通過する一瞬時の酔ひ

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本文[編集]

通過する一瞬時の酔ひ
萩原恭次郎

脳髄は蒼ざめた重いモーターである!
泥濘軌道へ!
約束もなく廻つてゐる!
腹の中はいつぱいに無役な工場が立つて
煙突の煙りはあらゆる内臓をまつくろにしてゐる!
やがて男は——陸上に疲れて
海へ投ずるだらう!
骨が貝殻のやうになつて上つても
屋根裏で何んの職業もなく起居してゐた男とは
誰か石灰質の骨から記憶を知るものがあらう!
晴々しい空気を吸つてゐる想念を
通過する
通過する
一瞬の爆発の酔ひ!

解題[編集]

作者:萩原恭次郎

底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1

表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。