広告灯!

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Wikisource:文学 < 『死刑宣告

本文[編集]

広告灯!
萩原恭次郎


         
排泄する るす突衝
交流する るす出噴
爆発する     るす壊崩
突声する       るす叫号
出入する               るす覆転
                       


   懶げな頭脳は歌を歌ふ
   私は水の騒音を聞いてゐる
   何物も光りなき闇黒と絶潭の海だ!
   終りもなく始めもない!
   あらゆるものは来て去る!
   生活?誰が知るものか!木馬の面よ!
   ピエローよ!
   信ずるものは自由でも神でも人間でもない!
   極度の亀裂をダダイストに認めるのみだ!
  意味を見出すのか!見出したまへ!
  すべては虚飾の羅列である!
  私は退屈の連続に飽きた!
  憂欝な福音は海底に白骨をさらす!
  何故!私は生きてゐねばならないのか!
  今や地に返る事も空に返る事も信じない!
  情熱さへも物憂い!
  個性も生長も欲しない!
  キネマも色彩も暗い!
  私は無目的である!
  悲哀も歓喜も感情は化石する!
  私は一片の木版であり置物である!
  私はただがらがらと鳴る!
   喧騒する安慰者である!
   私は何故生きてゐねばならないのか!
   私は死者である!
   私は動くものである!
   私に触れるものは死である!

  彼は泣く!   !る駆を車馬は彼 彼女は神に感謝!
  彼は笑ふ!   !だ色灰く冷は彼 彼女は骸となる!
  彼は歩く!   !た視を女彼は彼 彼女は棘の道だ!
  彼は喜ぶ!   !すで人界世は彼 彼女は疲れ衰ふ!
  彼は寝る!   !るすも諜間は彼 彼女は秘密にす!
  彼は食ふ!   !つ持を符切は彼 彼女は甘美な酒!
  彼は怒る!   !ふ吸を巻葉は彼 彼女は死の闇黒!
  彼は走る!   !すで者奕博は彼 彼女は華奢です!
  彼は沈む!   !たつ立を席は彼 彼女は夫が無い!
  彼は産む!   !る囀に快愉は彼 彼女は血を滴す!
  彼は富む!   !く歩でん膨は彼 彼女は罪を犯す!
  彼は盗む!   !た上縛を女は彼 彼女は抱擁する!
  彼は来る!   !む拒を会面は彼 彼女は確く信ず!
  彼は行く!   !るすに戯嬉は彼 彼女は裸である!
  彼は破る!   !だ儘たせ委は彼 彼女は予感する!
  彼は凹む!   !だ撃射斉一は彼 彼女は髯を毮る!
  彼は乗る!   !すで者殺暗は彼 彼女は胸を震す!
  彼は攣る!   !裂破は元身は彼 彼女は肩を落す!
  彼は洩る!   !たげ上み積は彼 彼女は裏まれる!
  彼は没る!   !ふ笑を劣愚は彼 彼女は大な奇蹟!
  彼は埋る!   !すで家際実は彼 彼女は滑りゆく!
  彼は響く!   !るあで望願は彼 彼女は顔を叩く!
  彼は抱く!   !るあで求要は彼 彼女は目が痛む!
  彼は受る!   !るあで言断は彼 彼女は黒い足だ!
  彼は傷く!   !るあで定否は彼 彼女は塵埃なり!
  彼は鳴る!   !るあで定肯は彼 彼女は遠き薔薇!


       連続・・する───継続・・する───明滅・・する───発火・・
          ┌───変節漢よ!           る
        ┌───巨大なるローラーよ!        │
      ┌───サーチライト!             │
      ●───るす突衝・・・・───るす断独・・───るす変豹・・──┘


  俺は道路で街上で屋上で部屋で物置でカフエーで広場で————————●
     ———俺は豚のやうに生きる!
     ———俺はスパイのやうに生きる!
     ———俺は密告者のやうに生きる!
     ———俺は屠殺者のやうに生きる!
     ———俺は帝王者のやうに生きる!
     ———俺は蒼ざめた陰惨な実弾の破裂を聞いてゐる!
     ———俺自身以外の生活の廻転と装飾を眺めてゐる!

  広告灯
  大なる賭博
  黒煙を吐き出す大小無数の林立する煙突
  ■■■■■幾つかの腔と凹凸の面と数本の円棒と
       黄色と毛髪とゼンマイコンパスと筋
       とサナダ虫と靴下と一枚の名刺!
   幾つものボタンのとれた汚れたシヤツヅボンをはきかへたか知れぬ俺と云ふ
   道具よ!
   アハハハハ———ハハ ハ

解題[編集]

作者:萩原恭次郎

底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1

表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。文中、右から左へ読む文(第1聯2-6行目の各末尾4文字、第3聯全行の第2文、第4聯最終行)は、原文においては180度回転した文字で下から上へ書かれている。また、第1聯の縦書き部分(2-7行目の各6-17文字目)および第4聯2行目末尾(「発火する」の「る」)は原文においては右に90度回転した文字で紙面右から左にかけての縦書きとなっている。最終聯4行目行頭の「■■■■■」は原文においては一繋がりの長方形である。