無題 (日比谷)

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本文[編集]

無題
萩原恭次郎

女と若者が
 広場で
   秋だ
煙火の遊戯をしてゐる

俺は餓ゑた
坂を匐ひ上つて来た
  固い眼で
無神経のやうに

  しまつた!
  街角を
灰色の自動車は曲つた
罪人のやうな速さで

俺は 神経を
螺旋のやうに廻転した
小さい眼を———もつと固く
身が前へ こごむやうに

心臓が圧された

  行け! 速時
  第三の場所
  十字街へ
—————あの●●●●●●
—————あの●●●●●●●
巻き起された
  黄色の砂煙を追ひ

餓ゑた胃
   一度に苦い憎悪
爆裂の 急激な 焦燥の
十倍に
   百倍に
  歩行を進ませよ
笑ひや涙の乾いた街巷を
硝煙臭い突走
 走つて
     走つて
       走つて
         走る本能の激怒
 ————あの××××××
 ————あの××××××××××

解題[編集]

作者:萩原恭次郎

底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1

表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。