愛は終了され

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本文[編集]

愛は終了され
萩原恭次郎

母の胸には 無数の血さへにぢむ爪の跡
あるひは赤き打撲の傷の跡!
投石された傷の跡! 歯に嚙まれたる傷の跡!
あゝそれら痛々しい赤き傷は
みな愛児達の生存のための傷である!

忘れられぬ乳房はもはや吸ふべきものでない
転居の後の如く荒れすたれ
あゝ 愛はすでに終了されたのだ!

さるを今 ふたゝび母の胸を蹴る!
新らしき世紀の恋人のため!
新らしき世界に青年たるため!
あゝ われ等は古き父の遺跡を
見事に破壊するを主義とする!