春日狂想
1
愛するものが死んだ時には、 自殺しなけあなりません。
愛するものが死んだ時には、 それより他に、方法がない。
けれどもそれでも、
奉仕の気持に、なることなんです。 奉仕の気持に、なることなんです。
愛するものは、死んだのですから、 たしかにそれは、死んだのですから、
もはやどうにも、ならぬのですから、 そのもののために、そのもののために、
奉仕の気持に、ならなけあならない。 奉仕の気持に、ならなけあならない。
2
奉仕の気持になりはなったが、 さて格別の、ことも出来ない。
そこで
テムポ正しき散歩をなして
まるでこれでは、
神社の日向を、ゆるゆる歩み、
知人に
まぶしくなつたら、日蔭に
苔はまことに、ひんやりいたし、 いはうやうなき、今日の麗日。
参詣人等もぞろぞろ歩き、 わたしは、なんにも腹が立たない。
((まことに人生、一瞬の夢、
ゴム風船の、美しさかな。))
空に昇つて、光つて、消えて―― やあ、今日は、御機嫌いかが。
久しぶりだね、その後どうです。
そこらの
勇んで茶店に
煙草なんぞを、くさくさ吹かし、 名状しがたい覚悟をなして、――
馬車も通れば、電車も通る。 まことに人生、花嫁御寮。
まぶしく、
それでも心をポーッとさせる、 まことに、人生、花嫁御寮。
3
ではみなさん、 喜び過ぎず悲しみ過ぎず、 テムポ正しく、握手をしませう。
つまり、我等に欠けてるものは、 実直なんぞと、心得まして。
ハイ、ではみなさん、ハイ、御一緒に―― テムポ正しく、握手をしませう。
この著作物は、1937年に著作者が亡くなって(団体著作物にあっては公表又は創作されて)いるため、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(回復期日を参照)の時点で著作権の保護期間が著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以下である国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
この著作物は、アメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。