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詩篇(文語訳)

提供:Wikisource

<聖書<文語訳旧約聖書

w:舊新約聖書 [文語]』w:日本聖書協会、1953年

w:明治元訳聖書

w:詩篇

第1篇

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1:1

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惡きものの謀略にあゆまず つみびとの途にたたず 嘲るものの座にすわらぬ者はさいはひなり

1:2

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かかる人はヱホバの法をよろこびて日も夜もこれをおもふ

1:3

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かかる人は水流のほとりにうゑし樹の期にいたりて實をむすび 葉もまた凋まざるごとく その作ところ皆さかえん

1:4

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あしき人はしからず 風のふきさる粃糠のごとし

1:5

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然ばあしきものは審判にたへず罪人は義きものの會にたつことを得ざるなり

1:6

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そはヱホバはただしきものの途をしりたまふ されど惡きものの途はほろびん

第2篇

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2:1

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何なればもろもろの國人はさわぎたち諸民はむなしきことを謀るや

2:2

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地のもろもろの王はたちかまへ群伯はともに議り ヱホバとその受膏者とにさからひていふ

2:3

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われらその械をこぼち その繩をすてんと

2:4

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天に坐するもの笑ひたまはん 主かれらを嘲りたまふべし

2:5

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かくて主は忿恚をもてものいひ大なる怒をもてかれらを怖まどはしめて宣給ふ

2:6

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しかれども我わが王をわがきよきシオンの山にたてたりと

2:7

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われ詔命をのべんヱホバわれに宣まへり なんぢはわが子なり今日われなんぢを生り

2:8

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われに求めよ さらば汝にもろもろの國を嗣業としてあたへ地の極をなんぢの有としてあたへん

2:9

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汝くろがねの杖をもて彼等をうちやぶり陶工のうつはもののごとくに打碎かんと

2:10

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されば汝等もろもろの王よ さとかれ地の審士輩をしへをうけよ

2:11

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畏をもてヱホバにつかへ戦慄をもてよろこべ

2:12

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子にくちつけせよ おそらくはかれ怒をはなちなんぢら途にほろびんその忿恚はすみやかに燃べければなり すべてかれに依頼むものは福ひなり

第3篇

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ダビデその子アブサロムを避しときのうた

3:1

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ヱホバよ我にあたする者のいかに蔓延れるや 我にさからひて起りたつもの多し

3:2

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わが霊魂をあげつらひて かれは神にすくはるることなしといふ者ぞおほきセラ

3:3

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されどヱホバよ なんぢは我をかこめる盾わが榮わが首をもたげ給ふものなり

3:4

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われ聲をあげてヱホバによばはればその聖山より我にこたへたまふセラ

3:5

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われ臥していね また目さめたり ヱホバわれを支へたまへばなり

3:6

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われをかこみて立かまへたる干萬の人をも我はおそれじ

3:7

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ヱホバよねがはくは起たまへ わが神よわれを救ひたまへ なんぢ曩にわがすべての仇の頬骨をうち惡きものの歯ををりたまへり

3:8

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救はヱホバにあり ねがはくは恩惠なんぢの民のうへに在んことをセラ

第4篇

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琴にあはせて伶長にうたはしめたるダビデの歌

4:1

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わが義をまもりたまふ神よ ねがはくはわが呼るときに答へたまへ わがなやみたる時なんぢ我をくつろがせたまへり ねがはくは我をあはれみ わが祈をききたまへ

4:2

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人の子よなんぢらわが榮をはぢしめて幾何時をへんとするか なんぢらむなしき事をこのみ虚偽をしたひていくそのときを經んとするかセラ

4:3

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然どなんぢら知れ ヱホバは神をうやまふ人をわかちて己につかしめたまひしことを われヱホバによばはらば聴たまはん

4:4

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なんぢら愼みをののきて罪ををかすなかれ 臥床にておのが心にかたりて黙せセラ

4:5

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なんぢら義のそなへものを献てヱホバに依頼め

4:6

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おほくの人はいふたれか嘉事をわれらに見するものあらんやと ヱホバよねがはくは聖顔の光をわれらの上にのぼらせたまへ

4:7

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なんぢのわが心にあたへたまひし歓喜はかれらの穀物と酒との豊かなる時にまさりき

4:8

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われ安然にして臥またねぶらん ヱホバよわれを獨にて坦然にをらしむるものは汝なり

第5篇

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簫にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた

5:1

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ヱホバよねがはくは我がことばに耳をかたむけ わが思にみこころを注たまへ

5:2

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わが王よわが神よ わが號呼のこゑをききたまへ われ汝にいのればなり

5:3

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ヱホバよ朝になんぢわが聲をききたまはん 我あしたになんぢの爲にそなへして俟望むべし

5:4

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なんぢは惡きことをよろこびたまふ神にあらず 惡人はなんぢの賓客たるを得ざるなり

5:5

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たかぶる者はなんぢの目前にたつをえず なんぢはずべて邪曲をおこなふものを憎みたまふ

5:6

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なんぢは虚偽をいふ者をほろぼしたまふ 血をながすものと詭計をなすものとは ヱホバ憎みたまふなり

5:7

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然どわれは豊かなる仁慈によりてなんぢの家にいらん われ汝をおそれつつ聖宮にむかひて拝まん

5:8

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ヱホバよ願くはわが仇のゆゑになんぢの義をもて我をみちびき なんぢの途をわが前になほくしたまへ

5:9

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かれらの口には眞實なく その衷はよこしま その喉はあばける墓 その舌はへつらひをいへばなり

5:10

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神よねがはくはかれらを刑なひ その謀略によりてみづから仆れしめ その愆のおほきによりて之をおひいだしたまへ かれらは汝にそむきたればなり

5:11

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されど凡てなんぢに依頼む者をよろこばせ永遠によろこびよばはらせたまへ なんぢ斯る人をまもりたまふなり 名をいつくしむ者にもなんぢによりて歓喜をえしめたまへ

5:12

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ヱホバよなんぢに義者にさいはひし盾のごとく恩惠をもて之をかこみたまはん

第6篇

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八音ある琴にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた

6:1

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ヱホバよねがはくは忿恚をもて我をせめ烈しき怒をもて我をこらしめたまふなかれ

6:2

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ヱホバよわれを憐みたまへ われ萎みおとろふなり ヱホバよ我を醫したまへ わが骨わななきふるふ

6:3

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わが霊魂さへも甚くふるひわななく ヱホバよかくて幾何時をへたまふや

6:4

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ヱホバよ歸りたまへ わがたましひを救ひたまへ なんぢの仁慈の故をもて我をたすけたまへ

6:5

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そは死にありては汝をおもひいづることなし 陰府にありては誰かなんぢに感謝せん

6:6

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われ歎息にてつかれたり 我よなよな床をただよはせ涙をもてわが衾をひたせり

6:7

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わが目うれへによりておとろへ もろもろの仇ゆゑに老ぬ

6:8

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なんぢら邪曲をおこなふ者ことごとく我をはなれよ ヱホバはわが泣こゑをききたまひたり

6:9

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ヱホバわが懇求をききたまへり ヱホバわが祈をうけたまはん

6:10

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わがもろもろの仇ははぢて大におぢまどひ あわただしく恥てしりぞきぬ

第7篇

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ベニヤミンの人クシの言につきダビデ、ヱホバに對ひてうたへるシガヨンの歌

7:1

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わが神ヱホバよわれ汝によりたのむ 願くはすべての逐せまるものより我をすくひ我をたすけたまへ

7:2

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おそらくはかれ獅の如くわが霊魂をかきやぶり援るものなき間にさきてずたずたに爲ん

7:3

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わが神ヱホバよ もしわれ此事をなししならんには わが手によこしまの纏りをらんには

7:4

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故なく仇ずるものをさへ助けしに禍害をもてわが友にむくいしならんには

7:5

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よし仇人わがたましひを逐とらへ わが生命をつちにふみにじりわが榮を塵におくとも その作にまかせよセラ

7:6

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ヱホバよなんぢの怒をもて起わが仇のいきどほりにむかひて立たまへ わがために目をさましたまへ なんぢは審判をおほせ出したまへり

7:7

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もろもろの國人の會がなんぢのまはりに集はしめ 其上なる高座にかへりたまヘ

7:8

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ヱホバはもろもろの民にさばきを行ひたまふ ヱホバよわが正義とわが衷なる完全とにしたがひて我をさばきたまへ

7:9

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ねがはくは惡きものの曲事をたちて義しきものを堅くしたまへ ただしき神は人のこころと腎とをさぐり知たまふ

7:10

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わが盾をとるものは心のなほきものをすくふ神なり

7:11

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神はただしき審士ひごとに忿恚をおこしたまふ神なり

7:12

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人もしかへらずば神はその劍をとぎ その弓をはりてかまヘ

7:13

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これに死の器をそなへ その矢に火をそへたまはん

7:14

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視よその人はよこしまを産んとしてくるしむ 殘害をはらみ虚偽をうむなり

7:15

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また坑をほりてふかくし己がつくれるその溝におちいれり

7:16

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その殘害はおのが首にかへり その強暴はおのが頭上にくだらん

7:17

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われその義によりてヱホバに感謝し いとたかきヱホバの名をほめうたはん

第8篇

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ギデトの琴にあはせて伶長にうたはしめたるダビデの歌

8:1

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われらの主ヱホバよなんぢの名は地にあまねくして尊きかな その榮光を天におきたまへり

8:2

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なんぢは嬰兒ちのみごの口により力の基をおきて敵にそなへたまへり こは仇人とうらみを報るものを鎭静めんがためなり

8:3

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我なんぢの指のわざなる天を観なんぢの設けたまへる月と星とをみるに

8:4

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世人はいかなるものなればこれを聖念にとめたまふや 人の子はいかなるものなればこれを顧みたまふや

8:5

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只すこしく人を神よりも卑つくりて榮と尊貴とをかうぶらせ

8:6

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またこれに手のわざを治めしめ萬物をその足下におきたまへり

8:7

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すべての羊うしまた野の獣

8:8

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そらの鳥うみの魚もろもろの海路をかよふものをまで皆しかなせり

8:9

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われらの主ヱホバよなんぢの名は地にあまねくして尊きかな

第9篇

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ムツラベン(調子の名)にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた

9:1

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われ心をつくしてヱホバに感謝し そのもろもろの奇しき事迹をのべつたへん

9:2

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われ汝によりてたのしみ且よろこばん 至上者よなんぢの名をほめうたはん

9:3

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わが仇しりぞくとき躓きたふれて御前にほろぶ

9:4

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なんぢわが義とわが訟とをまもりたまへばなり なんぢはだしき審判をしつつ寳座にすわりたまへり

9:5

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またもろもろの國をせめ惡きものをほろぼし 世々かぎりなくかれらが名をけしたまへり

9:6

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仇はたえはてて世々あれすたれたり 汝のくつがへしたまへるもろもろの邑はうせてその跡だにもなし

9:7

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ヱホバはとこしへに聖位にすわりたまふ 審判のためにその寳座をまうけたまひたり

9:8

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ヱホバは公義をもて世をさばき 直をもてもろもろの民に審判をおこなひたまはん

9:9

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ヱホバは虐げらるるものの城また難みのときの城なり

9:10

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聖名をしるものはなんぢに依頼ん そはヱホバよなんぢを尋るものの棄られしこと断てなければなり

9:11

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シオンに住たまふヱホバに對ひてほめうたへ その事迹をもろもろの民のなかにのべつたへよ

9:12

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血を問糺したまふものは苦しむものを心にとめてその號呼をわすれたまはず

9:13

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ヱホバよ我をあはれみたまへ われを死の門よりすくひいだしたまへる者よ ねがはくは仇人のわれを難むるを視たまへ

9:14

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さらば我なんぢのすべての頌美をのぶるを得またシオンのむすめの門にてなんぢの救をよろこばん

9:15

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もろもろの國民はおのがつくれる阱におちいり そのかくしまうけたる網におのが足をとらへらる

9:16

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ヱホバは己をしらしめ審判をおこなひたまへり あしき人はおのが手のわざなる羂にかかれり ヒガイオン セラ

9:17

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あしき人は陰府にかへるべし 神をわするるもろもろの國民もまたしからん

9:18

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貧者はつねに忘らるるにあらず苦しむものの望はとこしへに滅ぶるにあらず

9:19

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ヱホバよ起たまへ ねがはくは勝を人にえしめたまふなかれ御前にてもろもろのくにびとに審判をうけしめたまヘ

9:20

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ヱホバよ願くはかれらに懼をおこさしめたまへ もろもろの國民におのれただ人なることを知しめたまヘセラ

第10篇

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10:1

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ああヱホバよ何ぞはるかに立たまふや なんぞ患難のときに匿れたまふや

10:2

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あしき人はたかぶりて苦しむものを甚だしくせむ かれらをそのくはだての謀略にとらはれしめたまヘ

10:3

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あしきひとは己がこころの欲望をほこり貪るものを祝してヱホバをかろしむ

10:4

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あしき人はほこりかにいふ 神はさぐりもとむることをせざるなりと 凡てそのおもひに神なしとせり

10:5

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かれの途はつねに堅く なんぢの審判はその眼よりはなれてたかし 彼はそのもろもろの敵をくちさきらにて吹く

10:6

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かくて己がこころの中にいふ 我うごかさるることなく世々われに禍害なかるべしと

10:7

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その口にはのろひと虚偽としへたげとみち その舌のしたには殘害とよこしまとあり

10:8

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かれは村里のかくれたる處にをり隠やかなるところにて罪なきものをころす その眼はひそかに倚仗なきものをうかがひ

10:9

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窟にをる獅のごとく潜みまち苦しむものをとらへんために伏ねらひ 貧しきものをその網にひきいれてとらふ

10:10

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また身をかがめて蹲まるその強勁によりて依仗なきものは仆る

10:11

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かれ心のうちにいふ 神はわすれたり神はその面をかくせり神はみることなかるべしと

10:12

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ヱホバよ起たまへ 神よ手をあげたまへ 苦しむものを忘れたまふなかれ

10:13

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いかなれば惡きもの神をいやしめて心中になんぢ探求むることをせじといふや

10:14

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なんぢは鍳たまへりその殘害と怨恨とを見てこれに手をくだしたまへり 倚仗なきものは身をなんぢに委ぬ なんぢは昔しより孤子をたすけたまふ者なり

10:15

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ねがはくは惡きものの臂ををりたまへあしきものの惡事を一つだにのこらぬまでに探究したまヘ

10:16

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ヱホバはいやとほながに王なり もろもろの國民はほろびて神の國より跡をたちたり

10:17

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ヱホバよ汝はくるしむものの懇求をききたまへり その心をかたくしたまはん なんぢは耳をかたぶけてきき

10:18

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孤子と虐げらる者とのために審判をなし地につける人にふたたび恐嚇をもちひざらしめ給はん

第11篇

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うたのかみに謳はしめたるダビデのうた

11:1

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われヱホバに依頼めり なんぢら何ぞわが霊魂にむかひて鳥のごとくなんぢの山にのがれよといふや

11:2

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視よあしきものは暗處にかくれ心なほきものを射んとて弓をはり絃に矢をつがふ

11:3

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基みなやぶれたらんには義者なにをなさんや

11:4

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ヱホバはその聖宮にいます ヱホバの寳座は天にありその目はひとのこを鑒 その眼瞼はかれらをこころみたまふ

11:5

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ヱホバは義者をこころむ そのみこころは惡きものと強暴をこのむ者とをにくみ

11:6

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羂をあしきもののうへに降したまはん火と硫磺ともゆる風とはかれらの酒杯にうくべきものなり

11:7

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ヱホバはただしき者にして義きことを愛したまへばなり 直きものはその聖顔をあふぎみん

第12篇

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八音にあはせて伶長にうたはしめたるダビデのうた

12:1

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ああヱホバよ助けたまへ そは神をうやまふ人はたえ誠あるものは人の子のなかより消失るなり

12:2

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人はみな虚偽をもてその隣とあひかたり滑なるくちびると貳心とをもてものいふ

12:3

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ヱホバはすべての滑なるくちびると大なる言をかたる舌とをほろぼし給はん

12:4

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かれらはいふ われら舌をもて勝をえん この口唇はわがものなり誰かわれらに主たらんやと

12:5

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ヱホバのたまはく 苦しむもの掠められ貧しきもの歎くがゆゑに我いま起てこれをその慕ひもとむる平安におかん

12:6

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ヱホバの言はきよきことばなり 地にまうけたる爐にてねり七次きよめたる白銀のごとし

12:7

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ヱホバよ汝はかれらをまもり之をたすけてとこしへにこの類より免れしめたまはん

12:8

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人の子のなかに穢しきことの崇めらるるときは惡者ここやかしこにあるくなり

第13篇

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伶長にうたはしめたるダビデのうた

13:1

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ああヱホバよ かくて幾何時をへたまふや 汝とこしへに我をわすれたまふや 聖顔をかくしていくそのときを歴たまふや

13:2

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われ心のうちに終日かなしみをいだき籌畫をたましひに用ひて幾何時をふべきか わが仇はわがうへに崇められて幾何時をふべきか

13:3

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わが神ヱホバよ我をかへりみて答をなしたまへ わが目をあきらかにしたまへ 恐らくはわれ死の睡につかん

13:4

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おそらくはわが仇いはん 我かれに勝りと おそらくはわが敵わがうごかさるるによりて喜ばん

13:5

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されど我はなんぢの憐憫によりたのみ わが心はなんぢの救によりてよろこばん

13:6

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ヱホバはゆたかに我をあしらひたまひたれば われヱホバに對ひてうたはん

第14篇

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うたのかみに謳はしめたるダビデのうた

14:1

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愚なるものは心のうちに神なしといへり かれらは腐れたり かれらは憎むべき事をなせり 善をおこなふ者なし

14:2

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ヱホバ天より人の子をのぞみみて悟るもの神をたづぬる者ありやと見たまひしに

14:3

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みな逆きいでてことごとく腐れたり 善をなすものなし一人だになし

14:4

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不義をおこなふ者はみな智覺なきか かれらは物くふごとくわが民をくらひ またヱホバをよぶことをせざるなり

14:5

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視よかかる時かれらは大におそれたり 神はただしきものの類のなかに在せばなり

14:6

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なんぢらは苦しめるものの謀略をあなどり辱かしむ されどヱホバはその避所なり

14:7

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ねがはくはシオンよりイスラエルの救のいでんことを ヱホバその民のとらはれたるを返したまふときヤコブはよろこびイスラエルは樂まん

第15篇

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ダビデのうた

15:1

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ヱホバよなんぢの帷幄のうちにやどらん者はたれぞ なんぢの聖山にすまはんものは誰ぞ

15:2

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直くあゆみ義をおこなひ そのこころに眞實をいふものぞその人なる

15:3

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かかる人は舌をもてそしらず その友をそこなはず またその隣をはぢしむる言をあげもちひず

15:4

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惡にしづめるものを見ていとひかろしめ ヱホバをおそるるものをたふとび 誓ひしことはおのれに禍害となるも變ることなし

15:5

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貨をかして過たる利をむさぼらず 賄賂をいれて無辜をそこなはざるなり 斯ることどもを行ふものは永遠にうごかさるることなかるべし

第16篇

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ダビデがミクタムの歌

16:1

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神よねがはくは我を護りたまへ 我なんぢに依頼む

16:2

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われヱホバにいへらくなんぢはわが主なり なんぢのほかにわが福祉はなしと

16:3

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地にある聖徒はわが極めてよろこぶ勝れしものなり

16:4

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ヱホバにかへて他神をとるものの悲哀はいやまさん 我かれらがささぐる血の御酒をそそがず その名を口にとなふることをせじ

16:5

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ヱホバはわが嗣業またわが酒杯にうくべき有なり なんぢはわが所領をまもりたまはん

16:6

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準繩はわがために樂しき地におちたり 宜われよき嗣業をえたるかな

16:7

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われは訓諭をさづけたまふヱホバをほめまつらん 夜はわが心われををしふ

16:8

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われ常にヱホバをわが前におけり ヱホバわが右にいませばわれ動かさるることなかるべし

16:9

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このゆゑにわが心はたのしみ わが榮はよろこぶ わが身もまた平安にをらん

16:10

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そは汝わがたましひを陰府にすておきたまはず なんぢの聖者を墓のなかに朽しめたまはざる可ればなり

16:11

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なんぢ生命の道をわれに示したまはん なんぢの前には充足るよろこびあり なんぢの右にはもろもろの快樂とこしへにあり

第17篇

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ダビデの祈祷

17:1

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ああヱホバよ公義をききたまへ わが哭聲にみこころをとめたまへ いつはりなき口唇よりいづる我がいのりに耳をかたぶけたまへ

17:2

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ねがはくはわが宣告みまへよりいでてなんぢの目公平をみたまはんことを

17:3

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なんぢわが心をこころみ また夜われにのぞみたまへり 斯てわれを糺したまへど我になにの惡念あるをも見出たまはざりき わが口はつみを犯すことなからん

17:4

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人の行爲のことをいはば我なんぢのくちびるの言によりて暴るものの途をさけたり

17:5

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わが歩はかたくなんぢの途にたちわが足はよろめくことなかりき

17:6

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神よなんぢ我にこたへたまふ 我なんぢをよべり ねがはくは汝の耳をかたぶけてわが陳るところをききたまへ

17:7

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なんぢに依頼むものを右手をもて仇するものより救ひたまふ者よ ねがはくはなんぢの妙なる仁慈をあらはしたまへ

17:8

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願くはわれを瞳のごとくにまもり汝のつばさの蔭にかくし

17:9

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我をなやむるあしき者また我をかこみてわが命をそこなはんとする仇よりのがれしめ給へ

17:10

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かれらはおのが心をふさぎ その口をもて誇かにものいへり

17:11

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いづこにまれ往ところにてわれらを打圍み われらを地にたふさんと目をとむ

17:12

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かれは抓裂んといらだつ獅のごとく隠やかなるところに潜みまつ壮獅のごとし

17:13

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ヱホバよ起たまへ ねがはくはかれに立對ひてこれをたふし御劍をもて惡きものよりわが霊魂をすくひたまヘ

17:14

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ヱホバよ手をもて人より我をたすけいだしたまへ おのがうくべき有をこの世にてうけ 汝のたからにてその腹をみたさるる世人より我をたすけいだし給へ かれらはおほくの子にあきたり その富ををさなごに遺す

17:15

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されどわれは義にありて聖顔をみ目さむるとき容光をもて飽足ることをえん

第18篇

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伶長にうたはしめたるヱホバの僕ダビデの歌、このうたの詞はもろもろの仇およびサウルの手より救れしときヱホバに對ひてうたへるなり 云く

18:1

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ヱホバわれの力よ われ切になんぢを愛しむ

18:2

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ヱホバはわが巌 わが城 われをすくふ者 わがよりたのむ神 わが堅固なるいはほ わが盾 わがすくひの角 わがたかき櫓なり

18:3

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われ讃稱ふべきヱホバをよびて仇人よりすくはるることをえん

18:4

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死のつな我をめぐり惡のみなぎる流われをおそれしめたり

18:5

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陰間のなは我をかこみ死のわな我にたちむかへり

18:6

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われ窮苦のうちにありてヱホバをよび又わが神にさけびたり ヱホバはその宮よりわが聲をききたまふ その前にてわがよびし聲はその耳にいれり

18:7

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このときヱホバ怒りたまひたれば地はふるひうごき山の基はゆるぎうごきたり

18:8

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烟その鼻よりたち火その口よりいでてやきつくし炭はこれがために燃あがれり

18:9

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ヱホバは天をたれて臨りたまふ その足の下はくらきこと甚だし

18:10

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かくてケルブに乗りてとび風のつばさにて翔り

18:11

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闇をおほひとなし水のくらきとそらの密雲とをそのまはりの幕となしたまへり

18:12

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そのみまへの光輝よりくろくもをへて雹ともえたる炭とふりきたれり

18:13

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ヱホバは天に雷鳴をとどろかせたまへり 至上者のこゑいでて雹ともえたる炭とふりきたり

18:14

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ヱホバ矢をとばせてかれらを打ちらし數しげき電光をはなちてかれらをうち敗りたまへり

18:15

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ヱホバよ斯るときになんぢの叱咤となんぢの鼻のいぶきとによりて水の底みえ地の基あらはれいでたり

18:16

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ヱホバはたかきより手をのべ我をとりて大水よりひきあげ

18:17

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わがつよき仇とわれを憎むものとより我をたすけいだしたまへり かれらは我にまさりて最強かりき

18:18

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かれらはわが災害の日にせまりきたれり 然どヱホバはわが支柱となりたまひき

18:19

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ヱホバはわれを悦びたまふがゆゑにわれをたづさへ廣處にだして助けたまへり

18:20

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ヱホバはわが正義にしたがひて恩賜をたまひ わが手のきよきにしたがひて報賞をたれたまへり

18:21

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われヱホバの道をまもり惡をなしてわが神よりはなれしことなければなり

18:22

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そのすべての審判はわがまへにありて われその律法をすてしことなければなり

18:23

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われ神にむかひて缺るところなく己をまもりて不義をはなれたり

18:24

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この故にヱホバはわがただしきとその目前にわが手のきよきとにしたがひて我にむくいをなし給へり

18:25

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なんぢ憐憫あるものには憐みあるものとなり完全ものには全きものとなり

18:26

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きよきものには潔きものとなり僻むものにはひがむ者となりたまふ

18:27

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そは汝くるしめる民をすくひたまへど高ぶる目をひくくしたまふ可ればなり

18:28

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なんぢわが燈火をともし給ふべければなり わが神ヱホバわが暗をてらしたまはん

18:29

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我なんぢによりて軍の中をはせとほり わが神によりて垣ををどりこゆ

18:30

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神はしもその途またくヱホバの言はきよし ヱホバはすべて依頼むものの盾なり

18:31

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そはヱホバのほかに神はたれぞや われらの神のほかに巌はたれぞや

18:32

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神はちからをわれに帯しめ わが途を全きものとなしたまふ

18:33

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神はわが足を麀のあしのごとくし我をわが高處にたたせたまふ

18:34

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神はわが手をたたかひにならはせてわが臂に銅弓をひくことを得しめたまふ

18:35

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又なんぢの救の盾をわれにあたへたまへり なんぢの右手われをささへなんぢの謙卑われを大ならしめたまへり

18:36

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なんぢわが歩むところを寛濶ならしめたまひたれば わが足ふるはざりき

18:37

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われ仇をおひてこれに追及かれらのほろぶるまでは歸ることをせじ

18:38

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われかれらを撃てたつことを得ざらしめん かれらはわが足の下にたふるべし

18:39

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そはなんぢ戦争のために力をわれに帯しめ われにさからひておこりたつ者をわが下にかがませたまひたればなり

18:40

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我をにくむ者をわが滅しえんがために汝またわが仇の背をわれにむけしめ給へり

18:41

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かれら叫びたれども救ふものなく ヱホバに對ひてさけびたれども答へたまはざりき

18:42

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我かれらを風のまへの塵のごとくに搗碎き ちまたの坭のごとくに打棄たり

18:43

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なんぢわれを民のあらそひより助けいだし我をたててもろもろの國の長となしたまへり わがしらざる民われにつかへん

18:44

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かれらわが事をききて立刻われにしたがひ異邦人はきたりて佞りつかへん

18:45

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ことくにびとは衰へてその城よりをののきいでん

18:46

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ヱホバは活ていませり わが磐はほむべきかな わがすくひの神はあがむべきかな

18:47

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わがために讎をむくい異邦人をわれに服はせたまふはこの神なり

18:48

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神はわれを仇よりすくひたまふ實になんぢは我にさからひて起りたつ者のうへに我をあげ あらぶる人より我をたすけいだし給ふ

18:49

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この故にヱホバよ われもろもろの國人のなかにてなんぢに感謝し なんぢの名をほめうたはん

18:50

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ヱホバはおほいなる救をその王にあたへ その受膏者ダビデとその裔とに世々かぎりなく憐憫をたれたまふ

第19篇

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うたのかみに謳はしめたるダビデのうた

19:1

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もろもろの天は神のえいくわうをあらはし 穹蒼はその手のわざをしめす

19:2

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この日ことばをかの日につたへこのよ知識をかの夜におくる

19:3

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語らずいはずその聲きこえざるに

19:4

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そのひびきは全地にあまねく そのことばは地のはてにまでおよぶ 神はかしこに帷幄を日のためにまうけたまへり

19:5

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日は新婿がいはひの殿をいづるごとく勇士がきそひはしるをよろこぶに似たり

19:6

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そのいでたつや天の涯よりし その運りゆくや天のはてにいたる 物としてその和喣をかうぶらざるはなし

19:7

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ヱホバの法はまたくして霊魂をいきかへらしめ ヱホバの證詞はかたくして愚なるものを智からしむ

19:8

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ヱホバの訓諭はなほくして心をよろこばしめ ヱホバの誡命はきよくして眼をあきらかならしむ

19:9

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ヱホバを惶みおそるる道はきよくして世々にたゆることなく ヱホバのさばきは眞實にしてことごとく正し

19:10

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これを黄金にくらぶるもおほくの純精金にくらぶるも 彌増りてしたふべく これを蜜にくらぶるも蜂のすの滴瀝にくらぶるもいやまさりて甘し

19:11

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なんぢの僕はこれらによりて儆戒をうく これらをまもらば大なる報賞あらん

19:12

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たれかおのれの過失をしりえんや ねがはくは我をかくれたる愆より解放ちたまへ

19:13

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願くはなんぢの僕をひきとめて故意なる罪ををかさしめず それをわが主たらしめ給ふなかれ さればわれ玷なきものとなりて大なる愆をまぬかるるをえん

19:14

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ヱホバわが磐わが贖主よ わがくちの言わがこころの思念なんぢのまへに悦ばるることを得しめたまへ

第20篇

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伶長にうたはしめたるダビデのうた

20:1

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ねがはくはヱホバなやみの日になんぢにこたヘヤユブのかみの名なんぢを高にあげ

20:2

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聖所より援助をなんぢにおくりシオンより能力をなんぢにあたへ

20:3

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汝のもろもろの献物をみこころにとめ なんぢの燔祭をうけたまはんことをセラ

20:4

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ねがはくはなんちがこころの願望をゆるし なんぢの謀略をことごとく遂しめたまはんことを

20:5

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我儕なんぢの救によりて歓びうたひ われらの神の名によりて旗をたてん ねがはくはヱホバ汝のもろもろの求をとげしめたまはんことを

20:6

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われ今ヱホバその受膏者をすくひたまふを知る ヱホバそのきよき天より右手なるすくひの力にてかれに應へたまはん

20:7

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あるひは車をたのみあるひは馬をたのみとする者あり されどわれらはわが神ヱホバの名をとなへん

20:8

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かれらは屈みまた仆るわれらは起てかたくたてり

20:9

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ヱホバよ王をすくひたまへ われらがよぶとき應へたまへ

第21篇

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伶長にうたはしめたるダビデのうた

21:1

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ヱホバよ王はなんぢの力によりてたのしみ汝のすくひによりて奈何におほいなる歓喜をなさん

21:2

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なんぢ彼がこころの願望をゆるし そのくちびるの求をいなみ給はざりきセラ

21:3

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そはよきたまものの惠をもてかれを迎へ まじりなきこがねの冕弁をもてかれの首にいただかせ給ひたり

21:4

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かれ生命をもとめしに汝これをあたへてその齢の日を世々かぎりなからしめ給へり

21:5

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なんぢの救によりてその榮光おほいなり なんぢは尊貴と稜威とをかれに衣せたまふ

21:6

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そは之をとこしへに福ひなるものとなし聖顔のまへの歓喜をもて樂しませたまへばなり

21:7

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王はヱホバに依頼み いとたかき者のいつくしみを蒙るがゆゑに動かさるることなからん

21:8

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なんぢの手はそのもろもろの仇をたづねいだし 汝のみぎの手はおのれを憎むものを探ねいだすべし

21:9

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なんぢ怒るときは彼等をもゆる爐のごとくにせんヱホバはげしき怒によりてかれらを呑たまはん 火はかれらを食つくさん

21:10

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汝かれらの裔を地よりほろぼし かれらの種を人の子のなかよりほろぼさん

21:11

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かれらは汝にむかひて惡事をくはだて遂がたき謀略をおもひまはせばなり

21:12

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汝かれらをして背をむけしめ その面にむかひて弓絃をひかん

21:13

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ヱホバよ能力をあらはしてみづからを高くしたまへ 我儕はなんぢの稜威をうたひ且ほめたたへん

第22篇

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あけぼのの鹿の調にあはせて伶長にうたはしめたるダビデの歌

22:1

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わが神わが神なんぞ我をすてたまふや 何なれば遠くはなれて我をすくはず わが歎きのこゑをきき給はざるか

22:2

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ああわが神われ晝よばはれども汝こたへたまはず 夜よばはれどもわれ平安をえず

22:3

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