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現代仮名遣い (昭和61年内閣告示第1号)

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内閣告示第一号

 一般の社会生活において現代の国語を書き表すための仮名遣いのよりどころを、次のように定める。

 なお、昭和二十一年内閣告示第三十三号は、廃止する。

昭和六十一年七月一日

内閣総理大臣 中曽根 康弘


前書き

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1 この仮名遣いは,語を現代語の音韻に従つて書き表すことを原則とし,一方,表記の慣習を尊重して一定の特例を設けるものである。

2 この仮名遣いは,法令,公用文書,新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活において,現代の国語を書き表すための仮名遣いのよりどころを示すものである。

3 この仮名遣いは,科学,技術,芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。

4 この仮名遣いは,主として現代文のうち口語体のものに適用する。原文の仮名遣いによる必要のあるもの,固有名詞などでこれによりがたいものは除く。

5 この仮名遣いは,擬声・擬態的描写や嘆声,特殊な方言音,外来語・外来音などの書き表し方を対象とするものではない。

6 この仮名遣いは,「ホオ・ホホ(頬)」「テキカク・テッカク(的確)」のような発音にゆれのある語について,その発音をどちらかに決めようとするものではない。

7 この仮名遣いは,点字,ローマ字などを用いて国語を書き表す場合のきまりとは必ずしも対応するものではない。

8 歴史的仮名遣いは,明治以降,「現代かなづかい」(昭和21年内閣告示第33号)の行われる以前には,社会一般の基準として行われていたものであり,今日においても,歴史的仮名遣いで書かれた文献などを読む機会は多い。歴史的仮名遣いが,我が国の歴史や文化に深いかかわりをもつものとして,尊重されるべきことは言うまでもない。また,この仮名遣いにも歴史的仮名遣いを受け継いでいるところがあり,この仮名遣いの理解を深める上で,歴史的仮名遣いを知ることは有用である。付表において,この仮名遣いと歴史的仮名遣いとの対照を示すのはそのためである。

本 文

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凡例

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1 原則に基づくきまりを第1に示し,表記の慣習による特例を第2に示した。

2 例は,おおむね平仮名書きとし,適宜,括弧内に漢字を示した。常用漢字表に掲げられていない漢字及び音訓には,それぞれ*印及び△印をつけた。

第1 語を書き表すのに,現代語の音韻に従って,次の仮名を用いる。

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ただし,下線を施した仮名は,第2に示す場合にだけ用いるものである。

1 直音

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例 あさひ(朝日) きく(菊) さくら(桜) ついやす(費) にわ(庭) ふで(筆) もみじ(紅葉) ゆずる(譲) れきし(歴史) わかば(若葉)
えきか(液化) せいがくか(声楽家) さんぽ(散歩)

2 拗音

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きゃ きゅ きょ ぎゃ ぎゅ ぎょ
しゃ しゅ しょ じゃ じゅ じょ
ちゃ ちゅ ちょ ぢゃ ぢゅ ぢょ
にゃ にゅ にょ
ひゃ ひゅ ひょ びゃ びゅ びょ
ぴゃ ぴゅ ぴょ
みゃ みゅ みょ
りゃ りゅ りょ
例 しゃかい(社会) しゅくじ(祝辞) かいじょ(解除) りゃくが(略画)

〔注意〕 拗音に用いる「や,ゆ,よ」は,なるべく小書きにする。

3 撥音

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例 まなんで(学) みなさん しんねん(新年) しゅんぶん(春分)

4 促音

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例 はしって(走) かっき(活気) がっこう(学校) せっけん(石鹸*)

〔注意〕 促音に用いる「つ」は,なるべく小書きにする。

5 長音

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(1) ア列の長音

ア列の仮名に「あ」を添える。

例 おかあさん おばあさん

(2) イ列の長音

イ列の仮名に「い」を添える。

例 にいさん おじいさん

(3) ウ列の長音

ウ列の仮名に「う」を添える。

例 おさむうございます(寒) くうき(空気) ふうふ(夫婦)
うれしゅう存じます きゅうり ぼくじゅう(墨汁) ちゅうもん(注文)

(4) エ列の長音

エ列の仮名に「え」を添える。

例 ねえさん ええ(応答の語)

(5) オ列の長音

オ列の仮名に「う」を添える。

例 おとうさん とうだい(灯台)
わこうど(若人) おうむ
かおう(買) あそぼう(遊) おはよう(早)
おうぎ(扇) ほうる(抛*) とう(塔)
よいでしょう はっぴょう(発表)
きょう(今日) ちょうちょう(蝶*々)

第2 特定の語については,表記の慣習を尊重して,次のように書く。

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1 助詞の「を」は,「を」と書く。

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例 本を読む 岩をも通す 失礼をばいたしました
やむをえない いわんや…をや よせばよいものを
てにをは

2 助詞の「は」は,「は」と書く。

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例 今日は日曜です 山では雪が降りました
あるいは または もしくは
いずれは さては ついては ではさようなら とはいえ
惜しむらくは 恐らくは 願わくは
これはこれは こんにちは こんばんは
悪天候もものかは

〔注意〕 次のようなものは,この例にあたらないものとする。

いまわの際 すわ一大事
雨も降るわ風も吹くわ 来るわ来るわ きれいだわ

3 助詞の「へ」は,「へ」と書く。

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例 故郷へ帰る …さんへ 母への便り 駅へは数分

4 動詞の「いう(言)」は,「いう」と書く。

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例 ものをいう(言) いうまでもない 昔々あったという
どういうふうに 人というもの こういうわけ

5 次のような語は,「ぢ」「づ」を用いて書く。

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(1) 同音の連呼によって生じた「ぢ」「づ」
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例 ちぢみ(縮) ちぢむ ちぢれる ちぢこまる
つづみ(鼓) つづら つづく(続) つづめる(約△) つづる(綴*)

〔注意〕 「いちじく」「いちじるしい」は,この例にあたらない。

(2) 二語の連合によって生じた「ぢ」「づ」
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例 はなぢ(鼻血) そえぢ(添乳) もらいぢち そこぢから(底力) ひぢりめん
いれぢえ(入知恵) ちゃのみぢゃわん
まぢか(間近) こぢんまり
ちかぢか(近々) ちりぢり
みかづき(三日月) たけづつ(竹筒) たづな(手綱) ともづな にいづま(新妻) けづめ ひづめ ひげづら
おこづかい(小遣) あいそづかし わしづかみ こころづくし(心尽) てづくり(手作) こづつみ(小包) ことづて はこづめ(箱詰) はたらきづめ みちづれ(道連)
かたづく こづく(小突) どくづく もとづく うらづける ゆきづまる ねばりづよい
つねづね(常々) つくづく つれづれ

なお,次のような語については,現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等として,それぞれ「じ」「ず」を用いて書くことを本則とし,「せかいぢゅう」「いなづま」のように「ぢ」「づ」を用いて書くこともできるものとする。

例 せかいじゅう(世界中)
いなずま(稲妻) かたず(固唾*) きずな(絆*) さかずき(杯) ときわず ほおずき みみずく
うなずく おとずれる(訪) かしずく つまずく ぬかずく ひざまずく
あせみずく くんずほぐれつ さしずめ でずっぱり なかんずく
うでずく くろずくめ ひとりずつ
ゆうずう(融通)

〔注意〕 次のような語の中の「じ」「ず」は,漢字の音読みでもともと濁っているものであって,上記(1),(2)のいずれにもあたらず,「じ」「ず」を用いて書く。

例 じめん(地面) ぬのじ(布地)
ずが(図画) りゃくず(略図)

6 次のような語は,オ列の仮名に「お」を添えて書く。

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例 おおかみ おおせ(仰) おおやけ(公) こおり(氷・郡△) こおろぎ ほお(頬*・朴△) ほおずき ほのお(炎) とお(十)
いきどおる(憤) おおう(覆) こおる(凍) しおおせる とおる(通) とどこおる(滞) もよおす(催)
いとおしい おおい(多) おおきい(大) とおい(遠) おおむね おおよそ

これらは,歴史的仮名遣いでオ列の仮名に「ほ」又は「を」が続くものであって,オ列の長音として発音されるか,オ・オ,コ・オのように発音されるかにかかわらず,オ列の仮名に「お」を添えて書くものである。

付記

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次のような語は,エ列の長音として発音されるか,エイ,ケイなどのように発音されるかにかかわらず,エ列の仮名に「い」を添えて書く。

例 かれい せい(背)
かせいで(稼) まねいて(招) 春めいて
へい(塀) めい(銘) れい(例)
えいが(映画) とけい(時計) ていねい(丁寧)

付表

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凡例

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1 現代語の音韻を目印として,この仮名遣いと歴史的仮名遣いとの主要な仮名の使い方を対照させ,例を示した。

2 音韻を表すのには,片仮名及び長音符号「ー」を用いた。

3 例は,おおむね漢字書きとし,仮名の部分は歴史的仮名遣いによった。常用漢字表に掲げられていない漢字及び音訓には,それぞれ*印及び△印をつけ,括弧内に仮名を示した。

4 ジの音韻の項には,便宜,拗音の例を併せ挙げた。

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