日本基督公會条例
附録(二号)
第二、日本基督公会条例
第一条例(信諸則)
日本国に立る所の耶蘇キリスト公会に於いて信ずべき事左の如し。
第一則、聖書は神霊の示す所叉権能と其信ずべき事を充実せる事。
第二則、聖書を読み且伝ふるとき自己の決心に任ずべきは正理なる事叉務べき事。
第三則、神は唯一にして三位ある事。
第四則、始祖の原罪に因りて人皆罪を犯す者となれる事。
第五則、神の子肉体となりて降生し人類の罪を贖い、叉中保となりて信者を天交に顕はし、叉之れが為に祈り、且公会の首となりて之を統一する事。
第六則、罪人は唯信に由りて救を受け義とせらるゝ事。
第七則、罪人を更生し之を清潔に帰せしむるは聖霊の感能に由れる事。
第八則、霊魂の死せざることゝ身体の復活すること、および我儕の主耶蘇キリストは世界を審判し、並びに義者に永福を与へ悪者に永罰を与ふる事。
第九則、キリストの司職は神の設立すること、叉洗礼と聖晩餐の式は公会の大礼にして永く守るべき事。
第二条例(公会基礎)
我輩の公会は宗派に属せず唯耶蘇キリストの名に依りて建る所なれば、単に聖書を標準とし、是を信じ、是を勉る者は、皆是キリストの僕、我輩の兄弟なれば、会中の各員全世界の信者を同視して一家の信愛を尽くすべし、是故に此会を基督公会と称す。
第三条例(安息日)
第一則、安息日毎に会堂に集り、神恩を感謝し、聖書を頌讃し、熱心を以て祈祷を成し、講ずる所の聖教を服暦し、偕に聖潔を全ふすべし。
第二則、毎月首の安息日において会中斉く聖晩餐を守るべし。
第四条例(会吏の職務)
会中に牧師、長老、執事の三職あり。
牧師は専ら祈祷を務め、道を伝へ、洗礼、聖晩餐とを行ひ、また長老、執事及会中を監督し、叉異端を禦ぎ、会友を監し、長老と共に進教退教の者を制裁するを職とす。但此職期を定め其時に従て牧師、会衆の意に任ずべし。
長老は牧師と偕に進教、退教の者を制裁し、牧師、執事、会友の行為及牧師の道を講ずることを監督し、諸事を治るを職とす。
但此職二年にして新撰、交代すべきも、衆議幾次も此人を公撰中に入るゝを妨なしとす。
執事は専ら出納を掌り、叉疾病、貧窮を訪ひ、救済のことを職とす。但此職務交代は長老に同じ。
第五条例(集会及公撰)
第一則、毎年四月十月第一の水曜日を集会の期日と定め、各会より牧師、長老一員づゝ其会の委員として来会し、互に各会の情態及其定議を演説し、規則の変換、全公会の保護、及伝道の便宜を論及すべし。
第二則、此公会の各員常々前第二条を堅く遵奉すべし。
第三則、集会に於いて議定すべき各伴は会衆三分の二を以て決定し、自余の一分は従て同意すべし。叉各会に於いて牧師、長老および執事を公撰するも此例に準すべし。
第六条例(勤 懲)
第一則、牧師、長老の勧導に従はず、其言行教意に背戻せる者は、会衆の意を得て牧師長老之を除くべし。
第二則、牧師、長老、執事を訴案するは牧師、長老の組の議定に任ずべし。
第七条例(通 則)
第一則、会中の兄弟屢集会して道義を講習し互に親愛を厚くして道に進むべし。若疾病、患難に罹る者あらば殊に之を慰藉すべし。
第二則、聖書中に於て其意味を明了に理解せざる事を軽率に説くべからず。
第三則、各会の各員其分相当の財を毎月執事に託し救済および公会の入費に充つべし。
第四則、居を転じ叉は三週以上其本地を離るゝときは之を長老に告げ互に音書を絶つべからず。若し彼処の公会に加わらんと欲せば長老の添書を受くべし。
今我儕公会条例を選定し以て会中相倶にキリストの一体を成して神の栄を顕し、神の楽を楽み永遠に至ん為に父子聖霊の恩慈勧導常に我儕の中に在んことを誠願す。アゝメン
附録(一号)
第一、公会規則
一、聖書は神霊の黙示なれば信ずべく行ふべきの標準たるなり。
二、全能の父天地万物を創造し玉へる独一の神なることを信。
三、その独子神に在て人となり神と人の両性を備えて体を為玉へる即我輩の主耶蘇基督唯一の救者なる事を信。
四、父と子より出づる聖霊我輩の心志を清潔にすることを信。
五、真実に耶蘇キリストを信ずるものは悉く一の全公会たる事を信。
六、亞当の罪に因て元祖の義を失ひしを信。
七、キリストの贖いに因て罪悪の赦しを得る事を信。
八、霊魂不死と肉体の復生とを信。
九、将来キリストの審判し玉へる事と永生の楽と永遠の苦とを信。
十、我輩凡て偶像を拝すると肉体の外欲とは悉くこれを棄てん。
十一、我輩生命を失といへども独一の救者を諒せずまじきなり。
十二、教師、長老の勧導に従ふと、兄弟真実に親睦すると道の勤べき事と聖晩餐を守るとは生涯よく慎んで之を守らん。
十三、尤宜く和平端正にして人を教へ、君長を尊敬し、父母に孝順に、公法を守るべきなり。
十四、諸事真神の前に勤労して人の窘迫を厭ひ、己を枉て利を権るべからず。
十五、凡て此条を全く成さんために主耶蘇の恩慈我輩の心志を庇祐したまはん事を願ふなり。
内規条
一、我輩主耶蘇を信ずるものは信心を増益せんため此公会を立、且聖書に適合と公会の清潔とを補佐の術策は長老の政事たるべしと憶ふ、是故に我輩此政事に従て横浜に主耶蘇の一公会を立つ。
二、総て此会に教師、長老、執事の三職あり。
三、教師の職は専ら祈祷を務めて道を伝え洗礼と聖晩餐とを行ひ、長老、執事公会を監督し、叉長老と共に進教の者退教の者を成裁す。
四、長老の職は教師と偕に進教の者退教の者を成裁し、諸教師、諸長老、執事等の行ふべき事を監督し、教友を訓誨し、教友の行為を研察し、叉会中斉く集まるときはこれをよく治理て群衆雑乱なからしめ、凡て教師を助け会中の諸事をよく司るなり。
五、執事の職は専ら銀銭のことを理む、損助のものあれば之を収蔵し、貧乏の者あれば之を救済し、貧者、病者をよく懇切に問尋すべきなり。且その銀銭の出入を記して公会の望に任せてその記録を見すべきなり。
六、一年に三月九月の二回、首の安息日に各ひとしく集会し、会中の諸事、内規の改変を欲するは之を議し、凡て道に進むために衆議をなすべきなり。
七、長老、執事の任は二年にして改む、選挙の時は二月首の安息日に於いて名札多きに従ひ三分の二を以て決定すべし。既選定するときは三分の一方も二方と偕に同心唯諾すべし。
八、凡ての事会中議すでに定めて後は人々之に従て行ふべし。面に従て背に議すべからず。
九、聖書中の疑き事いまだ審にせざるものは猥りに教外の人に説べからず。蓋人を導んと欲し反て人を疑はすればなり。故に先づ教会に就て之を質し或は教師に於て之を論定すべし。
十、会中の兄弟疾病互に相恤み、患難あひ救ひ、疎んじて侮るべからず、弱き者を祐て共に道に進むべし。
十一、捐助の術は衆人各業の十分の一つを以て会に入べきなれども、今姑く自便に任せて毎月首の安息日に於て金を執事に託して救済の法を行べきなり。
十二、我輩居を転じ彼処の公会に加らんと欲ば許可を受べし。
十三、事ありて他国に行くものはその行を長老に告べし。もし久しくその国に留らんと欲するものはその情を長老に語て音書を絶つべからず。
十四、もし言と行と教に従はざる者有て諸兄弟の忠告をも聴ず、長老の訓導にも従はざるものは公会の意に因て教師、長老之を裁断すべし。
十五、教師、長老を裁判するは日本に公会数多立までは美国の教師、長老の裁判を受べきなり。
十六、凡そ教に加らんと欲るものは先其情を長老に語り尽くしつゝ会中の規則の意を知て後に加入すべきなり。