期日前に十分な余裕をもつて、支払金額、2の指定銀行のうち支払が行なわれるべき銀行(以下「銀行」という。)の名称及び使節団又は機関が関係契約者に支払を行なうべき期日を記載した支払請求書を日本国政府に送付するものとする。

4 日本国政府は、支払請求書を受領したときは、使節団又は機関が関係契約者に支払を行なうべき期日前に、銀行に請求金額を支払うものとする。

5 日本国政府は、また、議定書第三条4の規定に従つて両政府が合意する供与に係る支払を、4に定めるのと同様の方法で、行なうものとする。

6 4及び5の規定に基づいて日本国政府が支払う金額は、特別勘定に貸記するものとし、他のいかなる資金も、特別勘定に貸記されないものとする。特別勘定は、3及び5の目的のためにのみ借記を行なうものとする。

7 使節団又は機関が特別勘定に貸記された資金の全部又は一部を契約の解除その他によつて引き出さなかつた場合には、未払金額は、両政府間の協議により3及び5の目的のための支払に充てられるものとする。

8 特別勘定から支払われた金額の全部又は一部が使節団又は機関に返還された場合には、その返還された金額は、6の規定にかかわらず、特別勘定に貸記するものとする。その返還された金額は、両政府間の協議により、3及び5の目的のための支払に充てられるものとする。

9 議定書第四条2の規定の適用上「支払を行なつた時」とは、支払が日本国政府により銀行に対して行なわれた時をいう。

10 日本国が議定書第四条2の規定に従い大韓民国に供与したものとみなされる生産物及び役務の額の決定に当たつては、日本円で支払われた金額から換算される合衆国ドルの等価額が計算の基礎となるものとする。前記の換算に用いられる為替相場は、日本国政府が正式に決定し、かつ、国際通貨基金が同意した日本円の合衆国ドルに対する平価で、次に掲げる日に適用されているものとする。

(a) 契約に関する支払の場合には、日本国政府が当該契約を認証した日
(b) その他の場合には、各場合につき両政府間で合意する日。ただし、合意した日がないときは、日本国政府が支払請求書を受領した日とする。

IV 使節団

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 大韓民国政府は、契約に関して使節団を代表して行動する権限を与えられる使節団の長その他の職員の氏名を日本国政府に随時通知するものとし、日本国政府は、その氏名を日本国の官報で公示するものとする。この使節団の長その他の職員の権限は、日本国の官報で別段の公示がされるまでの間は、継続しているものとみなされる。

 本大臣は、さらに、この書簡及び前記の提案の貴国政府による受諾を確認される閣下の返簡を、議定書第七条の規定に基づく議定書の実施に関する細目についての両政府間の合意を構成するものとみなすことを、議定書のその他の手続細目は両政府の当局の間で合意するとの了解の下に、提案する光栄を有します。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

  千九百六十五年六月二十二日に東京で

         日本国外務大臣 椎名悦三郎


 大韓民国外務部長官 李東元閣下

韓国側書簡

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 書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

     (日本側書簡)

 本長官は、閣下の書簡に述べられた提案に本国政府に代わつて同意し、さらに、閣下の書簡及びこの返簡を、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する大韓民国と日本国との間の協定の第一議定書の実施に関する細目についての両国政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。

 本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

  千九百六十五年六月二十二日に東京で

             外務部長官 李東元


 日本国外務大臣 椎名悦三郎閣下

請求権経済協力協定第一条1(b)の規定の実施に関する交換公文

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日本側書簡

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 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日署名された財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(以下「協定」という。)第一条1(b)の規定の実施に関し、両国政府が次のとおり合意することを提案する光栄を有します。

1 協定第一条1(b)に定める貸付けは、大韓民国政府と海外経済協力基金との間で締結されることになる借款契約及び事業別の事業計画合意書に基づき行なわれる。

2 両政府は、1にいう借款契約及び事業計画合意書には次の諸条件が含まれることになることを了解する。

(a) 貸付けの実行は、合理的な程度に各年均等に配分して行なわれる。
(b) 元金の償還期間は、それぞれの事業計画合意書の効力発生の日から六箇月後に始まる七年の据置期間を含む二十年の期間とし、金利は、年三・五パーセントとする。
(c) 元金の償還は、十四回の継続した均等年賦により行なわれ、利子の支払は、貸付けの実行の日以後の元金の随時の未償還残高について半年ごとに行なわれる。
(d) 貸付けの額は、日本円で貸し付けられた額から換算される合衆国ドルの等価額を基礎として計算され、その換算に用いられる為替相場は、日本国政府が正式に決定し、かつ、国際通貨基金が同意した日本円の合衆国ドルに対する平価で、それぞれの事業計画合意書の効力発生の日に適用されているものとする。
(e) 元金の償還及び利子の支払は、交換可能な日本円で行なわれる。

3 両国の財政事情及び海外経済協力基金の資金事情によつては、合意により2(b)にいう償還期間が延長されることがありうる。

4 海外経済協力基金は、貸付け及びそれから生ずる利子につき又はそれらに関連して課される大韓民国の租税その他の課徴金を免除される。

5 両政府は、大韓民国政府が提示する貸付けの対象となる事業及びその年度実施計画を決定するため毎年協議を行なう。

 本大臣は、さらに、この書簡及び前記の提案の貴国政府による受諾を確認される閣下の返簡を、協定第一条1(b)の規定の実施に関する日本国政府と大韓民国政府との間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

  千九百六十五年六月二十二日に東京で

       日本国外務大臣  椎名悦三郎


 大韓民国外務部長官 李東元閣下

韓国側書簡

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 書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

     (日本側書簡)

 本長官は、閣下の書簡に述べられた提案に本国政府に代わつて同意し、さらに、閣下の書簡及びこの返簡を、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する大韓民国と日本国との間の協定第一条1(b)の規定の実施に関する両国政府間の合意を構成するものとみなすことに同意いたします。

 本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

  千九百六十五年六月二十二日に東京で

            外務部長官 李東元

 日本国外務大臣  椎名悦三郎閣下

請求権経済協力協定第一条2に定める合同委員会に関する交換公文

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韓国側書簡

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 書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日署名された財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する大韓民国と日本国との間の協定(以下「協定」という。)第一条2に定める合同委員会に関し、両国政府が次のとおり合意することを提案いたします。

1 合同委員会は、東京に設置する。

2 合同委員会は、両政府がそれぞれ任命する代表一人及び代表代理数人により構成される。

3 合同委員会は一方の政府の代表の要請によつて会合するものとする。

4 合同委員会は、次の事項に関し勧告のため協議を行なうことを任務とする。

(a) 第一議定書に基づく年度実施計画、契約の認証及び支払に関する手続
(b) (a)にいう年度実施計画に関する問題
(c) 協定第一条1(b)の規定の実施に関する交換公文5にいう事業及びその年度実施計画に関する問題
(d) (a)にいう契約の認証
(e) 協定第一条1の規定の実施状況の検討(随時の供与及び貸付けの実施総額の算定を含む。)
(f) 協定第一条規定の実施に関するその他の事項で両政府が合意により合同委員会に付託するもの

 本長官は、さらに、この書簡及び前記の提案の貴国政府による受諾を確認される閣下の返簡を、協定第一条2に定める合同委員会に関する大韓民国政府と日本国政府との間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。

 本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

  千九百六十五年六月二十二日に東京で

             外務部長官 李東元

 日本国外務大臣 椎名悦三郎閣下

日本側書簡

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 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

     (韓国側書簡)

 本大臣は、閣下の書簡に述べられた提案に本国政府に代わつて同意し、さらに、閣下の書簡及びこの返簡を、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第一条2の合同委員会に関する両国政府間の合意を構成するものとみなすことに同意いたします。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

  千九百六十五年六月二十二日に東京で

        日本国外務大臣  椎名悦三郎

 大韓民国外務部長官  李東元閣下

財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定についての合意された議事録

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 日本国政府代表及び大韓民国政府代表は、本日署名された財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(以下「協定」という。)及び関連文書に関して次の了解に到達した。

1 協定第一条1に関し、

 日本国が供与する生産物及び役務は、日本国内において営利目的のために使用されることはないことに意見の一致をみた。

2 協定第二条に関し、

(a) 「財産、権利及び利益」とは、法律上の根拠に基づき財産的価値を認められるすべての種類の実体的権利をいうことが了解された。
(b) 「特別の措置」とは、日本国については、第二次世界大戦の戦闘状態の終結の結果として生じた事態に対処して、千九百四十五年八月十五日以後日本国において執られた戦後処理のためのすべての措置(千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)の規定に基づく特別取極を考慮して執られた措置を含む。)をいうことが了解された。
(c) 「居住した」とは、同条2(a)に掲げる期間内のいずれかの時までその国に引き続き一年以上在住したことをいうことが了解された。

(d) 「通常の接触」には、第二次世界大戦の戦闘状態の終結の結果として一方の国の国民で他方の国から引き揚げたもの(支店閉鎖を行なつた法人を含む。)の引揚げの時までの間の他方の国の国民との取引等、終戦後に生じた特殊な状態の下における接触を含まないことが了解された。

(e) 同条3により執られる措置は、同条1にいう両国及びその国民の財産、権利及び利益並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題の解決のために執られるべきそれぞれの国の国内措置ということに意見の一致をみた。
(f) 韓国側代表は、第二次世界大戦の戦闘状態の終結後千九百四十七年八月十五日前に帰国した韓国国民が日本国において所有する不動産について慎重な考慮が払われるよう希望を表明し、日本側代表は、これに対して、慎重に検討する旨を答えた。
(g) 同条1にいう完全かつ最終的に解決されたこととなる両国及びその国民の財産、権利及び利益並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題には、日韓会談において韓国側から提出された「韓国の対日請求要綱」(いわゆる八項目)の範囲に属するすべての請求が含まれており、したがつて、同対日請求要綱に関しては、いかなる主張もなしえないこととなることが確認された。
(h) 同条1にいう完全かつ最終的に解決されたこととなる両国及びその国民の財産、権利及び利益並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題には、この協定の署名の日までに大韓民国による日本漁船のだ捕から生じたすべての請求権が含まれており、したがつて、それらのすべての請求権は、大韓民国政府に対して主張しえないこととなることが確認された。

3 協定第三条に関し、

同条3にいう両国政府のそれぞれが選定する国及びそれらの国の政府が協議により決定する第三国は、日本国及び大韓民国の双方と外交関係を有する国のうちから選ばれるものとすることに意見の一致をみた。

4 第一議定書第二条1に関し、

(a) 韓国側代表は、協定第一条1の規定に基づく供与又は貸付けにより行なわれる事業の遂行上必要であると予想される大韓民国の国内資金を確保するため、大韓民国は、日本国政府が一億五千万合衆国ドルに等しい円の額をこえる資本財以外の生産物を供与することを期待する旨を述べ、日本側代表は、これに対し考慮を払う用意がある旨を答えた。
(b) 日本国が供与する生産物は、武器及び弾薬を含まないものとすることに意見の一致をみた。

5 第一議定書第二条2に関し、

 外国為替上の追加の負担が日本国に課される場合とは、当該生産物を供与するために、(i)特に高い外貨負担が必要とされる場合、及び(ii)同等の品質の日本国の生産物により代替することができる輸入品又は独立の機能を有する輸入機械部品の購入に当たつて外貨負担が必要とされる場合をいうことに意見の一致をみた。

6 第一議定書第三条に関し、

(a) 同条1につき、韓国側代表は、契約の締結が日本国内で行なわれること、及びこの契約の締結とは署名を意味し、署名にいたるまでの入札、公告その他の行為については、大韓民国政府(調達庁)が行なう場合は原則として大韓民国において、その他の場合は大韓民国又は日本国において、これらの行為が行なわれることを了解すると述べ、日本側代表は、これに対し異議がない旨を答えた。
(b) 同条2の契約であつて、輸送、保険又は検査のような附随的役務の供与を必要とし、かつ、そのための支払が第一議定書に従つて行なわれることとなつているものは、すべて、これらの役務が日本国民又は日本国の法人によつて行なわれるべき旨の規定を含まなければならないことが了解された。

7 第一議定書第六条4に関し、

 日本国により供与された生産物が加工(単純な組立加工又はこれと同程度の加工を除く。)又は両政府間で合意されるその他の処理を加えられた後大韓民国の領域から輸出された場合には、同条4の規定は適用されないものとすることに意見の一致をみた。

8 協定第一条1(b)の規定の実施に関する交換公文に関し、

(a) 同交換公文2(b)の事業計画合意書の効力発生の日とは、事業計画合意書に別段の規定がある場合を除くほか、それぞれの事業計画合意書の署名の日を意味することが了解された。
(b) 同交換公文2(c)の貸付けの実行の日とは、日本側の輸出者と大韓民国側の輸入者との間で締結される契約の定めるところに従つて、海外経済協力基金が、大韓民国政府のために、日本側の輸出者に対して支払を行ない、同基金に開設される大韓民国政府の勘定に借記する日であることが確認された。

 千九百六十五年六月二十二日に東京で

              E・S・

              T・W・L・

財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定についての合意された議事録

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 日本国政府代表及び大韓民国政府代表は、本日署名された財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(以下「協定」という。)及び関連文書に関して次の了解に到達した。

1 協定第一条に関し、

  同条1(a)ただし書の規定により各年の供与の限度額が増額される場合には、その増額は、各年の供与の限度額が第二議定書第一条に定めるその年の年賦払の額以下とならない範囲内で、最終年の供与の限度額から順次くり上げることにより行なわれることが了解された。

2 第一議定書第六条に関し、

  同条5の規定の適用について、両国政府が、両国における運送及び保険の実情を考慮し、合同委員会において協議することが了解された。

3 第一議定書の実施細目に関する交換公文に関し、

  契約から又はこれに関連して生ずる紛争は、当該契約の一方の当事者の居住する国に商事仲裁機関が設置されていないときは、同交換公文undef123の規定にかかわらず、他方の当事者が居住する国にある商事仲裁機関に付託されることが了解された。

 千九百六十五年六月二十二日に東京で

                 E・S・

                 T・W・L・

商業上の民間信用供与に関する交換公文

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日本側書簡

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 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、日本国の国民が大韓民国の政府又は国民に対し行なう商業上の民間信用供与に関して両国政府の代表者間で到達した次の了解を確認する光栄を有します。

1 三億合衆国ドル(三◯◯、◯◯◯、◯◯◯ドル)の額をこえる商業上の基礎による通常の民間信用供与が、日本国の国民により締結されることがある適当な契約に基づいて、大韓民国の政府又は国民に対し行なわれることが期待され、これらの信用供与は関係法令の範囲内で容易にされ、かつ、促進されるものとする。

2 1の供与には、九千万合衆国ドル(九◯、◯◯◯、◯◯◯ドル)の額に達することが期待される漁業協力のための民間信用供与及び三千万合衆国ドル(三◯、◯◯◯、◯◯◯ドル)の額に達することが期待される船舶輸出のための民間信用供与が含まれ、これらの信用供与が日本国政府により承認されるに当たつては、できる限り好意的に配慮されるものとする。

 本大臣は、さらに、この書簡及び前記の了解を確認される閣下の返簡を両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

  千九百六十五年六月二十二日に東京で

         日本国外務大臣 椎名悦三郎

 大韓民国外務部長官 李東元閣下

韓国側書簡

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 書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

     (日本側書簡)

 本長官は、さらに、前記の了解を確認し、かつ、閣下の書簡及びこの返簡を両国政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。

 本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

  千九百六十五年六月二十二日に東京で

             外務部長官 李東元


 日本国外務大臣  椎名悦三郎閣下



  1. 松村明・池上秋彦・金田弘・杉崎一雄・鈴木丹士郎・中嶋尚・林巨樹・飛田良文・曽根脩、「日韓請求権協定」『デジタル大辞泉』小学館、コトバンクより。

この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 法律命令及官公󠄁文󠄁書
  2. 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
  3. 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁

この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。