特定産業振興臨時措置法案
- 特定産業振興臨時措置法案
- 特定産業振興臨時措置法
- (目的)
第一条 この法律は、貿易の自由化等により経済事情が変動しつつある事態にかんがみ、産業構造の高度化を促進するため、その国際競争力を培養する必要がある産業について、生産又は経営の規模の適正化を通じ産業活動を効率化するための措置を講ずることにより、その振興を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
- (特定産業)
第二条 この法律で「特定産業」とは、次に掲げる業種に属する製造業であつて、政令で指定するものをいう。
- 一 合金鉄製造業又は合金鋼若しくは高炭素鋼の製鋼若しくは圧延業
- 二 四輪自動車又は自動車用のタイヤ若しくはチユーブの製造業
- 三 有機化学工業製品(石油化学工業製品及びこれと同種の製品であつて石油化学工業において用いられる生産方式以外の生産方式によつて生産されるものに限る。)の製造業(飲食料品製造業、農薬製造業、医薬品製造業、石油精製業及び化学肥料製造業であるものを除く。)
- 四 前各号に掲げる業種のほか、産業構造の高度化を促進するためその発達を図ること及びその国際競争力を培養するため生産又は経営の規模の適正化を通じ産業活動を効率化することが必要であり、かつ、その必要性が前各号に掲げるものに準ずると認められる業種であつて政令で定めるもの
2 主務大臣は、前項第四号の政令の制定又は改廃の立案をするには、産業合理化審議会の意見をきかなければならない。
3 第一項各号に掲げる業種に属する製造業に係る事業者団体であつて、その加入者に当該製造業を営む者の大部分を含み、かつ、その加入者が当該製造業の事業活動の大部分を行なつているものは、主務大臣に対し、当該製造業を特定産業に指定し、又はその指定を解除すべき旨の申出をすることができる。
4 主務大臣は、第一項各号列記以外の部分の政令の制定又は改廃の立案をするには、前項の申出に基づき、かつ、産業合理化審議会の意見をきかなければならない。
- (振興基準)
第三条 一の製造業が特定産業となつたときは、特定産業ごとに、次の各号に掲げる者は、政令で定めるところにより、学識のある者又は関係事業者その他の利害関係者の意見をきいて、当該特定産業の振興を図るための基準(以下「振興基準」という。)について討議するものとする。
- 一 主務大臣
- 二 事業者団体であつて、その加入者に当該特定産業を営む者の大部分を含み、かつ、その加入者が当該特定産業の事業活動の大部分を行なつているものの指名を受けた者
2 事業者団体であつて、その直接又は間接の加入者に当該特定産業に資金を供給している銀行(銀行法(昭和二年法律第二十一号)第二条の規定による免許を受けた銀行及び長期信用銀行法(昭和二十七年法律第百八十七号)第二条に規定する長期信用銀行をいう。以下同じ。)の大部分を含むものの指名を受けた者及び政令で定める政府関係金融機関の指名を受けた者は、前項の討議に参加するものとする。
3 大蔵大臣は、税制、金融その他の所掌事務に関し、第一項の討議に参加するものとする。
4 振興基準には、次に掲げる事項の一又は二以上に関する一般的な方針が定められていなければならない。この場合において、第五号又は第六号に掲げる事項に係る方針は、適正な生産の規模又は方式その他の目標を明らかにして定められていなければならない。
- 一 規格の整備に関する事項
- 二 生産の専門化に関する事項
- 三 設備投資の適正化に関する事項
- 四 設備の効率化に関する事項
- 五 事業の共同化に関する事項
- 六 合併に関する事項
- 七 事業の転換に関する事項
- 八 前各号に掲げるもののほか、生産又は経営の規模の適正化を通じ産業活動を効率化するために必要な事項
5 主務大臣は、第一項の規定による討議を経て同項第二号に掲げる者との間に振興基準についての合意が成立したときは、あらかじめ大蔵大臣に協議し、これを官報で公示しなければならない。
6 第一項から前項までの規定は、振興基準を変更する場合に準用する。
- (振興基準の変更に関する請求)
第四条 前条第一項第一号若しくは第二号に掲げる者又は同条第二項若しくは第三項に規定する者は、振興基準が特定産業を営む者若しくは特定産業に資金を供給している銀行の利益を不当に害することとなると認められるとき、又は経済事情の著しい変動その他の理由により特に必要があると認められるときは、同条第一項第一号又は第二号に掲げる者に対し、振興基準の変更についての討議を開始すべきことを求めることができる。
- (特定産業を営む者の努力等)
第五条 特定産業を営む者は、当該特定産業に係る振興基準で定められた方針に従つて生産又は経営の規模の適正化を通じ産業活動を効率化するように努めなければならない。
第六条 銀行は、特定産業を営む者に対する資金の供給については、その判断に当たり、この法律の趣旨にそうよう留意するものとする。
2 政府関係金融機関は、特定産業に係る振興基準で定められた方針に従つて生産又は経営の規模の適正化を通じ産業活動を効率化することに寄与すると認められるときは、特定産業を営む者に対する資金の供給に努めなければならない。
- (資金の確保)
第七条 政府は、特定産業を営む者に対し、当該特定産業に係る振興基準で定められた方針に従つて生産又は経営の規模の適正化を通じ産業活動を効率化するため必要な資金について、その確保に努めるものとする。
- (合併等の場合の課税の特例)
第八条 主務大臣は、政令で定めるところにより、特定産業を営む者に対し、その者が同一の業種の特定産業を営む他の法人と合併し、又は同一の業種の特定産業を営む他の法人に対して出資し、若しくは同一の業種の特定産業を営む他の者とともに出資して特定産業を営む法人を設立することにより、当該特定産業を営む者の事業の生産性が著しく向上し、かつ、当該特定産業を営む者が当該特定産業に係る振興基準で定める適正な生産の規模又は方式その他の目標に達することとなると認められる旨の承認をすることができる。
2 主務大臣は、前項に規定する出資をする特定産業を営む法人に対して同項の承認をする場合には、政令で定めるところにより、当該法人に対し、当該出資に係る資産が当該出資を受ける法人又は当該出資に基づいて設立される法人の営む特定産業の用に供するため必要なものである旨の承認をあわせてすることができる。
3 第一項若しくは前項の承認を受けた者、第一項の承認に係る合併後存続する法人若しくは当該合併により設立した法人又は同項の承認に係る出資を受けた法人若しくは当該出資に基づいて設立された法人については、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、法人税又は登録税を軽減する。
- (共同行為)
第九条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「私的独占禁止法」という。)の規定は、特定産業に係る振興基準で定められた方針に従つて生産又は経営の規模の適正化を通じ産業活動を効率化するため特に必要がある場合において、当該特定産業を営む者が公正取引委員会の認可を受けて実施する次に掲げる事項に係る共同行為については、適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いるときは、この限りでない。
- 一 品種又は生産方式の制限
- 二 品種別又は生産方式別の生産数量の制限(前号に掲げる事項に係る共同行為を実施することが著しく困難である場合においてするものに限る。)
- 三 生産の設備の制限又は処理(設備の更新又は改良を妨げるものを除く。)
- 四 部品の購入方法
- 五 生産、保管又は運送の施設の利用
- 六 事業の廃止に伴う調整金の授受
2 私的独占禁止法の規定は、前項第一号に掲げる事項に係る共同行為のみをもつてしては特定産業に係る振興基準で定められた方針に従つて当該特定産業の製品の規格を整備することが困難である場合であつて、その規格を整備するため特に必要がある場合において、当該特定産業の製品を使用する産業(製造業又は電気供給業に限る。)を営む者が公正取引委員会の認可を受けて実施するその使用する当該特定産業の製品の規格の制限に係る共同行為については、適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いるときは、この限りでない。
3 公正取引委員会は、前二項の認可の申請に係る共同行為が次の各号に適合すると認めるときは、その申請を認可しなければならない。
- 一 第一項の認可の申請に係る共同行為にあつては、同項に規定する要件に適合し、前項の認可の申請に係る共同行為にあつては、同項に規定する要件に適合するものであること。
- 二 一般消費者及び関係中小企業者、関係農林漁業者その他の関係事業者の利益並びに当該特定産業を営む者の従業員の地位を不当に害するおそれがないこと。
- 三 不当に差別的でないこと。
- 四 その共同行為に参加し、又はその共同行為から脱退することを不当に制限しないこと。
4 第一項又は第二項の認可の申請は、主務大臣を経由しなければならない。
5 主務大臣は、前項に規定する申請に関する書類を受理したときは、遅滞なく、これを公正取引委員会に送付しなければならない。
6 主務大臣は、第四項に規定する申請に関し、公正取引委員会に対して必要な意見を述べることができる。
- (公正取引委員会と主務大臣との関係)
第十条 公正取引委員会は、前条第一項若しくは第二項の認可をし、若しくはその申請を却下しようとするとき、又は次条において準用する私的独占禁止法第六十六条第一項の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ主務大臣に協議しなければならない。
- (準用)
第十一条 私的独占禁止法第二十四条の三第五項から第七項まで(処分の公表等)、第六十五条(認可申請の却下)、第六十六条第一項(認可の取消等)、第六十七条第二項及び第三項、第六十八条(停止命令等)、第七十条の二(不服申立ての制限)、第八十六条(専属管轄)並びに第八十八条(異議申立てと訴訟との関係)の規定は、第九条第一項及び第二項の認可に準用する。
- (合併に関する判断の基準の公表等)
第十二条 主務大臣は、特定産業に係る振興基準であつて合併に関する方針が定められているものを第三条第五項の規定により公示した場合には、公正取引委員会に対し、当該特定産業を営む法人が他の法人とする合併が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるかどうかについての判断の基準となるべき事項を定めて公表すべきことを求めることができる。
2 主務大臣は、前項の規定により判断の基準となるべき事項を定めて公表すべきことを求める場合には、公正取引委員会に対し、当該特定産業の製品と同種の製品その他用途が直接競合する製品の輸入の制限の廃止その他これに準ずる措置に関する事項及びその措置が当該特定産業の製品に係る競争に及ぼす影響に関する事項について意見を述べることができる。
3 前二項の規定は、第三条第六項において準用する同条第五項の規定による公示があつた場合及び前項に規定する事項に著しい変更があつた場合に準用する。
4 前三項の規定は、営業の全部又は重要部分の譲受その他合併に準ずる行為に準用する。
- (罰則)
第十三条 第十一条において私的独占禁止法第六十七条第二項の規定を準用する場合の違反については、同法第九十八条の規定を準用する。
- 附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 この法律は、施行の日から五年以内に廃止するものとする。
3 租税特別措置法の一部を次のように改正する。
- 第六十六条の二第一項中第六号を第七号とし、第一号から第五号までを一号ずつ繰り下げ、同項に第一号として次のように加える。
- 一 特定産業振興臨時措置法(昭和三十八年法律第 号)第二条第一項に規定する特定産業を営む法人で同法第八条第一項の規定による承認を受けたもの
- 第六十六条の三第一項中「第一号、第三号、第五号又は第六号」を「第二号、第四号、第六号又は第七号」に改める。
- 第六十六条の五中「第三号から第五号まで」を「第四号から第六号まで」に改める。
- 第六十六条の六第一項中第二号を第三号とし、第一号を第二号とし、同項に第一号として次のように加える。
- 一 特定産業振興臨時措置法第二条第一項に規定する特定産業を営む法人で同法第八条第一項及び第二項の規定による承認を受けたもの 同項の規定による承認に係る固定資産
- 第六十六条の六第二項中「(以下この条において「出資法人」という。)が」の下に「、特定産業振興臨時措置法第八条第二項」を加える。
- 第八十一条中「、又は」の下に「特定産業振興臨時措置法第八条第一項、」を加える。
- 理 由
貿易の自由化等により経済事情が変動しつつある事態にかんがみ、産業構造の高度化を促進するため、その国際競争力を培養する必要がある産業について、生産の専門化、事業の共同化、合併等による生産又は経営の規模の適正化を通じ産業活動を効率化してその振興を図るための基準を定め、その基準で定められた方針を円滑に実施するための措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。
- 法律命令及官公󠄁文󠄁書
- 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
- 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。