地震の日に

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本文[編集]

地震の日に
萩原恭次郎

死に誘ふものは分らない

くぢけてしまつた道路の間に
首がころがつて笑つてゐる
裂かれた肉体がはなれて笑つてゐる
破裂した心臓が
ねぢれた儘 動かない

干からびた苦い血を嘗めて
友よ!
————生きて 生きて…………………
両手をひろげて
  その首にかぢりついて
接吻する
血と砂とにむせて乾きついた儘
私は
  固く
————哭く
その肉体に
————血をそゝぎ
————血で洗はふ!
砕けてしまつた市街の上に
彼と我との意思は
蒼ざめて発光する

ころがつてゐる首
焼け残つた白骨
残つた生存は
誰にこれからを捧げやうか
干からびた血と血を嘗めて
友よ!

解題[編集]

作者:萩原恭次郎

底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1

表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。