大斎第一週間奉事式略 3

wikisource:宗教

• 底本: ハリストス正教会本会 訳『大斎第一週間奉事式略』, ハリストス正教会本会, 明35.3. 国立国会図書館デジタルコレクション:info:ndljp/pid/824833
• ここには晩堂大課式のみを収録する。
• 原文の「ヘルワィム」は「ヘルヴィム」に改め、「ダワィド」は「ダヴィド」に改めた。

大斎第一週間奉事式

第一週間水曜日晩堂大課式

始より「大規定」に至るまで月曜日と同じ、第百四十三頁より第百四十五頁までを看よ、

大規定（ダイカノン）

我が聖神父クリト島の大主教アンドレイの作。

第一歌頌「イルモス」

第六の調

佑（たす）け護（まも）る者（もの）顕（あらわ）れて、我（わ）が救（すくい）と為（な）れり、彼は吾（わ）が神（かみ）なり、我（われ）彼を讃（ほ）め揚（あ）げん、彼は我（わ）が父（ちち）の神（かみ）なり、我（われ）彼を尊（とうと）み頌（うた）はん、彼厳（おごそか）に光栄（こうえい）を顕（あらわ）したればなり。

附（ふ）唱（しょう）　神よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給へ。

救世主（きゅうせいしゅ）よ、我（われ）幼少（ようしょう）より爾（なんぢ）の誡（いましめ）に背（そむ）き、生涯（しょうがい）諸慾（しょよく）に耽（ふけ）り、怠（おこた）りて世（よ）を度（わた）れり、故（ゆえ）に救世主（きゅうせいしゅ）よ、爾（なんぢ）に呼（よ）ぶ、終（おわり）の時（とき）に於（おい）ても我（われ）を救（すく）ひ給（たま）へ。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

救世主（きゅうせいしゅ）よ、我（われ）爾（なんぢ）が門（もん）の前（まえ）に俯伏（ふふく）する者（もの）を老（お）ゆる時（とき）に於（おい）ても不当（ふとう）の者（もの）として地獄（ぢごく）に堕（おと）す毋（なか）れ、乃（すなわち）人（ひと）を愛（あい）する主（しゅ）なるに因（よ）りて、終（おわり）の前（まえ）に我（われ）に謝罪（しゃざい）の赦（ゆるし）を與（あた）へ給（たま）へ。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

救世主（きゅうせいしゅ）よ、我（われ）は我（わ）が富（とみ）を放蕩（ほうとう）に費（ついや）して、敬虔（けいけん）の果（み）を有（たも）たず、乃（すなわち）飢（うゑ）を覚（おぼ）えて呼（よ）ぶ、憐（あわれ）み深（ふか）き父（ちち）よ、急（いそ）ぎて我（われ）に憐（あわれみ）を垂（た）れ給（たま）へ。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

我（われ）は我（わ）が思（おもい）を以（もつ）て盗賊（とうぞく）に遇（あ）ひし者（もの）なり、今（いま）全身（ぜんしん）彼等（かれら）に打（う）たれて、傷（きず）に蔽（おお）われたり、ハリストス救世主（きゅうせいしゅ）よ、爾（なんぢ）親（みづか）ら臨（のぞ）みて我（われ）を医（いや）し給（たま）へ。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

司祭（しさい）は我（われ）を見（み）て過（す）ぎ、レヴィトも我（わ）が禍（わざわい）の中（うち）に於（おい）て裸体（らたい）なるを見（み）て遺（す）てたり、マリヤより光（ひか）りしイイススよ、爾（なんぢ）臨（のぞ）みて我（われ）に憐（あわれ）みを垂（た）れ給（たま）へ。

エギペトの聖マリヤ讃詞

克肖（こくしょう）なる母（はは）マリヤよ、我等（われら）の為（ため）に神（かみ）に祈（いの）り給（たま）へ。

マリヤよ、神（かみ）の照管（しょうかん）に依（よ）りて上（うえ）より爾（なんぢ）に降（くだ）されし輝（かがや）ける恩寵（おんちょう）を我（われ）に與（あた）へて我（われ）に諸欲（しょよく）の闇冥（くらやみ）を逃（のが）れ、熱心（ねつしん）に爾（なんぢ）が生命（いのち）の美（うるわ）しき行実（ぎょうじつ）を歌（うた）わしめ給（たま）へ。

光栄は父と子と聖神（せいしん）に帰す。

聖三者讃詞

永久（えいきゅう）の三者（さんしゃ）一性（いつせい）に於（おい）て伏拝（ふくはい）せらるる者（もの）よ、罪（つみ）の重（おも）き負（に）を我（われ）より卸（おろ）して、慈憐（じれん）なるに因（よ）りて、我（われ）に感涙（かんるい）を與（あた）へ給（たま）へ。

今も何時（いつ）も世世（よよ）に、「アミン」。

生神女讃詞

生神女（しょうしんじょ）、爾（なんぢ）を歌（うた）ふ者（もの）の憑恃（たのみ）及（およ）び轉達（てんたつ）よ、罪（つみ）の重（おも）き負（に）を我（われ）より卸（おろ）して、潔（いさぎよ）き女宰（じょさい）たるに因（よ）りて、我（われ）悔（く）ゆる者（もの）を納（い）れ給（たま）へ。

第二歌頌「イルモス」

天（てん）よ、聴（き）け、我（われ）伝（つた）へて童貞女（どうていじょ）より身（み）を取（と）りて来（きた）りしハリストスを歌（うた）はん。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

我（われ）節制（せつせい）なきに因（よ）りて、ダヴィドの如（ごと）く罪（つみ）に陥（おちい）りて汚（けが）れたり、救世主（きゅうせいしゅ）よ、我（われ）をも涙（なみだ）にて滌（あら）ひ給（たま）へ。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

我（われ）には涙（なみだ）も悔（くやみ）も傷感（しょうかん）もなし、救世主（きゅうせいしゅ）よ、爾（なんぢ）親（みづか）ら神（かみ）として我（われ）に此（これ）を與（あた）へ給（たま）へ。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

我（われ）は始（はじ）めて造（つく）られたる我（わ）が美（うるわ）しきと華（はな）やかなるとを失（うしな）ひ、今（いま）裸体（らたい）にして臥（ふ）して羞（は）づ。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

主（しゅ）よ、主（しゅ）よ、其時（そのとき）爾（なんぢ）の門（もん）を我（わ）が為（ため）に閉（と）ざす毋（なか）れ、乃（すなわち）我（われ）爾（なんぢ）の前（まえ）に悔（く）ゆる者（もの）の為（ため）に之（これ）を開（ひら）き給（たま）へ。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

主（しゅ）よ、我（わ）が霊（たましい）の嘆息（たんそく）を聆（き）き、我（わ）が目（め）の涕（なみだ）を納（い）れて我（われ）を救（すく）ひ給（たま）へ。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

衆人（しゅうじん）の救（すくい）を臨（のぞ）む仁愛（じんあい）の主（しゅ）よ、我（われ）を召（め）し、慈憐（じれん）なるに因（よ）りて我（われ）悔（く）ゆる者（もの）を納（い）れ給（たま）へ。

至（し）聖（せい）なる生神女（しょうしんじょ）よ、我等（われら）を救（すく）ひ給（たま）へ。

至（し）浄（じょう）なる生神（しょうしん）・童貞女（どうていじょ）、独（ひとり）衆人（しゅうじん）に讃頌（さんしょう）せらるる者（もの）よ、我等（われら）が救（すくい）を得（え）んことを切（せつ）に祈（いの）り給（たま）へ。

又「イルモス」

見（み）よ、見（み）よ、我（われ）は神（かみ）昔（むかし）我（わ）が一（ひとつ）の右（みぎ）の手（て）及（およ）び力（ちから）にて我（わ）が民（たみ）の為（ため）に野（の）に「マンナ」を降（ふ）らし、石（いし）より水（みづ）を出（いが）しし者（もの）なり。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

見（み）よ、見（み）よ、我（われ）は神（かみ）なりと、我（わ）が霊（たましい）よ、此（これ）を呼（よ）ぶ主（しゅ）に聴（き）き、先（さき）の罪（つみ）に離（はな）れて主（しゅ）を懼（おそ）れよ、其（その）義（ぎ）にして且（かつ）審判者（しんぱんしゃ）及（およ）び神（かみ）なるを以（もつ）てなり。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

多罪（たざい）の霊（たましい）よ、爾（なんぢ）は始（はじ）めカイン及（およ）び彼（かれ）のラメフと等（ひと）しくなりしに非（あら）ずや、蓋（けだし）悪事（あくじ）を以（もつ）て甚（はなはだ）しく肉体（にくたい）を傷（いた）め、無智（むち）の情（じょう）を以（もつ）て智慧（ちえ）を殺（ころ）せり。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

鳴呼（ああ）霊（たましい）よ、爾（なんぢ）は凡（およ）そ律法（りっぽう）の前（まえ）に在（あ）りし者（もの）を目前（もくぜん）に置（お）きて、シフに傚（なら）ならわず、エノスに遵（したが）わず、移住（いじゅう）を以（もつ）てエノフに傚（なら）ならわず、ノイに遵（したが）わず、乃（すなわち）義人（ぎじん）の生命（いのち）に遠（とお）ざかれり。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

我（わ）が霊（たましい）よ、爾（なんぢ）は独（ひとり）爾（なんぢ）が神（かみ）の怒（いかり）の淵（ふち）を開（ひら）き、地（ち）の如（ごと）くに全身（ぜんしん）と業（ぎょう）事（じ）と生命（せいめい）とを溺（おぼ）らして、救（すくい）の舟（ふね）の外（ほか）に止（とどま）れり。

エギペトの聖マリヤ讃詞

克肖（こくしょう）なる母（はは）マリヤよ、我等（われら）の為（ため）に神（かみ）に祈（いの）り給（たま）へ。

爾（なんぢ）は先（さき）の罪（つみ）の道（みち）を離（はな）れ、心（こころ）を盡（つく）して、ハリストスに趨（はし）り附（つ）き、過（とお）られぬ野（の）に住（すま）ひ、潔浄（けつじょう）にして其（その）神聖（しんせい）なる戒（いましめ）を行（おこな）へり。

光栄は父と子と聖神（せいしん）に帰す。

聖三者讃詞

無（む）原（げん）にして造（つく）られざる三者（さんしゃ）、別（わか）れざる唯一者（ゆいいちしゃ）よ、我（われ）悔（く）ゆる者（もの）を納（い）れ、罪（つみ）を犯（おか）しし者（もの）を救（すく）ひ給（たま）へ、我（われ）は爾（なんぢ）の造物（ぞうぶつ）なり、祈（いの）る、我（われ）を棄（す）つる毋（なか）れ、乃（すなわち）我（われ）を宥（なだ）めて、永（えい）火（か）の定罪（ていざい）を免（まぬか）れしめ給（たま）へ。

今も何時（いつ）も世世（よよ）に、「アミン」。

生神女讃詞

至（し）浄（じょう）なる女宰（じょさい）、神（かみ）の母（はは）、爾（なんぢ）に趨（はし）り附（つ）く者（もの）の憑恃（たのみ）、暴風（あらし）に遭（あ）ふ者（もの）の湊（みなと）よ、爾（なんぢ）の祈祷（きとう）を以（もつ）て慈憐（じれん）なる造物主（ぞうぶつしゅ）、爾（なんぢ）の子（こ）に其（その）慈憐（じれん）を我（われ）にも垂（た）れしめ給（たま）へ。

第三歌頌「イルモス」

主（しゅ）よ、爾（なんぢ）の誡（いましめ）の石（いし）に我（わ）が動（うご）ける心（こころ）を固（かた）め給（たま）へ、爾（なんぢ）独（ひとり）聖（せい）にして主（しゅ）なればなり。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

禍（わざわい）なる霊（たましい）よ、爾（なんぢ）はシムの幸福（こうふく）を嗣（つ）がざりき、謝罪（しゃざい）の地（ち）に於（おい）てイアフェトの如（ごと）く廣（ひろ）き領所（りょうしょ）を得（え）ざりき。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

我（わ）が霊（たましい）よ、ハルランの地（ち）たる罪（つみ）より離（はな）れて、アウラアムが嗣（つ）ぎし永生（えいせい）の不（ふ）朽（きゅう）を流（なが）す地（ち）に往（ゆ）け。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

我（わ）が霊（たましい）よ、爾（なんぢ）昔（むかし）アウラアムが如何（いか）に父祖（ふそ）の地（ち）を離（はな）れて旅人（たびびと）となりしを聞（き）けり、其（その）決心（けつしん）に傚（なら）へ。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

太祖（たいそ）はマムブリイの樫（かし）の木（き）の下（もと）に天使（てんし）等（ら）を饗応（もてな）して、老年（ろうねん）に於（おい）て契約（けいやく）を獲物（えもの）の如（ごと）くに得（え）たり。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

憫（あわれ）なる我（わ）が霊（たましい）よ、爾（なんぢ）はイサアクが新（あらた）なる燔祭（やきまつり）として奥密（おうみつ）に主（しゅ）に献（けん）ぜられしを知（し）りて、其（その）決心（けつしん）に傚（なら）へ。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

我（わ）が霊（たましい）よ、爾（なんぢ）はイズマイルが婢（しもめ）より生（うま）れし者（もの）として遠（とお）ざけられしを聞（き）けり、慎（つつし）め、恐（おそら）くは爾（なんぢ）も逸楽（いつらく）の為（ため）に此（か）くの如（ごと）きことに逢（あ）わん。

エギペトの聖マリヤ讃詞

克肖（こくしょう）なる母（はは）マリヤよ、我等（われら）の為（ため）に神（かみ）に祈（いの）り給（たま）へ。

母（はは）よ、我（われ）は諸罪（しょざい）の大風（おおかぜ）と激浪（あらなみ）とに囲（かこ）まれたり、爾（なんぢ）今（いま）親（みずか）ら我（われ）を救（すく）ひて、神聖（しんせい）なる痛悔（つうかい）の湊（みなと）に送（おく）り給（たま）へ。

克肖（こくしょう）なる母（はは）マリヤよ、我等（われら）の為（ため）に神（かみ）に祈（いの）り給（たま）へ。

克肖（こくしょう）なる者（もの）よ、今（いま）も熱心（ねつしん）の祈（いのり）を慈憐（じれん）なる生神女（しょうしんじょ）に献（たてまつ）りて、爾（なんぢ）の祈祷（きとう）を以（もつ）て我（わ）が為（ため）に神（かみ）に入（い）る門（もん）を啓（ひら）き給（たま）へ。

光栄は父と子と聖神（せいしん）に帰す。

聖三者讃詞

単一（たんいつ）にして造（つく）られざる三者（さんしゃ）、無原（むげん）にして三位（さんい）に歌（うた）わるる性（せい）よ、我等（われら）信（しん）を以（もつ）て爾（なんぢ）の権柄（けんぺい）に伏拝（ふくはい）する者（もの）を救（すく）ひ給（たま）へ。

今も何時（いつ）も世世（よよ）に、「アミン」。

生神女讃詞

神（かみ）の母（はは）よ、爾（なんぢ）は時（とき）の外（ほか）に父（ちち）より生（うま）れし子（こ）を時（とき）の内（うち）に夫（おつと）なくして生（う）めり、異（こと）なる哉（かな）、奇跡（きせき）や、乳（ちち）を以（もつ）て養（やしな）ひて、童貞女（どうていじょ）に止（とどま）れり。

第四歌頌「イルモス」

主（しゅ）よ、預言者（よげんしゃ）は爾（なんぢ）が降臨（こうりん）の事（こと）を聞（き）き、爾（なんぢ）が童貞女（どうていじょ）より生（うま）れ、人々（ひとびと）に顕（あらわ）れんと欲（ほつ）するを懼（おそ）れて曰（い）へり、我（われ）爾（なんぢ）の風声（ふうせい）を聞（き）きて懼（おそ）れたり、主（しゅ）よ、光栄（こうえい）は爾（なんぢ）の力（ちから）に帰（き）す。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

我（われ）身（み）を汚（けが）し、霊（たましい）を穢（けが）し、全体（ぜんたい）に瘡（きず）を被（こうむ）らざるなし、ハリストスよ、爾（なんぢ）医師（いし）として我（わ）が痛悔（つうかい）に依（よ）りて両（ふたつ）のものを愈（いや）し、之（これ）を洗（あら）ひ、之（これ）を浄（きよ）め、我（わ）が救世主（きゅうせいしゅ）よ、之（これ）を雪（ゆき）より潔（いさぎよ）き者（もの）と顕（あらわ）し給（たま）へ。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

言（ことば）よ、爾（なんぢ）釘（てい）せられて、爾（なんぢ）の体（たい）爾（なんぢ）の血（ち）を祭（まつり）として衆人（しゅうじん）の為（ため）に献（けん）じたり、体（たい）を献（けん）ずるは我（われ）を改（あらた）めん為（ため）なり、血（ち）を献（けん）ずるは我（われ）を滌（あら）わん為（ため）なり、霊（たましい）をも付（わた）せり、我（われ）を爾（なんぢ）の父（ちち）に導（みちび）かん為（ため）なり。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

仁慈（じんじ）なる者（もの）よ、爾（なんぢ）は救（すくい）を地（ち）の中（なか）に作（な）せり、我等（われら）の救（すく）われん為（ため）なり、爾（なんぢ）は甘（あま）んじて木（き）に釘（てい）せられたり、閉（とざ）ざされしエデムは開（ひら）かれたり、上（うえ）なる者（もの）、下（しも）なる者（もの）、造物（ぞうぶつ）、凡（およ）そ救（すく）われし諸民（しょみん）は 爾（なんぢ）に伏拝（ふくはい）す。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

言（ことば）よ、願（ねが）わくは爾（なんぢ）の脅（わき）より出（い）でたる血（ち）は我（われ）を洗（あら）ふ者（もの）と為（な）り、共（とも）に流（なが）れたる水（みづ）は謝罪（しゃざい）の飲料（のみもの）と為（な）らん、我（われ）内外（ないがい）浄（きよ）められて、爾（なんぢ）が生活（せいかつ）を施（ほどこ）す言（ことば）を傳料（つくるもの）及（およ）び飲料（のみもの）として、之（これ）を傳（つ）けられ之（これ）を飲（の）まん為（ため）なり。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

我（わ）が救世主（きゅうせいしゅ）よ、爾（なんぢ）が生活（せいかつ）を施（ほどこ）す脅（わき）は教会（きょうかい）の為（ため）に爵（さかづき）と為（な）れり、此（これ）より我等（われら）の為（ため）に二（に）様（よう）の流（ながれ）は出（い）でたり、是（こ）れ謝罪（しゃざい）及（およ）び明智（めいち）なり、旧（きゅう）新（しん）両約（りょうやく）を象（かたど）れる者（もの）なり。

神（かみ）よ、我を憐（あわれ）み、我を憐（あわれ）み給（たま）へ。

我（われ）婚宴（こんえん）の宮（みや）の外（そと）に在（あ）りて婚宴（こんえん）と晩餐（ばんさん）とに與（あづか）るを得（え）ず、燈（ともしび）は油（あぶら）なくして熄（き）え、我（わ）が寝（ねむ）れる時（とき）に宮（みや）は閉（と）ざされ、晩餐（ばんさん）は畢（おわ）れり、我（われ）手足（てあし）を縛（しば）られ外（そと）に投（な）げられたり。

光栄は父と子と聖神（せいしん）に帰す。

聖三者讃詞

我（われ）爾（なんぢ）、同王（どうおう）にして同（どう）座（ざ）たる、三（さん）位（い）にして惟一（ゆいいち）なる神性（しんせい）、性（せい）に於（おい）て分（わか）れず、位（い）に於（おい）て混合（こんごう）せざる者（もの）を承（う）け認（と）め、爾（なんぢ）に大（おおい）なる歌（うた）、最高（いとたか）き居所（すまい）に三次（みたび）唱（とな）へらるる者（もの）を呼（よ）び歌（うた）ふ。

今も何時（いつ）も世世（よよ）に、「アミン」。

生神女讃詞

爾（なんぢ）は生（う）むにも、童貞（どうてい）を守（まも）るにも、二（ふたつ）ながら天性（てんせい）の童貞女（どうていじょ）なり、爾（なんぢ）より生（うま）れし者（もの）は天性（てんせい）の法（ほう）を改（あらた）め、生（う）まざる腹（はら）は生（う）む、神（かみ）の欲（ほつ）する所（ところ）には天性（てんせい）の順序（じゅんじょ）渝（か）えらる、彼（かれ）欲（ほつ）することを行（おこな）へばなり。

第五歌頌「イルモス」

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