鐵道震害調査書/第一編/第三章/第二節/九
九 常磐線隅田川橋梁
構造概要 (附圖第六十八參照) 本橋梁は南千住北千住間日暮里起點4哩69鎖23節,隅田川に架設せられ全長1,651呎2吋にして,明治二十九年八月の竣工に係り,徑間200呎複線用構桁2連,徑間60呎單線用上路鈑桁19連上下竝列より成り,橋梁上線路は水平直線にしてその方向約北19度東なり。
地質は粘土にして,基礎は橋臺及び鈑桁用橋脚に對するものは杭打板張混凝土工,構桁用橋脚に對するものは煉化石積井筒工なり。橋臺軀體工は凹形にして煉化石を使用し,隅角には石材を配せり。橋脚の構造は構桁に對するものは2個の井筒の上部に拱を架してその上部に小判形軀體を造り,鈑桁に對するものは基礎混凝土上に砲彈形の斷面を有する軀體を築造す(附圖第六十八參照)。用材は煉化石にして兩端水切の部分には石材を使用せり。
被害狀況 (附圖第六十八及び寫眞第二百八十五參照) 本橋梁の被害は第三號及び第四號の兩橋脚並に第三號橋脚用井筒のみにして,他の橋臺橋脚及び橋桁には殆ど損傷なし。
第三號橋脚は頂部の川下方の箇所より斜に下方川上方に向ひて拱頂部に達する龜裂を生じ,その最大幅91⁄4吋に及べり。尙川上方井筒上端より約3呎の上方に當りて水平に龜裂を生じ,上記の斜龜裂と相俟て軀體を2部分に切斷し,その上部は川上に少許の移動をなしたり。而してこの第三號橋脚上に於て第一號及び第二號構桁は共に轉輾子端を有せしが,軀體切斷移動の結果,川上方床鈑はそのアンカー·ボールト切斷し,結局橋脚上の原位置に對して川下方へ約31⁄2吋移動せることゝなれり。川下側の床鈑には何等の損傷なし。
震災直後本橋脚に應急工事を施行せる際,潜水夫をして水中に在る井筒の部分を檢せしめたるに,川下方井筒の上野方の面に於て川底面より高約6呎の所にH形の龜裂あり。更にその下部に水平の小龜裂あるを發見せしが,このH形龜裂はその幅5吋餘,深は3呎にも達し,長は水平に測りたる部分のみにて約9呎に及び,又水戶方に於て地盤面より鉛直に走れる縱龜裂あるを知りたり。川上方井筒に於ては水戶方の面にその頂部より約5呎の下方に水平の龜裂あるを發見せり。而してこれ等の損傷は何れも今囘の地震の結果なりと推定せらる。
第四號橋脚は第三號橋脚に比し被害の程度小にして,川上側に於て井筒上端より2呎6吋上方に水平龜裂を生じ,又川下側に於ても井筒上端部附近に水平龜裂を生じ,且煉化石の剝落せるもの數箇所ありたり。