群集の中に

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本文[編集]

群集の中に
萩原恭次郎

群衆の中に一人ぽつねん立つてゐる
其は立ちん坊より淋しい心である
樹の実が 樹に在るやうな静謐さにて
満たせない心は群集の中に目をつむつてゐる!

私のふところには
白紙一枚ないけれ共
飢餓から来る脅迫!
失業から来る白眼の冷嘲
そは口火つけられしダイナモの如きもの
しづかに燃えゆき
しづかに笑ひは真の怒りに変はる!

あゝ かすかにも遠く爆音をきく時に
われらの目はかつと見開かる!