弾劾裁判所報/タイにおける裁判官弾劾制度と懲戒制度について
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< 弾劾裁判所報
はじめに
タイにとって1997年というのは、特筆すべき年である。まず、第一に、アジア経済危機の端緒となった、パーツ急落が生じ、第二に、民主的な手続により、起草された憲法が公布されたからである。この1997年憲法は、人権保護、メディアの自由化、議会制度・官僚制度改革に重点を置いている[1]。これは、これまでの民主化運動に対する政府による人権侵害とメディア規制への反省からと、タイ政治において継続して問題視されてきた政治家や官僚による不正と汚職への反省からきている[2]。政治家等の不正や汚職については、選挙制度改革だけでなく、政治プロセスの問題点を対象とする制度を規定している。ぞれが、第10章の「国家権力行使の審査」である。そこにおいて、一部の裁判官であるが、裁判官を対象とした弾劾制度がタイにおいて初めて導入された。だが、他方で以前から行われている懲戒制度も存続している。
そこで本論文では、「国家権力行使の審査」の一部として位置づけられている裁判官弾劾制度を理解するために、まず「国家権力行使の審査」にーついて概観した後、タイにおける裁判官弾劾制度を検討していくとともに、並行して存続する懲戒制度についても検討していきたい。
1 1997年憲法における弾劾制度
議会制度・官僚制度改革を実現するために、政治プロセスの問題点を対象とするシステムが、1997年憲法で規定された。それが、第10章の「国家権力行使の審査」である[3]。この章は、政治家、公務員らの汚職、不正行為の防止のためのメカニズムを規定している。その内容は、資産公開制度、国家不正防止摘発委員会、弾劾制度、政治職在任者刑事手続についてである。汚職、不正行為防止のメカニズムとして、弾劾制度と独立して資産公開制度を規律しているところが、タイにおける異常蓄財の問題性の深刻さを表していて、興味深い。しかし、本論文では弾劾制度を中心的な対象としており、弾劾制度が一般的には、「大統領・国務大臣・裁判官など強い身分保障を受けた公務員に非行があった場合に、国民の意思に基づいてその者の身分を剥奪する特別の手続であるということができ、国民の意思を代表する機関である議会が何らかの形で関与するのが通常である。」とされるので[4]、議会が関与しない資産公開制度については簡単に言及するにとどめ、弾劾制度について中心的に検討したい。
1-1 資産公開制度
資産公開制度は、不正による異常な蓄財を行わせないために、対象者の資産公開を義務付ける制度である。1997年憲法には、政治職者について明文上の規定がある。それによると、内閣総理大臣、国務大臣、下院議員、上院議員その他法律の定める政治職者は、就任時、退任時、そして退任の一年後に、自己、配偶者及び未成年の子の資産を表す会計帳簿を国家不正防止摘発委員会[5]に提出しなければならない(憲法291条、292条)。国家不正防止摘発委員会は、提出された会計帳簿を調査し、監査する。政治職者の退任時文は死亡時に会計帳簿が提出された場合には、国家不正防止摘発委員会は、その内容を調査し、その結果を官報に掲載する(同法294条1項)。調査の結果、異常な蓄財が認められると判断した場合には、その調査結果を検事総長に送付する(同条2項)。かかる案件は、最高裁判所政治職在任者刑事事件部が専属管轄を持つ(憲法308条)。会計帳簿の提出において、政治職者が故意に虚偽の申告を行うか、または故意に期間内に提出しなかったと国家不正防止摘発委員会が判断した場合には、調査結果を憲法裁判所に送付する。憲法裁判所が、故意による虚偽申告又は不提出がされたと認定した場合には、かかる政治職者は当該行為が判明した日から5年間はいかなる政治職にも就くことができない(同法295条)[6]。
会計帳簿提出義務者については、仏暦[7]2542年不正防止摘発に関する憲法付随法(以下「不正摘発法」と表記する。)」によりその対象者が拡大されている。その対象は、(1)最高裁判所長官、(2)憲法裁判所長官、(3)最高行政裁判所長官、(4)検事総長、(5)選挙委員、(6)国会オンブズマン、(7)憲法裁判所判事、(8)国家会計委員会委員、(9)最高裁判所副長官、(10)最高行政裁判所副長官、(11)軍司法事務局長、(12)最高裁判所判事、(13)最高行政裁判所判事、(14)検事副総長、(15)上級公務員である(不正摘発法39条)。この場合、職に就いてから3年ごとと、退職時及び退職1年後に会計帳簿を国家不正防止摘発委員会に提出しなければならない(同条)。政治職者の場合と異なり、虚偽申告の認定に憲法裁判所は関与しない。
この資産公開制度は、タイにおける腐敗の典型例である、異常な蓄財を防止することを目的とする。さらに同制度により会計帳簿の提出が義務付けられているため、その提出書類に基づき調査し、異常な蓄財があると判断した場合には、国家不正防止摘発委員会が調査結果を検事総長に送付するという、いわば委員会自身にイニシアティブが認められる制度である。その点で、後述する弾劾制度とは大きく異なる。
1-2 弾劾制度
政治家や上級公務員の不正、腐敗に対応する制度は、1997年憲法以前にも存在していた。例えば、1995年憲法38条には、国会議員による罷免請求について規定されていた。それによれば、地位に反する行為等が存在した場合には、かかる議員が所属する議院の4分の1以上の署名をもって、所属議院議長に対して罷免請求をすることができる。しかし、この制度は同一議院に所属する議員のみからの請求という、いわば内輪の者からしか請求を認めていないため、和解と妥協の政治が行われるタイにおいては、ほとんど実効性がなかった[8]。そのほかにも、政治職者及び公務員に対する刑事責任を追及する方法も存在していたが、そこでも権力をおそれての非協力や、立証責任の問題があり、ほとんど機能しなかった[9]。そこで、同僚以外の者からの罷免請求を認める制度が初めて、1997年憲法により導入された。それが、第10章第3節に定められている「罷免(弾劾制度)」である。
憲法303条によれば、以下に掲げる者が職務における不正を示す異常蓄財、公務員の職務に対する違反行為、司法上の職務に対する違反行為又は憲法若しくは法律の規定に故意に違反する職務権限の行使の事実があるときは、上院は、当該人物を罷免する権限を有すると規定している。対象となるのは、(1)内閣総理大臣、(2)国務大臣、(3)下院議員、(4)上院議員、(5)最高裁判所長官、(6)憲法裁判所長官、(7)最高行政裁判所長官、(8)検事総長、(9)選挙管理委員、(10)国会オンブズマン、(11)憲法裁判所判事、(12)国家会計検査委員会委員、(13)最高裁判所副長官、(14)最高行政裁判所副長官、(15)軍裁判所裁判長、(16)検事副総長、(17)上級公務員となっている(憲法303条、不正摘発法58条10条)[10]。
罷免請求の申立権者は、二つのグループに分けることができる。それは、不正摘発法58条に掲げられている者すべてに対して罷免請求をすることができるものと、上院議員だけに限定されるものである。前者のグループは、(1)現有議員の4分の1以上の下院議員、(2)5万人以上の有権者である(不正摘発法59条1項)。後者は、現有議員の4分の1以上の上院議員である(同条2項)。上院議員が、上院議員の罷免にだけ申立権者となることができるのは、上院が罷免に関する審議・決定機関だからである[11]。
上院議長は、申立者の情報記載等の形式的審査を行い、形式的要件を充たしていると判断したときは、かかる案件を調査するよう、国家不正防止摘発委員会に送付する。形式的要件を充たしていないと判断した場合には、申立者に対して不備を訂正して、再提出するように通知する(同法63条1項)。上院議長からの通知を受けた申立者は、通知を受領した日から30日以内に再提出しなければならない(同条2項)。
国家不正防止摘発委員会は、調査に際して、調査小委員会を設置することができ、それは国家不正防止摘発委員会の委員1名及び国家不正防止摘発委員会事務局員、有識者両方とも又はいずれか一方1名で構成される(同法45条1項)。
証拠収集の完了後、調査ファイルが作成され、国家不正防止摘発委員会委員長に提出される(同法50条)。調査ファイルを受領した委員長は、30日以内に、審議のための会議を開催する(同法51条)。国家不正防止摘発委員会は、調査ファイルを検討し、申立てに根拠があるかどうかについて判断しなければならない(同法53条)。根拠なしと判断した場合には、かかる申立ては棄却される(同条)。上院議長から案件が送付された場合には、国家不正防止摘発委員会委員長は上院議長に報告書を提出する(同法54条1項)。上院議長から送付された案件で、理由ありと国家不正防止摘発委員会が判断した場合は、かかる被告発者は上院が判断するまで職務が停止される(同法55条)。理由ありとした場合、上院議長は、遅滞なく、審議するために上院議員を召集しなければならない(同法64条1項)。上院議員は、秘密投票により投票を行い、現有議員の5分の3以上の賛成により罷免を行う(同法65条1項)。罷免の効力は、上院の議決の日から開始し、5年間は政治的地位、公務員、国営企業職員の地位に就くことができない(同条2項)。
上記のように、1997年憲法により、初めて国民からの請求により政治職者や公務員の罷免を請求することができるようになった。しかし、罷免請求の対象の選定が、強い身分保障が認められているからという理由ではなく、強大な権力を持ち、これまで不正、腐敗に手を染めることが多かった者であることが理由と見受けられる。実際、この罷免請求制度の導入理由が、政治職者たちを念頭に置かれていると指摘されている[12]。また、憲法における規定の仕方も、政治職者は明示的に憲法上に規定されているのに対して、公務員については施行法の中で規定するという方法を採用しており、考え方の違いがうかがえる。
裁判官の弾劾という観点から見ると、対象は一部となっている。普通裁判官は、罷免請求の対象となっておらず、司法裁判所系[13]において対象となっているのは、最高裁判所長官と副長官の2名に限定されている。裁判官の弾劾事件は、1997年憲法の施行後まだ1件も発生していない。憲法の条文上、その対象の範囲は施行法の規定に譲られているが、施行法により拡大されたのは、司法裁判所系においては、最高裁判所副長官のみで、その他の裁判官は対象とならなかった。この点から見ても、タイにおける弾劾制度が、単に強い身分保障があるからゆえに、その対象を決定しているのではないことが明らかである。裁判官に対するインタビューによれば、普通裁判官を弾劾の対象としなかった理由として、裁判官の採用は試験制度を採用しており、政治的介入ができないことがあげられた。逆に言えば、その他の身分保障を受けている者の選定において、政治的介入があることがわかる。そうすると、独立機関として憲法に規定されている各種機関における委員の選定においても当てはまることになり、憲法上認められた独立機関としての性格が保持されていないことをあらわしている。
いずれにせよ、普通裁判官は現時点では弾劾制度の対象となっていないので、懲戒制度が依然として効力を有している。
2 タイにおける裁判官懲戒制度
先にみたように、弾劾制度においては、普通裁判官は対象となっていない。対象となっていない裁判官による非行があった場合には、既存のシステムで対処することとなる。それが裁判官懲戒制度である。これは憲法に規定されているのではなく、仏暦2543年司法裁判所司法系公務員法(以下「司法系公務員法」と表記する。)に定められている。そこで、本節ではまず前提となる裁判官の身分保障について概観した後、タイにおける裁判官懲戒制度を考察する。
2-1 裁判官の身分保障
裁判官の身分保障の目的は、裁判に対する干渉を排除するため、つまり裁判の独立のためである。そこで、裁判の独立の観点から見てみると、1997年憲法により司法裁判所が、司法省から分離した。従来は、司法裁判所は司法省に帰属し、司法省が司法裁判所の事務局として機能していた[14]。しかし、憲法275条は、最高裁判所長官直属の司法裁判所事務局長を長とする、独立の司法裁判所事務局を設置すると規定する。この規定により、司法省と司法裁判所が分離されたと解されている。実際の分離は、2000年8月になってのことであった。しかし、今泉[15]によれば、この分離が司法裁判所に与えた変化は実際にそれほど大きいものではなかったと指摘されている。その理由としてあげられているのは、第一に、従来も実質的には司法の独立は確保されていたことである。これは、司法省のポストは裁判官によって独占されており、また裁判官の任免等について、最高裁判所長官を委員長とする司法委員会の承認が必要であったからである。第二に、実際の分離にあたっては、庁舎及び司法省の多くの部局が司法裁判所事務局にそのまま移転されたからである。
次に裁判官の独立の問題であるが、裁判官は、審理及び裁判において独立しており、職位に従った指揮監督に服さないことが明示されている(憲法249条1、2項)。裁判官に対する事件の割り振りは、法律に定める原則により(同条3項)、事件の移転等は、審理又は判決の公正性に影響を及ぼす場合を除いて、行ってはならないとしている(同条4項)。
最後に裁判官の身分保障についてであるが、これについても憲法上に明文で定められている。裁判官の任命及び退任は、国王によって行われる(同法251条)。裁判官の異動は、法律に定める任期による異動、昇進、懲戒処分中又は刑事事件の被告人となった場合を除いて、本人の同意を得なければならない(同法249条5項)。
さらに裁判官の任命、退任及び異動については、司法裁判所司法委員会の承認が必要となっている(同法273条1、2項、司法系公務員法17条)。この司法裁判所司法委員会は、最高裁判所長官を委員長どして、各審級ごとの司法公務員(=裁判官)4名、計12名と上院より選出される司法公務員経験の無い有識者2名の合計15名で構成される(同法274条)。裁判官の任免の承認権を有する司法裁判所司法委員会に、上院より選出される有識者が含まれるようになったことは、弾劾制度とのかねあいで注目すべきことである。弾劾裁判の場合は、退任についてのみ関係しているが、司法裁判所司法委員会の場合は、任免、異動にまで影響が及ぶので、これまでにないほどの変容である。過半数は司法公務員で占められているために、どめ程度の影響力を持つことができるかは不明であるが、異動にまで関わるとなると、三権分立の観点から問題となる可能性がある。実際、司法裁判所司法委員会への上院の関わりに対して批判的な意見を表明する裁判官も存在する[16]。
裁判官の身分保障において重要な要素である給与の問題であるが、憲法にも行政公務員とは異なり、法の定めに従うことが明記され(同法253条)、それにより、司法系公務員法により報酬が大幅に増額された。この給与の大幅な増額が影響して、法学卒業生の中で、裁判官希望者が増大した。
2-2 裁判官懲戒制度
裁判の独立を果たすために、上記のように司法裁判所の独立や裁判官の身分保障がなされている。しかし、当然のことであるが、身分保障がされている裁判官も、非行を起こせば、懲戒を受けることとなる。そして、その制度も構築されている。
タイの懲戒制度は、司法系公務員法第5章「規律、規律遵守、懲戒、回復jに定められている。
懲戒手続については、第2節の規律遵守の部分に規定されている。それによると、まずある裁判官が告発されるか、又は規律違反の疑いがある場合は、司法裁判所の担当裁判官は、遅滞なく、司法裁判所事務局が定めた手続に従って事実調査を開始する(司法系公務員法68条)。初動調査において、剥職、免職、解職に及ぶ懲戒となるほどの著しい規律違反が行われたとの根拠があると明らかになったときは、最高裁判所長官は、調査のために、3名以上の委員からなる調査委員会を設置する(同法69条)。タイにおける懲戒制度における懲罰は、重いものから、剥職、免職、解職、降格又は減俸、戒告となっている(同法76条)。この中において、失職する懲罰は、剥職、免職、解職の3つであるため、この疑いがあるときは、慎重な調査を行う。調査委員会は、その調査を30日以内の定められた期間内に終了しなければならない(同法70条3項)。調査委員会は、調査が完了したときは、意見報告書を作成し、最高裁判所長官及び司法裁判所司法委員会事務局長に提出する(同条4項)。司法裁判所司法委員会が、意見報告書を検討後、被疑者が、剥職、免職、解職に及ぶ懲戒となるほどの著しい規律違反が行われたとの意見を有し、又はその他の意見を有したときは、最高裁判所長官は、かかる見解に基づいて命令を発する(同条5項)。
調査の結果、最高裁判所長官により出される懲戒処分は前述のように、5段階6種類ある。最も重い処分である、剥職は、次に掲げるような著しくひどい規律違反を裁判官が行った場合に下されるものである。それは、(1)公務員の責任に反する不正行為、(2)最高刑が懲役刑にあたる犯罪行為、(3)公務慣行や公務員道徳の不遵守や不履行、(4)公務に著しい損害を招いた行為を過失により行ったこと、(5)著しい不行跡である(同法77条)。免職は、剥職までには及ばない程度の規律違反を行った場合、剥職に及ぶ程度の規律違反を行っているが、情状酌量の余地がある場合、又は破産宣告を受けた場合に下されるものである(同法78条)。解職は、免職までには及ばない程度の規律違反を行った場合、文は免職に及ぶ程度の規律違反を行っているが、情状酌量の余地がある場合に下される(同法79条1項)。この免職処分を受けた場合には、辞職した場合と同様に年金を受給するととができる(同条2項)。そのほか、規律違反の程度が低い場合には、降格、3年以内の減給、戒告が下されることがある(同法80条)。また、当然のことであるが、下された処分に対する不服申立ての制度も整備されている(同法83条)。
懲戒処分を受けた者についての統計が公表されていないために、懲戒を受けた者の実数が判明しない。インタビューをした裁判官からは、統計もなく、報告書を見たことがあるが、懲罰を受けた者の氏名は仮名であった旨の回答を得た。身内の問題を明らかにすることに抵抗があることは容易に想像が付くが、信頼される司法という観点からは、逆に問題点を明らかにすることが重要であると考えられる。
おわりに
民主的な手続により制定された現行の1997年憲法は、国民の政治参加とともに、三権の間のチェックアンドバランスの仕組みを創設している。それは、司法にも影響を及ぼしており、本論文で取り扱った弾劾制度及び裁判官懲戒制度も例外ではない。弾劾制度についても、一部とはいえ裁判官が対象となっているし、懲戒制度においても、大きな役割を有する司法裁判所司法委員会の委員として、司法公務員以外の者が構成員となることとなった。その点、上院を介在して国民のチェックが入ることとなった。しかし、今回の改革においては、長年の懸案であった政治職者や公務員による異常蓄財を防止・摘発することを主たる目的としていると理解される。適正な任務遂行のために、独立的な地位を有し、強い身分保障を得ている者たちの行動をチェックするという考えはまだ希薄である。しかし、憲法や法律によりシステムとしては整備されているので、制度理解が変更すれば、普通裁判官も弾劾の対象となる可能性は存在する。それも、まず当初目的である政治職者等の異常蓄財の防止に、1997年憲法が導入した制度がうまく対応できるかにかかっていると思われる。
(にしざわ きくお=高知短期大学助教授)
原注
- ↑ 大友有「タイ王国憲法一概要及び翻訳一」衆憲資第21号、衆議院憲法調査会事務局
- ↑ 同
- ↑ 1997年憲法の構成は次の通りである。第1章総則、第2章国王、第3章タイ国民の権利と自由、第4章タイ国民の義務、第5章国の基本政策指針、第6章国会、第7章内閣、第8章裁判所、第9章地方行政、第10章国家権力行使の審査、第11章国家会計検査、第12章憲法改正。
- ↑ 裁判官弾劾裁判所事務局・裁判官訴追委員会事務局『裁判官弾劾制度の五十年』(1997年)
- ↑ 国家不正防止摘発委員会とは、9人の委員と事務局を要する1997年憲法の中で設置がうたわれている独立した機関である。委員の任期は、9年1期のみで、再任が認められていない(憲法298条1項)。国家不正防止摘発委員会の主な権限は、資産公開制度や弾劾制度において事実関係を調査し、意見を関係当局に提出することである(同法301条)。
- ↑ 憲法295条に関する事件で有名なのは、サナン元内相とタクシン首相についてのものである。前者の事件は、サナン元内相が1997年の下院議員就任時に申告した金銭債務に関する情報が虚偽であるとの問題で、2000年4月に国家不正防止摘発委員会が憲法裁判所に訴えたものである。サナン元内相は、判決前に辞任していたが、憲法裁判所は295条に基づき5年間の政治職就任禁止の判決を下した。後者の事件は、タクシン首相が1997年にチャワリット内閣副首相就任、辞任時に行った資産申告における虚偽申告のものである。結果は無罪であったが、通常判決と同時に示される判決理由が発表されるまでに時間を要したことなどから、憲法裁判所の判断に対して懐疑的な見解が噴出した。
- ↑ 仏暦から543を引くと西暦と同じ年となる。
- ↑ ナンタワット・ボーラマーナン「罷免」King Prajadhipok's Institute編『仏歴2540年タイ王国憲法百科』King Prajadhipok's Institute(2001年)
- ↑ プワンサック・ウワンノー「高位職者による不正行為の調査システムについて」研究支援基金事務所(1995年)
- ↑ (12)から(17)については、不正摘発法によっで規定されている。憲法では、不正摘発法が定める裁判官、検察官文は上級公務員というかたちで規定されている(憲法303条2項2号)。
- ↑ 8)と同じ。
- ↑ ヨンユット・セールンルアン『司法裁判所の中立に対する憲法に基づく上院の権限・義務からの影響』タイ主国司法省(2000年)
- ↑ タイの裁判所システムは、司法裁判所、憲法裁判所、行政裁判所、軍裁判所と大きく4つの系統に分かれており、それぞれが独立している。
- ↑ 今泉慎也「タイの裁判制度改革の現状と課題」小林昌之・今泉慎也編『アジア諸国の司法改革』アジア経済研究所(2002年)
- ↑ 同
- ↑ 12)と同じ。
関連文献
- Constitution of Thailand, - Wikisource
- 仏滅紀元2549年 (暫定) タイ王国憲法
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