東京通信

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本文[編集]

東京通信
萩原恭次郎


——大正十二年十二月——


飢えた腹の底で短気な悲哀が旗をふつてゐる
安い酒精も与へられない洋服君
十二月末の黄色い東洋的色彩の貧弱

力ない歩行のピエローの群れの中
景気の好いのは
救世軍士官と罹災民の女房の色目
眼鏡の角ばつた新婦人の黄色い歯と唇
接吻は危険な巡査の嗄れ声
ぼろタクシーのはねつける泥
訴訟 姦淫 電車通路 人 馬 ラツパ

昨今 東京は満艦飾の軍艦が
巷の波に動揺してゐるやうな賑かさ

解題[編集]

作者:萩原恭次郎

底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1

表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。