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蜂の書/第35章

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蜂の書

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[p.78]

第35章

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[1] << ガブリエルによるマリアへの主の受胎の告知について >>


週の初めの日の九時、アダルの月の二十五日――ある者はニサンの月の一日と言うが、これは正しい――フィリッポスの子アレクサンデル、またはマケドニア人ネクタネブスの三百七年[2]、エリサベツがヨハネを身ごもってから6か月後、大天使ガブリエルがマリアに現れて言った。「恵み豊かなあなたよ、平安あれ。我らの主はあなたと共におられます。女の中で祝福された方よ。」マリアはそれを見て、その言葉に恐れおののき、この挨拶は何事かと考え込んだ。天使はマリアに言った。「マリアよ、恐れることはない。あなたは神の恵みを受けている。見よ、あなたは身ごもって男の子を産む。その子をインマヌエルと名づけなさい。これは『我らの神は私たちと共におられる』という意味である。この子は偉大な子となり、いと高き方の子と呼ばれるであろう。」マリアは天使に言った。「私は主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」天使は彼女から立ち去った。そのころ、マリアは起き上がり、親戚エリサベツのもとへ行き、彼女は中に入ってエリサベツに挨拶した。エリサベツがマリアの挨拶を聞くと、胎内の子がおどり、エリサベツの胎内のヨハネは、主君に仕える召使いのように、マリアの胎内の主にひれ伏した。マリアはエリサベツのもとに三ヶ月ほど滞在した後、彼女の家へ帰った。六ヶ月が経った後、ヨセフはマリアが身ごもったのを見て、心をわずらわせ、「このわたしに降りかかった試練について、大祭司に何と答えたらよいだろうか」と言った。ヨセフは妻の純潔を頼りにしていたため、当惑と疑念に陥り、彼女に言った。「あなたはどこからこんなことをしたのですか。誰があなたを惑わしたのですか。ああ、完全な鳩よ。あなたは主の神殿で、清らかな処女たちや尊敬すべき婦人たちと共に育てられたのではありませんか」。

[p.79] 彼女は泣きながら言った。「主なる神は生きておられます。私はまだ男の人を知りませんし、だれとも交わりを持ったこともありません。」しかし、天使のことや身ごもった理由についてはヨセフに話さなかった。ヨセフは心の中で思いを巡らせ、こう言った。「このことを人々に告げれば、神から出たものではないとされるのではないかと恐れます。また、このことを隠しておけば、律法の戒めと罰を恐れます。」ユダヤ人たちは、大祭司のために祝宴を催してからでないと、妻に近づくことはなかった。そして、それから妻をめとったのである。ヨセフはひそかにマリアを離縁しようと考え、心の中で思い巡らしていたとき、主の天使が夢に現れて言った。「ダビデの子ヨセフよ、マリアを妻に迎えることを恐れてはならない。彼女のうちに生まれたものは聖霊によるのだ。」ヨセフが「彼女のうちに」と言い、「彼女から」と言わなかったのは賢明なことであった。

祭司たちはマリアの懐妊のことを聞き、ヨセフに偽りがあるかのように告発した。ヨセフは「主は生きておられます。彼女が懐妊した理由を私は知りません」と言い、マリアも同じように誓った。ユダヤ人の間では、誰かが告発されると、「試練の水」を飲ませるという習慣があった[3]。もし彼が無実であれば、彼は傷つけられることはなかったが、もし彼が有罪であれば、彼の腹は膨れ上がり、彼の体は腫れ上がり、懲罰の跡が彼に現れた。彼らがマリアとヨセフに試練の水を飲ませ、彼らが傷つけられなかったとき、大祭司はヨセフに、この事が終わるまで彼女を熱心に監視するように命じた[4]


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脚注

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  1. オックスフォード写本第39章。
  2. 写本では、Niktîbûs 。
  3. 民数記 5:18以下。
  4. ウィリアム・ホーン著『新約聖書外典(Apoc. New Test.)』Protevangelion 第11章、カウパー著『外典福音書(Apocryphal Gospels)』48ページ、ティロ著『外典写本(Codex Apocryphus)』372ページ、ティッシェンドルフ著『Evangelia Apoc.』 72ページを参照。
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