恋愛の一音信

提供: Wikisource
ナビゲーションに移動 検索に移動

Wikisource:文学 < 『死刑宣告

本文[編集]

恋愛の一音信
萩原恭次郎

一秒間
虐殺のフイルムが帽子の波を直射し
 ●●●群衆の叫号でひきつれた--------------------
悲鳴!
無数のアルハベツトの顔面
————「どうしたつて金が無くちや帰れないんだわ」
満員のエレベーター
鉛管にかこまれた地下室●●「乾魚とウヰスキー
地球儀のやうに廻る————露出した男の眼球
「ナフキンで殺してよ」
「いいわ●●●早く」
「無神経家に恋愛と信仰があるのよ」
「無味乾燥なんてことないわ」
「恋愛の一音信は一億五千万円以上ださうですわ」

靴音● エー ピー
だつてあなたひどいんですもの
梯子段—————【さよなら!】
「明日!」
●●●G
薬瓶●●●●日記++++ナイフ
髪毛 検温器は四十度
記号づけられた蒼い顔
ハンケチには血が吐かれてゐる!
カーテンの影に一匹の鼠は餓えて死んだ!
下水道の土管!
闇に消えた白煙!
ピピ ピピ
プ——ム!
断崖
————「今朝 急行列車で恋人が帰つて来るのよ」
●●●屋根裏の一角で———
弱い光線の朝陽
しめられたまゝの窓

解題[編集]

作者:萩原恭次郎

底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1

表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。