壁の中につつ立つてゐる男

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Wikisource:文学 < 『死刑宣告

本文[編集]

壁の中につつ立つてゐる男
萩原恭次郎

奇怪なチヤルメラを吹いて支那人がゆく
乾からびたインキで描かれた食慾
刑事室には蒼白な人像が反映する
探偵のノート・ブツクには惨劇がうつゝた

むき出された乳房に注射してゐる地下室
頭蓋骨が腐る患者
女よ!
砕かれたインキ瓶とナイフで俺の頭を引つかき廻せ
惨忍な心臓に風を切つて突進する
キリキリ 廻つてどこで叩きつかるか知れない
ひきさかれた姦淫の旗は真赤だ!

壁の中につゝ立つてゐる男
キ キ キ

解題[編集]

作者:萩原恭次郎

底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1

表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。