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2019年1月3日 (木) 13:51時点における版
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== 北海の蟹 ==
陽に興じては
花粉のごとく風にながれ
たそがてにおどろきては
鳥のごとく巣にかえる
あわれ友よ
今日もまた旅をゆくか
海あらき
北国の大いなる蟹を
ふるさとのわれに送りきたれり
(この蟹の
恐げに 醜く
毒気あり
食えばかならず死すならむ―)
おどけたる手紙をよみて
恐れを抱きしごと
わが家の妻も児どもも食わずと言う。
北海にそだちし蟹は
今宵 南海の
つれなき男に 食われいる
おどけたる友よ
毒気ある蟹は
〈昭和四年、愛誦〉
== 琉球の女 ==
杏の実の匂うたそがれ
私は 風の贈物をうけよう。
蒼白い月
デイゴの樹にまつわる
夜潮のささやきを聞こう。
この春 この貧しい町におとずれて
眉のほそい 琉球の女たちは
蛇皮線を弾いて 異国の酒を売った。
鼓を打ち、笛の音にあわせて
エキゾチックな 色あざやかな歌々を
かの日の 疲れはて 青ざめた
娘子軍の
(その
遠くふるさとの老母の姿が消えた)
杏の実の匂うたそがれ
私は この漂白の人達のかなしみをよせて
熱帯の強烈な酒に酔いしれよう。
私は 風の贈物をうけよう。
〈昭和四年、炬火〉
== 暴風 ==
A
かぜ
空とおく
かもめをちらし
かぜ
磯松を裂きて
われらに迫る。
B
ああ ひょうひょうと
読経よ!
泡立つ墓地よ!
今宵 幾艘の舟を呑みて
幾多の命を埋むることか。
〈昭和四年、炬火〉
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