迎陽記
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迎陽記
作者:東坊城秀長
『迎陽記』は菅原氏を出自とする北朝公家・東坊城秀長(1338-1411)の執筆になる日記である。本書には「秀長卿記」「菅宰相記」などの別名があるが。秀長は参議・東坊城長綱の息子にあたり、東坊城為長の五世孫である。文章博士、式部大輔といった官職を歴任し、最終的に正二位参議に昇進した。
「迎陽」は東坊城秀長の号である。本書は日本南北朝が対峙し、史料の残存が乏しい時代を知る上での基幹的基礎史料の一つに数えられる。秀長の一族には代々、六位蔵人・内侍として宮廷に奉仕する者が複数おり、書中に豊富に残された宮廷儀式の記録を手がかりに、他の諸史料には記載のない北朝天皇周辺の内情を多く解き明かすことが可能である。著者の出自と半生の境遇こそ、『迎陽記』が持つ史料的価値を形作っている。同書には古来の芸能に関する貴重な記述が多数残されると同時に、朝廷の諸儀典、後宮における一切の行事が詳細に記録されている。康暦年間以降、二条良基が足利義満を補佐して朝政に介入し、朝廷の権勢を段階的に掌握していく過程についても、軍政の核心的機密に関する記事が数多く収められている。江戸時代の『本朝通鑑』、近現代に編纂された『大日本史料』は、いずれも本史料を極めて重視している。