泥濘中の太陽を胸に燃やさない限り

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本文[編集]

泥濘中の太陽を胸に燃やさない限り
萩原恭次郎

検束の翌日 胃弱の俺を
看守は犬のやうに匂ひを嗅いではなした
真面目に悲しめなくなつたバタのやうな心を
俺は慰める事が出来ない

クル クル クル クル ルク ルク ルク
玩具の風車を売つてゐる屋台の婆さんの腸が
ブム ブム 虻のやうに泣いて裂けてゐる
泥濘の中の太陽を胸に燃やさない限り
弥次郎兵衛のやうに険呑の頂上にゐるばかりだ

解題[編集]

作者:萩原恭次郎

底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1

表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。