憲法調査会報告書の概要/はじめに
はじめに
[編集]‐報告書の構成と内容‐[1]
憲法調査会が第1回の総会を開いて、日本国憲法の再検討のための調査審議にとりかかつたのは、昭和32年8月13日であつた。
それから満7年、足かけ8年にわたつた調査審議の結果をとりまとめたものが、昭和39年7月3日、内閣および国会に提出された「憲法調査会報告書」である。
まず、報告書は本文と付属文書から成る。
本文だけで約1,200ページ、付属文書は約4,300ページに及ぶきわめて膨大な、大部のものである。
ところで、報告書の本文は、次の四編から成り立つている。
第一編 憲法調査会の設置および構成の経緯
- ここでは、調査会が設置されるに至つた事情、すなわち憲法調査会法が制定されるまでの経緯と、委員が任命され調査会が実際に発足するに至るまでの経緯およびその発足後における調査会に関する外部の動きなどが述べられている。
第二編 憲法調査会の所掌事務ならびに組織および運営
- ここでは、憲法調査会法によつて定められている調査会の任務や組織の説明とともに、さらに調査がどのような方針に基づいて運営されてきたかについて述べられている。
第三編 調査審議の経過および内容
- ここでは、調査審議の経過として、調査会が日本国憲法の諸問題を調査審議しその結果を内閣および国会に報告するというその任務をどのような順序で行なつてきたか、またその調査審議にあたつてはどのような基本方針をとつたかが述べられている。また、その調査審議の内容としては、日本国憲法制定の経過および日本国憲法運用の実際についての調査の内容と公聴会および海外調査の内容とが、要約されて掲げられている。
- そして、日本国憲法の問題点に関する審議、特に日本国憲法は改正を要するかどうかについての審議の内容は、次の第四編に譲られている。
第四編 憲法調査会における諸見解
- この第四編が、いわば報告書における結論的な部分にあたる。すなわち、ここに、日本国憲法の問題点としてとりあげられた多くの問題点について、調査会の審議に現われた諸見解が掲げられており、それがまた、日本国憲法ははたして改正を要するか、それとも改正を要しないかについての、調査会における審議の結果でもあるわけである。
- この第4編は、次のような四章から成り立つている。
- 第一章 総説
- 第二章 日本国憲法の基本問題
- 第三章 日本国憲法の前文および各章の重要問題
- 第四章 日本国憲法の改正の要否
報告書の本文の構成は、およそ右のとおりであるが、このような構成にこの報告書の特色がうかがわれるであろう。
すなわち、この種の調査会の報告書の多くは、普通、調査の結果到達した結論だけを報告するものであるのが例である。憲法調査会の報告書では、それにあたるのは第四編である。
しかしこの報告書はこの第四編だけではなく、第一編から第三編までにおいて、調査会そのものの歴史にまでさかのぼり、またその結論に至るまでの調査審議の経過についても詳細に報告している。
すなわち、そのような調査審議の積み重ねの上に第四編の内容がかたちづくられてきた経過が、そこに明らかとされているのである。
報告書の本文は、全体としてこのような構成のものであり、したがつて、その全体をいわば一体としてながめることが、この報告書にとつては必要である。
次に、この報告書にはまた、きわめて大部の付属文書が付されており、このこともこの報告書の特色である。
付属文書は、次の合計12号から成る。
第1号 憲法調査会における各委員の意見
- これは本文の第四編に対応するものである。すなわち第四編は調査会における各委員の意見を整理し、類型的に分類し総括したものであるが、この第一号文書には、各委員の個別的意見を掲げている。
第2号 憲法制定の経過に関する小委員会報告書
- これは日本国憲法の制定経過の調査のために特に設けられた小委員会の報告書である。この報告書は、日本国憲法の制定の全経過をその起源すなわち第二次大戦の終了、ポツダム宣言の受諾にまでさかのぼり、また国際的・国内的の背景をも含めて、きわめて詳細に明らかにしている。
第3号 憲法運用の実際についての調査報告書
- ‐国民の権利及び義務・司法‐
第4号 憲法運用の実際についての調査報告書
- ‐国会・内閣・財政・地方自治‐
第5号 憲法運用の実際についての調査報告書
- ‐天皇・戦争の放棄・最高法規‐
この3つの文書は、日本国憲法の運用の実際についての調査の段階で設けられた第1・第2・第3委員会のそれぞれの報告書である。そこでは日本国憲法の運用の実際がどうであつたか、そこにはどのような問題が生じていたかが詳細に述べられている。
第6号 基本的問題に関する報告書
第7号 前文・天皇・戦争の放棄・改正・最高法規に関する報告書
第8号 国民の権利及び義務・司法に関する報告書
第9号 国会・内閣・財政・地方自治に関する報告書
- この4つの文書は第2号ないし第5号の報告書に掲げられているような調査の基礎の上に、そこに明らかとなつた問題点について調査会が次の段階で行なつた審議の結果を報告したものである。本文の第四編は主としてこの4つの報告書をもととし、それらを総括したものということができる。
第10号 憲法無効論に関する報告書
- この文書は、第2号文書と関連する。すなわち、日本国憲法の制定経過に関する一つの主張として、日本国憲法は連合国による占領の下において日本国民の自由な意思に基づくことなく、押しつけられて制定されたという事情からいつても、またその成立の手続からみても無効であるとする主張があるのであるが、この報告書は特にこの問題に関する調査の結果を掲げたものである。
第11号 公聴会に関する報告書
第12号 海外調査に関する報告書
- この二つの文書は、それぞれ、調査会が行なつた国内の公聴会および海外調査の結果の報告書である。
付属文書として付されているものは右のとおりである。それらは報告書の本文の材料となつたものであり、またその基礎にあるものといえよう。そして、さらにこれらの素材となり基礎となつたものとしては、足かけ8年におよぶ期間において開かれた総会、委員会、部会、起草委員会等の合計約500回余の会議の議事録があるわけであり、またきわめて多数の調査資料があるわけである。これらの調査審議の状況や主要な調査資料の目録等は、報告書の本文に「別記・別表」として掲げられている。
さて、憲法調査会報告書の全体としての構成はおよそ右のとおりであり、それが報告書の全貌をかたちづくつている。すなわち、報告書の本文の第四編、特に、その第四章がその結論的部分に当たるものであるとはいえるが、しかし、その部分だけがこの報告書のすべてであるのではなく、またその部分を正しく理解するためには、本文の他の3編はもとより、付属文書のすべてをも参照することが、望ましいのである。それがこの報告書の作成にあたつて、調査会が期待したところでもあるわけである。
しかし、なんといつても、報告書は本文だけでも約1,200ページという大部のものであり、付属文書はもとより、本文だけを一読することも、実際上はなかなか容易でないことも事実である。したがつて、この報告書の内容を要約し、日本国憲法の改正問題に関する関係各方面の検討と国民的討議の材料に役立たせようという趣旨の下に、「憲法調査会報告書の概要」を作成することとした。
注釈
[編集]- ↑ 原文の数字は全て漢数字表記。
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