街上の歓声

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本文[編集]

街上の歓声
萩原恭次郎

誰だ かの雑踏中に
破裂する汽鑵にも似たる喚声に
自らに武装し
短軀を火のやうに怒らし
一集団の中心となりて
街上に声を放ちをる争擾は
冬の夕暮れを
空に抛物線を描いて投ぜられるものは
彼等の靴か! 帽子か!
否! 否! 否!
それは群衆にとりかこまれたる
悲しくも怒りたる一無産者の
憤ろしい砲弾のやうな肉体!
爆ねやうとする
危険なる一無産者の怒り!
彼が絶望と
彼が恐怖の固り!
おゝ そして どつと起りひろがる
群集の 街上の歓声
其は何故の歓声か
其は何故の歓声であるのか
悲しい冬の夕暮れに——