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陬波御記文

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原文

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陬波大王 限甲午 陬波與甲午 印文クシテ一物三名ナリ 我印文能ツヘシ身心 得此人神體 定ムヘシ正法持国法理 我從リテ燃燈佛以來 以神通ルニ諸業類 六趣之中愚癡ナル 一切禽獸魚蟲ナリ 流-轉シテ生死フコト生死 依不信リテナリフニ非法 以テナリ不信トハスヲ 以テナリ非法トハナムヲ自慾 不信非法流轉ナリ 皆是我無始分身ナリ 殺シテ鳥鹿カラフルコト贄祭 懺悔シテスル淨土善巧ナリ 於此贄料神物 雖禽獸ナリトラハ非被ラン 何ンヤ人類乎 我雖ムト熱鐵炎丸 不非例人祭禮 斷-盡スガ三業作罪 此蜜會三齋山 此ゼリ靈鷲山ヨリ 當慈尊タマヘルノ法華ナリ 故普賢身變山 踏マンモノヲハ惡趣 此地及ブマデ草木樹林 皆是我身分所現ナリ 剪草木穿タン寸地 非我神人 斷ヘシ 有レハスルカ惡行ナリ 治ルコトヘシ正法 是不變決定戒行ナリ 我以正法正體 行フヲ正理スカ正祭 恐レテルハ正法ナリ 守本誓ルハ正理ナリ 正法正理セン法理 能シテ大威德神力 能退-散天下灾蘗 以正法メン国土 率イテ惡神セン其雔 法理トシテハバ非法非理 永ステテ不親-近七生 若有クルモノセン 我敵也 難キコト一レ 鋻ミテ末世凡夫心品 我演誠實 我神人莫スコト罪過 况ンヤ殺害ヲヤ千里 令メハ打-殺正理神人 一度打ルルハ我百日ナリ 複セシニテフヘシ百兩 殺サン我三世怨敵ナリ 三寸(虫+反)虱皮千枚 綾羅錦繡万寶 積ミテコト一丈百日セヨ 責メテケテ神鉾異国 持我本誓 持タンヲ我躰トセンスヘシ 我記文諸經肝心 是諸佛出世正法ナリ 諸神キコト非例ナリ 背カハ記文千里 我安住シテ擁-護セン国土 不ンハ追捨ラン本国 我以正法甲冑 以正理弓箭劔 何神力トシテセン魔怨 千惡神三界魔王ナリ 護正法正理 不ンハ正法正理ルヘシ 去ラハチトコロニ天下ラン灾難 能ルヲ此本誓法理トセン 背カハ此誓法理ニハ

自餘口傳雖之 最祕蜜之間輙
正本御記文者梵語也 大明神御印判在之 輙凡人拜見スルニ 此本者摸セル梵語於漢字也 大明神結縁軰自觸耳可拜見

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書き下し文

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陬波すは大王甲午に限りて身を隠す。陬波と甲午、印文と同じくして、一物三名なり。我が印文能く身心に持つべし。此の人を得て真の神体と思ひ、正法持国の法理ほふりと定むべし。

我、燃灯仏に従りて以来、神通を以て諸業類を見るに、六趣の中に愚痴なる者は、一切の禽獣魚虫の身なり。生死に流転して生死に迷ふこと、不信に依より非法を行ふに依りてなり。不信とは内に人の性を誑たぶらかすを以てなり。非法とは外に自慾を窘たしなむを以てなり。不信非法、流転の因なり。皆是れ我が無始の分身なり。鳥鹿を殺して自づから贄祭に用ふること、懺悔して浄土に帰する善巧なり。此の如き贄料神物に於て、禽獣なりと雖も非有らば咎を被らん。何ぞ況や人類の非に於てをや。我熱鉄の炎丸を呑むと雖も、非例人の祭礼を禀けじ。

三業の作罪を断て尽くすが故に、此の蜜会を三斎山みさやまと名づく。此の山は霊鷲山うしとらより生ぜり。当に慈尊法華を説きたまへる地なり。故に普賢身変山と名づく。此の地を踏むものをば悪趣に堕とさじ。此の地草木樹林に及ぶまで、皆是れ我が身分の所現なり。草木を剪り寸地を穿たん者は、我が神人に非ず。其の種を断つべし。悪の種有れば、悪行生するが故なり。

国を治め位を法ること、正法に依るべし。是れ不変決定の戒行なり。我正法を以て正体と為し、正理を行ふを、正祭と為すが故に、神を恐れて非を犯さざるは正法なり。本誓を守りて貪らざるは正理なり。正法と正理を法理と為せん。能く大威徳の神力を施して、能く天下の災蘗を退散し、正法を以て国土を治めん時、千の悪神を率ゐて其のあだを滅せん。法理として非法非理を行はば、永く棄てて七生に親近せん。若し此れを助くるもの有らば、其の人を罸せん。我が敵なり。能く助くべきこと難し。

末世の凡夫の心品に鋻みて、我、是の如き誠実の言を演ふ。我が神人、罪過を致すこと莫れ。况んや殺害をや、共に千里を追へ。正理の神人を打殺せしめば、一度打たるるは我が百日の悩なり。本に複せしにて、日に百両の金を備ふべし。殺さん者は、我が三世の怨敵なり。三寸の(虫+反)虱の皮千枚、綾羅錦繡の外は万宝、積みて一丈に置くこと、百日の間せよ。責めて神鉾を捧げて異国に追へ。

我が本誓を持し、身を離れざれ。是れを持たんを我が体とせん。口を鼻と作すべし。我が記文は諸経の肝心。是れ諸仏出世の正法なり。諸神も非例無きこと同じ誓なり。記文に背かば、早く千里を追へ。我安住して国土を擁護せん。追はずんば、此れを捨てて本国へ帰らん、我が正法を以て甲冑と為し、正理を以て弓箭・剣と為す。何の神力を何として魔怨を伏せん。

千の悪神は三界の魔王なり。正法正理を護りて我に随へ。正法正理を行はずんば去るべし。去らば立ちどころ天下に災難起らん。能く此の本誓を知るを法理とせん、此の誓に背かば全く法理にはあらず。

自余の口伝之れ在りと雖も、最も秘蜜の間、輙ち之れを写し難し。
正本御記文は梵語なり。大明神御印判之れ在り。輙ち凡人の拝見する及ぶべからず。此の本は梵語の漢字に摸せるなり。大明神結縁の輩自ら耳に触れ、拝見に及ぶべきか。

この作品は1930年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。