同盟及聯合國ト獨逸國トノ平和條約及附屬議定書/第三編

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第一款 白耳義國[編集]

第三十一條[編集]

獨逸國ハ戰前ニ於ケル白耳義國ノ地位ヲ確立シタル千八百三十九年四月十九日ノ條約カ既ニ現時ノ要求ニ適合セサルニ至リタルコトヲ認メ該條約ノ廢棄ニ同意シ且前記千八百三十九年ノ條約ニ代フル爲主タル同盟及聯合國又ハ其ノ何レカノ國カ白耳義國政府及和蘭國政府ト共ニ締結スヘキ一切ノ條約ヲ直ニ承認遵守スルコトヲ約ス該條約又ハ其ノ何レカノ條項ニ對シ獨逸國ノ正式加入ヲ求メラルル場合ニ於テハ獨逸國ハ直ニ之ニ加入スヘキコトヲ約ス

第三十二條[編集]

獨逸國ハ「モレスネ」係爭地域(所謂「モレスネ」中立地帯)全部ニ對スル白耳義國ノ完全ナル主權ヲ承認ス

第三十三條[編集]

獨逸國ハ「リエージュ」ヨリ「エークス、ラ、シャペル」ニ至ル道路ノ西方ニ位置スル普魯西領「モレスネ」地域ニ對スル一切ノ權利及權原ヲ白耳義國ノ爲ニ抛棄ス該道路ニシテ右地域ノ境界タル部分ハ白耳義國ニ歸屬スヘシ

第三十四條[編集]

獨逸國ハ「オイペン」「マルメディー」兩郡ノ全部ニ亙ル地域ニ對スル一切ノ權利及權原ヲ白耳義國ノ爲ニ抛棄ス

本條約實施後六月間白耳義國官憲ハ「オイペン」及「マルメディー」ニ於テ登錄簿ヲ公開スヘク前記地域ノ住民ハ同地域ノ全部又ハ一部カ引續キ獨逸國主權ノ下ニ立タムコトヲ希望スル旨右登錄簿ニ記入スルノ權利ヲ有ス

白耳義國政府ハ右民意公表ノ結果ヲ國際聯盟ニ通吿スヘク白耳義國ハ聯盟ノ決定ヲ受諾スヘキコトヲ約ス

第三十五條[編集]

經濟上ノ要素及交通機關ノ關係ヲ參酌シテ白耳義獨逸兩國間ノ新国境線ヲ實査ノ上確定スル爲本條約實施後十五日以內ニ主タル同盟及聯合國ノ任命スル五名ノ委員竝獨逸國及白耳義國ノ任命スル各一名ノ委員計七名ヨリ成ル委員會ヲ設置スヘシ

該委員會ノ決定ハ過半數ニ依ルヘク且當事國ヲ拘束スヘシ

第三十六條[編集]

前揭地域ニ對スル主權ノ移轉確定シタルトキハ該地域ニ定住スル獨逸國民ハ當然確定的ニ白耳義國國籍ヲ取得シ獨逸國國籍ヲ喪失ス

尤モ千九百十四年八月一日以後該地域ノ住民ト爲リタル獨逸國民ハ白耳義國政府ノ許可ヲ得ルニ非サレハ白耳義國國籍ヲ取得セサルモノトス

第三十七條[編集]

本條約ニ基キ白耳義國ニ譲渡シタル地域ニ定住スル十八歳以上ノ獨逸國民ハ該地域ニ對スル主權ノ移轉完了後二年以內ニ獨逸國國籍ヲ選擇スルノ權利ヲ有ス

夫ノ國籍選擇ハ妻ニ、父母ノ國籍選擇ハ十八歳未滿ノ子ニ及フ

右選擇權ヲ行使シタル者ハ爾後十二月以內ニ獨逸國ニ住所ヲ移スコトヲ要ス

右選擇權行使者ハ白耳義國ノ取得シタル地域ニ在ル其ノ不動產ヲ保有スルノ權利ヲ有ス各種ノ動產ハ之ヲ携帯スルコトヲ得ヘク該財產ノ移動ニ關シテハ一切ノ輸出稅又ハ輸入稅ヲ課スコトヲ得ス

第三十八條[編集]

獨逸國政府ハ白耳義國主權ノ下ニ移シタル地域內ニ於ケル民政、軍政、財政、司法其ノ他ニ關スル記錄、登錄簿、圖面、證書其ノ他各種ノ文書ヲ遅滞ナク白耳義國政府ニ引渡スヘシ

獨逸國政府ハ戰時中獨逸國官憲カ白耳義國官公署殊ニ「ブリュッセル」ニ於ケル外務省ヨリ持去リタル各種ノ記錄及文書ヲ同様白耳義國政府ニ返付スヘシ

第三十九條[編集]

白耳義國カ其ノ譲渡ヲ受ケタル地域ニ關シ負擔スヘキ獨逸國及普魯西ノ債務ノ割合及性質ハ第九編(財政條項)第二百五十四條第二百五十六條ニ依リテ之ヲ決定スヘシ

第二款 盧森堡國[編集]

第四十條[編集]

盧森堡大公國ニ關シ獨逸國ハ千八百四十二年二月八日、千八百四十七年四月二日、千八百六十五年十月二十日―二十五日、千八百六十六年八月十八日、千八百六十七年二月二十一日同五月十一日、千八百七十一年五月十日、千八百七十二年六月十一日及千九百二年十一月十一日ノ諸條約竝此等條約ニ基ク一切ノ條約中獨逸國ノ爲ニ設ケタル一切ノ規定ノ利益ヲ抛棄ス

獨逸國ハ盧森堡大公國カ千九百十九年一月一日以後獨逸關稅同盟ヲ脫退シタルコトヲ承認シ、鐵道經營ニ關スル一切ノ權利ヲ抛棄シ、大公國ノ永世局外中立ノ終了ニ同意シ且同盟及聯合國カ大公國ニ關シテ締結スヘキ一切ノ國際協定ヲ豫メ承認ス

第四十一條[編集]

獨逸國ハ主タル同盟及聯合國カ之ヲ要求スル場合ニ於テハ經濟問題竝運送及航空ニ關スル問題ニ付該諸國又ハ其ノ國民ノ爲ニ本條約中ニ規定シタル諸種ノ權利及便益ヲ盧森堡大公國ニ許與スヘキコトヲ約ス

第三款 萊因河左岸[編集]

第四十二條[編集]

獨逸國ハ萊因河ノ左岸又ハ同河ノ東方五十吉米ニ引キタル線ノ西方ニ在ル同河右岸ニ於テ築城ヲ保有シ又ハ構設スルコトヲ得ス

第四十三條[編集]

前條規定ノ境域內ニ於テハ武裝シタル兵力ノ永久又ハ一時ノ駐屯及集合竝各種ノ軍事演習ヲ禁ス動員ノ爲ニスル一切ノ永久施設ノ保持ニ付亦同シ

第四十四條[編集]

獨逸國ニシテ其ノ方法ノ如何ヲ問ハス第四十二條第四十三條ノ規定ニ違反シタルトキハ本條約ノ署名國ニ對シ敵對行爲ヲ爲シ且世界ノ平和ヲ攪亂スルモノト看做サルヘシ

第四款 「ザール」河流域[編集]

第四十五條[編集]

獨逸國ハ仏蘭西國北部ノ炭鑛破壊ニ對スル補償トシテ又戰争ニ基ク損害ニ付獨逸國カ負擔スル全賠償額ノ一部支拂トシテ第四十八條ニ規定スル「ザール」河流域ニ在ル炭鑛ニ對スル完全且絕對ナル所有權及之カ採掘ノ獨占權ヲ何等ノ金銭債務及負擔ヲモ伴フコトナク仏蘭西國ニ譲渡ス

第四十六條[編集]

住民ノ權利及福祉ヲ確保シ且仏蘭西國ニ對シ鑛山經營ニ關スル完全ナル自由ヲ保障スル爲獨逸國ハ本款付属書第一章第二章ノ規定ニ同意ス

第四十七條[編集]

「ザール」河流域ノ施政ニ關シ相當期間內ニ於テ住民ノ希望ニ適應スル永久ノ規定ヲ設クルノ目的ヲ以テ仏蘭西國及獨逸國ハ本款付属書第三章ノ規定ニ同意ス

第四十八條[編集]

本條款ニ揭クル「ザール」河流域地方ノ境界ハ左ノ通之ヲ決定ス

南方及南西方方面 本條約ニ定ムル仏蘭西國境ニ依ル

北西方及北方方面 「メルチッヒ」郡北方行政境界ト仏蘭西國境トノ接合點ヨリ該行政境界ヲ進ミ「ザールヘルツバッハ」「ブリッテン」兩村間ノ行政境界トノ接合點ニ至ル次テ該兩村ノ境界ヲ南進シ「メルチッヒ」區ノ行政境界ニ達シ「ブリッテン」村ヲ除クノ外「メットラッハ」區ヲ「ザール」河流域地方ニ編入セシメ次テ前記「ザール」河流域地方ニ編入セラレタル「メルチッヒ」及「ハウスタット」兩區ノ北方行政境界ヲ進ミ更ニ「ザールルイス」「オットワイレル」及「サン、ウェンデル」各郡ト「メルチッヒ」「トレーヴ」(「トリエール」)兩郡及「ビルケンフェルド」公國トノ行政境界ヲ進ミ「フルシュワイレル」村落ノ北方約五百米ノ地點(卽チ「メッツェルベルグ」ノ最高點)ニ至ル

北東方及東方方面 前記ノ地點ヨリ「サン、ウェンデル」ノ東北東方約三吉米半ノ地點ニ至ルノ間

「フルシュワイレル」ノ東方、「ロッシュベルグ」ノ西方及標高四一八及三二九(「ロッシュベルグ」ノ南方)ノ東方、「ライテルスワイレル」ノ西方、標高四六四ノ北東方ヲ過キ分水線ヲ南方ニ進ミ「クーゼル」郡行政境界トノ接合點ニ至ルモノトシ實査ノ上境界線ヲ定ム

次テ南方ニ向ヒ「クーゼル」郡ノ境界ヲ進ミ更ニ「ホムブルグ」郡ノ境界ヲ南南東方ニ進ミ「ドゥンツワイレル」ノ西方約千米ノ地點ニ至ル

次テ「ホルンバッハ」ノ南方約一吉米ノ地點ニ至ルノ間

標高四二四(「ドゥンツワイレル」ノ南東方約千米)、標高三六三(「フックス、ベルグ」)、標高三二二(「ワルドモール」ノ南西方)ヲ過キ「エーゲルスブルグ」及「エルバッハ」ノ東方ヲ經テ「ホムブルグ」ヲ繞囘シ標高三六一(「ホムブルグ」市街ノ北東微東方約二吉米半)、標高三四二(「ホムブルグ」市街南東方約二吉米)、標高三五七(「シュライネルス、ベルグ」)、標高三五六、標高三五〇(「シュワルツェンバッハ」ノ南東方約一吉米半)ヲ經テ「アインネェド」ノ東方、標高三二二及三三三ノ南東方、「ウェーベンハイム」ノ東方約二吉米及「ミームバッハ」ノ東方約二吉米ヲ過キ更ニ「ミームバッハ」―「ベックワイレル」街道ニ依リ横斷セラルル高地ノ東方ヲ經テ(該街道ヲ「ザール」河流域地方ニ包含セシメ)「アルトハイム」ノ北方約二吉米ニ於ケル「ベックワイレル」及「アルトハイム」ヨリ來ル兩街道ノ接合點ノ直北ヲ過キ「リングワイレルホーフ」ノ南方及標高三二二ノ北方ヲ過キ「ホルンバッハ」ノ南方約一吉米仏蘭西國境ノ凸角部ニ於テ之ト合スルモノトシ實査ノ上境界線ヲ定ム

前記國境線ノ實査劃定ヲ行フ爲本條約實施後十五日以內ニ仏蘭西國ノ任命スル委員一名、獨逸國ノ任命スル委員一名及國際聯盟理事會ニ於テ右二國外ノ國ノ國民中ヨリ選任スル委員三名合セテ五名ヨリ成ル委員會ヲ設置スヘシ

前記境界線中行政境界ト一致セサル部分ニ付テハ委員會ハ能フ限リ地方ノ經濟上ノ利益及現在ノ市町村ノ境界ヲ斟酌シ指定ノ境界線ニ依ルコトニ力ムヘシ

右委員會ノ決定ハ過半數ニ依ルヘク且當事國ヲ拘束スヘキモノトス

第四十九條[編集]

獨逸國ハ受託者トシテノ國際聯盟ノ爲ニ前記地域上ノ施政權ヲ抛棄ス

本條約實施後十五年ノ終ニ於テ前記地域ノ住民ヲシテ何レノ主權ニ服スルコトヲ希望スルヤヲ表示セシムヘシ

第五十條[編集]

「ザール」河流域ニ於ケル鑛山ノ譲渡實行ニ關スル規定ハ住民ノ權利福祉及該地域ノ施政ノ保障ヲ目的トスル措置竝前條ノ民意表示ニ關スル條件ト共ニ本款附屬書ニ之ヲ規定ス該附屬書ハ本條約ノ一部ヲ爲スモノト認メラルヘク且獨逸國ハ之ヲ遵守スヘキコトヲ聲明ス

附屬書[編集]

第四十五條乃至第五十條ノ規定ニ依リ獨逸國ノ仏蘭西國ニ對スル「ザール」河流域鑛山ノ譲渡實行ニ關スル規定、住民ノ權利及福祉ヲ尊重シ及該地域ノ施政ヲ確保スルコトヲ目的トスル措置竝該住民ニ對シ其ノ何レノ主權ニ服スルコトヲ希望スルヤヲ表示セムコトヲ求ムル條件ヲ規定スルコト左ノ如シ

第一章 鑛山ノ譲渡及採掘[編集]

第四十八條ニ規定スル「ザール」河流域地方ニ在ル一切ノ炭田ハ本條約實施ノ日以後完全且絕對ニ仏蘭西國ノ財產ト爲ルモノトス

仏蘭西國ハ豫メ認諾ヲ經ルコトナク又ハ何等ノ手續ヲ履ムコトナク該鑛山ヲ採掘シ若ハ採掘セサルノ權利又ハ之カ採掘權ヲ第三者ニ譲渡スルノ權利ヲ有スヘシ

仏蘭西國ハ其ノ權利ヲ確實ニスル爲何時タリトモ左記ノ獨逸國鑛業法令ノ適用ヲ請求スルコトヲ得

仏蘭西國ノ所有權ハ未タ特許ヲ付與セラレサル未著手ノ炭田ニ及フノミナラス既ニ特許ヲ付與セラレタル炭田ト雖現所有者ノ何人タルヲ問ハス卽チ其ノ普魯西國ニ屬スルト巴威國ニ屬スルト其ノ他ノ國若ハ團體ニ屬スルトヲ問ハス又現ニ採掘セラルルト否ト又ハ地表所有者ノ權利ト別個ノ採掘權カ認メラレタルト否トニ拘ラス總テ之ニ及フヘシ

現ニ採掘中ノ鑛山ニ在リテハ仏蘭西國ニ對スル所有權譲渡ノ效力ハ該鑛山ニ關スル一切ノ附帯機關殊ニ地表及地下ニ於ケル其ノ諸設備及機械、採掘機、石炭ヲ電力骸炭及副產物ニ變形スル工場設備、作業場、交通機關、電線、引水及配水ノ設備、土地、事務所支配人被用者及勞働者ノ住宅學校病院薬局等ノ建築物、各種ノ在庫品及供給品、記錄及圖面竝槪言スレハ鑛山ヲ所有シ又ハ採掘スル者カ鑛山及其ノ附帯機関經營ノ爲占有シ又ハ享有スル一切ノモノニ及フヘシ

前記譲渡ノ效力ハ仏蘭西國ノ占有前本條約署名後ノ交付ニ係ル產出物ノ代金及取引先ノ爲シタル供託金ニ及フ但シ取引先ノ權利ハ仏蘭西國之ヲ保障スヘシ

仏蘭西國ハ一切ノ金錢債務及負擔ヲ負フコトナク前記ノ財產ヲ取得スヘシ但シ鑛山及其ノ附帯機關ノ被用者カ本條約實施ノ日ニ於テ養老又ハ癈疾年金ニ關シ既ニ取得シ又取得ノ中途ニ在ル權利ハ之ニ因リテ影響ヲ受クルコト無カルヘシ獨逸國ハ右代償トシテ仏蘭西國ニ對シ該被用者ノ受クヘキ年金ニ對スル保險統計上ノ積立金ヲ支拂フコトヲ要ス

右仏蘭西國ニ譲渡サレタル財產ノ價額ハ第八編(賠償)第二百三十三條ノ賠償委員會之ヲ決定スヘシ

右價額ハ賠償金額ノ一部支拂トシテ之ヲ獨逸國ノ貸方ニ計上スヘシ

獨逸國ハ當該財產ノ所有者又ハ利害關係人ノ何人タルヲ問ハス之ニ賠償ヲ爲スヘキモノトス

獨逸國ノ鐵道及運河ニ於テハ鑛山及其ノ附帯機關ノ人員若ハ產出物又ハ經營ニ必要ナル材料ノ運送ニ不利益ナル直接又ハ間接ノ差別料金率ヲ設クルコトヲ得ス右運送ニ關シテハ仏蘭西國原產ノ同種產出物ニ對シ國際鐵道條約ノ保障スル一切ノ權利及特權ヲ許與スヘシ

鑛山及其ノ附帯機關ノ產出物ノ發送及運送竝勞働者及被用者ノ運搬ヲ確保スル爲必要ナル設備及人員ハ「ザール」河流域ノ地方鐵道管理者之ヲ提供スヘシ

仏蘭西國カ鑛山及其ノ附帯機關ノ產出物ノ發送及運送ヲ確保スル爲必要ト認ムル鐵道又ハ水路ノ改良例エハ複線工事、停車場ノ擴張竝構內設備及附屬物ノ建設等ニ對シテハ何等ノ障礙ヲ設クルコトヲ得ス費用ノ分擔ニ付協議調ハサルトキハ之ヲ仲裁裁判ニ付スヘシ

仏蘭西國ハ又鑛山ノ採掘ニ必要ト認ムル道路、電線及電話聯結ノ如キ新交通機關ヲ開設スルコトヲ得

仏蘭西國ハ其ノ所有スルコトアルヘキ交通機關殊ニ鑛山及其ノ附帯機關ト仏蘭西國版圖內ニ在ル交通機關トヲ連結スルモノヲ自由ニ且何等ノ制限ナク經營スルコトヲ得

仏蘭西國ハ鑛山及其ノ附帯機關ノ經營ノ爲必要ト認ムル土地ヲ取得スル爲何時タリトモ千九百十八年十一月十一日現行ノ獨逸國鑛業法令ノ適用ヲ要求スルノ權利ヲ有ス但シ戰爭狀態ニ鑑ミ特ニ設ケラレタル規定ハ此ノ限ニ在ラス

右鑛山及其ノ附帯機關ノ經營ニ依リ不動產ニ及ホシタル損害ニ對スル支拂ハ前記獨逸國鑛業法令ニ依リ之ヲ行フヘシ

鑛山及其ノ附帯機關ノ經營ノ權利ノ全部又ハ一部ニ付仏蘭西國カ自己ニ代位セシムル者ハ本附屬書所定ノ特權ノ利益ヲ享受スヘシ

十一

仏蘭西國ノ所有ニ歸シタル鑛山其ノ他ノ不動產ハ失權、買戻、公用徴收又ハ徴發其ノ他財產權ニ影響ヲ及ホス何等ノ處分ノ目的ト爲ルコトナシ

鑛山又ハ其ノ附帯機關ノ經營ニ關係アル人員及設備竝鑛山ヨリ採掘シ又ハ其ノ附帯機關ニヨリ製造シタル產出物ハ如何ナル場合ニ於テモ何等徴發處分ノ目的ト爲ルコトナシ

十二

仏蘭西國ノ所有ニ歸シタル鑛山及其ノ附帯機關ノ經營ハ本附屬書二十三ノ規定ニ從フノ外千九百十八年十一月十一日現行ノ獨逸國法令ニ依リ定メラレタル制度ニ引續キ遵由スヘシ但シ戰爭狀態ニ鑑ミ特ニ設ケラレタル規定ハ此ノ限ニ在ラス

勞働者ノ權利ハ右二十三ノ規定ニ從フノ外前記獨逸國法令ニ依リ定メラレタル千九百十八年十一月十一日現在ノ通維持セラルヘシ

右流域外ノ地ノ勞働者ヲ鑛山及其ノ附帯機關ニ傭入レ又ハ之ヲ使用スルニ對シテハ何等ノ障礙ヲ設クルコトヲ得ス

仏蘭西國國籍ヲ有スル被用者及勞働者ハ仏蘭西國勞働組合ニ屬スルノ權利ヲ有スヘシ

十三

鑛山及其ノ附帯機關ヨリ「ザール」河流域地方ノ地方歳入又ハ市町村收入中ニ納付スヘキ金額ハ鑛山ノ價額ト該流域ニ於ケル課稅シ得ヘキ一切ノ富トノ割合ヲ案シテ之ヲ決スヘシ

十四

仏蘭西國ハ常ニ鑛山ノ附帯事業トシテ被用者及其ノ兒童ノ爲小學校又ハ技藝學校ヲ建設維持シ且該學校ニ於テ仏蘭西國ノ選定スル課程及敎師ニ依リ仏蘭西語ヲ以テ敎育ヲ授クルノ權利ヲ有スヘシ

仏蘭西國ハ又病院、薬局、勞働者ノ住居及庭園其ノ他慈善的及社會的ノ設備ヲ建設維持スルノ權利ヲ有スヘシ

十五

仏蘭西國ハ鑛山及其ノ附帯機關ノ產出物ノ分配、發送及賣價ニ關シ完全ナル自由ヲ享有スヘシ

尤モ鑛山全產出額ノ多少ニ拘ラス仏蘭西國政府ハ產業用及家事用ノ地方的消費ニ充ツル爲千九百十三年ニ於ケル「ザール」河流域ノ地方的消費額ト該流域全產出額トノ比例ニ依リ常ニ右產出物ヲ供給スヘキコトヲ約ス

第二章 「ザール」河流域地方ノ施政[編集]

十六

「ザール」河流域地方ノ施政ハ國際聯盟ヲ代表スル委員會ニ之ヲ委任スヘシ該委員會ハ「ザール」河流域地方ニ之ヲ設置ス

十七

本附屬書十六ニ規定スル施政委員會ハ國際聯盟理事會ノ選定スル五名ノ委員ヲ以テ之ヲ組織シ仏蘭西國人民一名、仏蘭西國人民ニ非サル「ザール」河流域土著ノ住民一名及仏蘭西國獨逸國以外ノ第三國ニ屬スル者三名ヲ以テ之ニ充ツ

施政委員會委員ノ任期ハ一年トシ重任スルコトヲ得國際聯盟理事會ハ該委員ヲ罷免スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ該理事會ハ其ノ後継者ヲ定ムヘシ

施政委員會委員ハ俸給ヲ受クルノ權利ヲ有ス俸給ノ額ハ國際聯盟理事會之ヲ定ム該俸給ハ地方收入ノ支辨トス

十八

施政委員會ノ委員長ハ委員中ヨリ國際聯盟理事會之ヲ任命ス其ノ任期ハ一年トシ再任スルコトヲ得

委員長ハ委員會ノ執行機關トシテ行動ス

十九

施政委員會ハ「ザール」河流域地方ニ於テ從來獨逸帝國、普魯西又ハ巴威ニ屬シタル一切ノ施政權ヲ保有スヘシ該施政權中ニハ官吏ヲ任免シ竝其ノ必要ト認ムル行政機關及代表機關ヲ創設スルノ權能ヲ包含ス

右委員會ハ鐵道、運河其ノ他ノ公企業ヲ管理及經營スルノ全權ヲ有スヘシ

右委員會ノ決議ハ過半數ニ依ルヘシ

二十

獨逸國ハ「ザール」河流域地方又ハ其ノ住民ノ權利ニ關スル一切ノ公文書及記錄ニシテ獨逸國、獨逸各邦又ハ地方官憲ノ管理ノ下ニ在ルモノヲ施政委員會ノ使用ニ供スヘシ

二十一

施政委員會ハ其ノ適当ト認ムル手段及條件ニ依リ「ザール」河流域地方住民ノ利益ヲ其ノ地方外ニ於テ確實ニ保護スルノ責ニ任ス

二十二

施政委員會ハ「ザール」河流域地方ニ於テ公物又ハ私物上ニ存在シ獨逸帝國政府又ハ獨逸各邦政府ニ屬スル鑛山以外ノ一切ノ財產ニ對シ完全ナル使用收益ノ權利ヲ有スヘシ

鐵道ニ付テハ「ザール」河流域地方政廳ト獨逸諸鐵道トヲ代表スル混合委員會ハ車輛ノ衡平ナル分配ヲ爲スヘシ

「ザール」河流域ニ出入スル人、貨物、船舶、客車、貨車及郵便物ハ第十二編(港、水路及鐵道)ニ規定スル通過及運送ニ關スル一切ノ權利及特權ヲ享有スヘシ

二十三

「ザール」河流域地方ニ於テハ千九百十八年十一月十一日現行ノ法令ハ戰爭狀態ニ基キ制定セラレタルモノヲ除クノ外引續キ之ヲ適用スヘシ

一般的理由ニ依リ又ハ本條約ノ規定ト合致セシムル爲右諸法令ニ修正ヲ加フルノ必要アルトキハ施政委員會ハ其ノ定ムル方法ニ依リ住民ノ選出代表者ト協議シタル後該修正ヲ決定シ且施行スヘシ

本附屬書十二ニ規定スル鑛山採掘ニ關スル法制ハ豫メ仏蘭西國ト協議スルニ非サレバ之ヲ修正スルコトヲ得ス但シ國際聯盟ノ採用シタル勞働ニ關スル一般規定ニ基ク修正ハ此ノ限ニ在ラス

男子、婦人及兒童ノ勞働條件及時間ヲ決定スルニ當リテハ施政委員會ハ地方勞働團體ノ表示シタル希望及國際聯盟ノ採用シタル原則ヲ參酌スルコトヲ要ス

二十四

「ザール」河流域地方ノ住民カ本條約実施ノ日ニ於テ既ニ取得シ又ハ取得ノ中途ニ在ル權利ニシテ獨逸國ノ保險制度又ハ各種ノ年金ニ關スルモノハ本條約ノ規定ニ依リ何等ノ影響ヲ受クルコトナシ但シ第四項ノ規定ノ適用ヲ妨ケス

獨逸國及「ザール」河流域地方政廳ハ一切ノ前記ノ權利ヲ存續セシムルヘシ

二十五

「ザール」河流域地方ノ民事及刑事ノ裁判所ハ之ヲ存續スヘシ

右裁判所ノ裁判ニ對スル上訴ヲ審理シ及其ノ權限外ノ事件ヲ裁判スル爲施政委員會ハ一ノ民刑事裁判所ヲ設置スヘシ

施政委員會ハ該裁判所ノ構成及管轄ヲ決定スルノ責任ヲ有ス

裁判ハ施政委員會ノ名ニ於テ之ヲ行フ

二十六

「ザール」河流域地方ニ於ケル租稅及手數料ハ施政委員會獨リ之ヲ徴收スルノ權能ヲ有ス

右ノ租稅及手數料ハ専ラ之ヲ該地域ノ需要ニ充ツ

千九百十八年十一月十一日現行ノ財產制度ハ成ルヘク之ヲ維持スヘシ又豫メ住民ノ選出代表者ト協議シタル場合ヲ除クノ外新ニ關稅以外ノ何等ノ租稅ヲ賦課スルコトヲ得ス

二十七

本諸規定ハ「ザール」河流域地方ノ住民ノ現ニ有スル國籍ニ影響スルコトナシ

他國籍ヲ取得セムコトヲ希望スル者ニ對シテハ何等ノ障礙ヲ設クルコトヲ得ス此ノ場合ニ於テ新國籍ノ取得ハ其ノ他ノ國籍ヲ喪失セシムルモノトス

二十八

住民ハ施政委員會ノ監督ノ下ニ其ノ地方議會、信敎ノ自由、學校及言語ヲ保持スヘシ

投票權ハ地方議會以外ノ議會ニ關シ行使セラルルコトナカルヘク又男女ノ別ナク二十歳以上ノ總テノ住民之ヲ有スヘシ

二十九

「ザール」河流域地方ノ住民ニシテ該地域ヲ退去セムト欲スル者ハ其ノ不動產ヲ該地域內ニ保有シ又ハ相當ノ價格ヲ以テ之ヲ賣却シ且何等ノ負擔ヲ課セラルルコトナクシテ其ノ動產ヲ撤去スルノ完全ナル自由ヲ有ス

三十

「ザール」河流域地方ニ於テハ强制タルト志願タルトヲ問ハス何等ノ兵役制度ヲ設クルコトナカルヘシ又同地域內ニ於テハ築城ノ構設ヲ禁止ス

秩序維持ノ爲ニスル地方憲兵ノミハ之ヲ置クコトヲ得

施政委員會ハ一切ノ場合ニ於テ「ザール」河流域內ニ於ケル人及財產ノ保護ニ任スルノ義務ヲ有ス

三十一

第四十八條ニ揭クル「ザール」河流域地方ニ於テハ仏蘭西國ノ關稅制度ニ依ルヘキモノトス地方消費ノ爲仕向ケラレタル貨物ニ對スル關稅收入ハ一切ノ徴收費ヲ控除シタル上之ヲ該地域ノ豫算ニ編入スヘシ

右地域ヨリ獨逸國ニ輸出スル冶金生產品又ハ石炭ニ對シテハ何等ノ輸出稅ヲ賦課セス「ザール」河流域地方ノ產業ニ使用スル獨逸國ノ輸出品ニ付亦同シ

獨逸國ノ版圖ヲ通過スル右流域原產ノ天產物又ハ製造品ハ何等ノ關稅ヲ賦課セラルルコトナシ該流域ヲ通過スル獨逸國產物亦同シ

右流域ノ原產ニシテ右流域ヨリ獨逸國ニ入ル生產物ニ對シテハ本條約實施ノ日以後五年間輸入稅ヲ免除スヘシ地方消費ノ爲獨逸國ヨリ右流域ニ輸入スル貨物ニ對シ亦同シ

仏蘭西國政府ハ前記五年ノ期間獨逸國ヨリ右地域ニ輸入セラレタル原料品及半製品ヲ含ム一切ノ貨物ニシテ同流域ヨリ仏蘭西國ニ運送セラルルモノノ數量ヲ千九百十一年乃至千九百十三年ニ「アルザス、ロレーヌ」及仏蘭西國ニ輸入セラレタル數量ノ平均年額迄制限スルノ權利ヲ留保ス右平均額ハ一切ノ公ノ情報及統計ヲ参照シテ之ヲ決定スヘシ

三十二

「ザール」河流域地方ニ於テハ仏蘭西國貨幣ノ流通ヲ禁止シ又ハ制限スルコトヲ得ス

仏蘭西國ハ鑛山又ハ其ノ附帯機關ノ經營ニ關スル一切ノ購買、支拂及契約ニ於テ仏蘭西國貨幣ヲ使用スルノ權利ヲ有ス

三十三

施政委員會ハ前記諸規定ノ解釋ヨリ生スル一切ノ問題ヲ決定スルノ權能ヲ有ス

仏蘭西國及獨逸國ハ前記諸規定ノ解釋ニ關スル意見ノ相違ニ基ク一切ノ爭議ヲ均シク施政委員會ニ付議スルコトヲ承諾ス過半數ニ依ル該委員會ノ決定ハ兩國ヲ拘束スヘシ

第三章 人民一般投票[編集]

三十四

「ザール」河流域地方ノ住民ハ本條約實施後十五年ノ期間滿了ノ時ニ於テ左ノ方法ニ依リ其ノ希望ヲ表示スルコトヲ求メラルヘシ

市町村又ハ區毎ニ左ノ三者中ノ一ヲ選フ爲投票ヲ行フヘシ

(イ) 本條約及本附屬書ニ依リ設定セラレタル制度ノ維持
(ロ) 仏蘭西國トノ合併
(ハ) 獨逸國トノ合併

投票ノ日ニ於テ二十歳以上ニシテ本條約署名ノ日ニ右地域內ニ居住シタル者ハ男女ノ別ナク悉ク投票權ヲ有ス

右ノ外ノ投票ノ要件、方法及期日ハ投票ノ自由、秘密及確實ヲ保障シ得ヘキ方法ニ依リ國際聯盟理事會之ヲ決定ス

三十五

國際聯盟ハ投票ニ依リ表示セラレタル住民ノ希望ヲ考量シ右地域ノ歸属スヘキ主權ヲ決定スヘシ

(イ) 國際聯盟カ右地域ノ全部又ハ一部ニ對シ本條約及本附屬書ニ依リ設定セラレタル制度ヲ維持スルコトニ決定シタル場合ニ於テハ獨逸國ハ國際聯盟ノ必要ト認ムル所ニ從ヒ國際聯盟ノ爲ニ主權ヲ抛棄スルコトヲ茲ニ承諾ス國際聯盟ハ確定的ニ採用セラレタル前記制度ヲ右地域ノ永久ノ福祉及一般ノ利益ニ適應セシムル爲適當ナル處置ヲ講スルノ義務ヲ有ス
(ロ) 國際聯盟カ右地域ノ全部又ハ一部ヲ仏蘭西國ニ合併スルコトニ決定シタル場合ニ於テハ獨逸國ハ國際聯盟ノ決定ニ從ヒ仏蘭西國ニ對シ聯盟ノ指定スル地域ニ於ケル一切ノ權利及權原ヲ譲渡スヘキコトヲ承諾ス
(ハ) 國際聯盟カ右地域ノ全部又ハ一部ヲ獨逸國ニ合併スルコトニ決定シタル場合ニ於テハ國際聯盟ハ其ノ指定スル地域ニ對シ獨逸國政府ヲシテ其ノ施政ヲ再與セシムヘキ義務ヲ有ス
三十六

國際聯盟カ「ザール」河流域地方ノ全部又ハ一部ヲ獨逸國ニ合併スルコトニ決定シタルトキハ該地域ニ在ル鑛山ニ對スル仏蘭西國ノ所有權ハ金貨拂ノ價格ヲ以テ全部獨逸國之ヲ買戻スヘシ其ノ價格ハ獨逸國ノ指名スル者一名、仏蘭西國ノ指名スル者一名、國際聯盟理事會ニ於テ仏蘭西人及獨逸人ニ非サル者ヨリ指名スル一名計三名ノ専門家之ヲ決定スヘシ右専門家ノ決定ハ過半數ニ依ル

前記獨逸國ノ支拂義務ハ賠償委員會之ヲ考量スヘシ獨逸國ハ右支拂ニ充ツル爲同委員會ノ同意シタル細目條件ニ依リ財產又ハ收入ノ上ニ優先權ヲ設定スルコトヲ得

獨逸國カ支拂期日後一年內ニ右支拂ヲ爲ササルトキハ賠償委員會ハ國際聯盟ノ訓令ニ從ヒ支拂ノ方法ヲ講シ又必要ノ場合ニ於テハ當該鑛山ヲ淸算シ右支拂ニ充ツヘシ

三十七

本附屬書三十六ノ規定ニ依ル買戻ノ結果鑛山又ハ其ノ一部ノ所有權カ獨逸國ニ移轉シタルトキハ仏蘭西國及同國民ハ其ノ產業用及家事用ノ爲其ノ當時必要ト認メラルル數量ノ「ザール」河流域ノ石炭ヲ購買スルノ權利ヲ有スヘシ石炭ノ數量、契約ノ存續期間及價格ニ關スル衡平ナル協定ハ適當ナル時期ニ於テ國際聯盟理事會之ヲ決定スヘシ

三十八

仏蘭西國及獨逸國ハ鑛山買戻ノ價格支拂期日以前ニ締結スル特別取極ヲ以テ本附屬書三十六三十七ノ規定ヲ修正スルコトヲ得

三十九

國際聯盟理事會ハ本附屬書三十五ニ規定スル國際聯盟ノ決定實施後行ハルヘキ制度ノ設定ノ爲必要ナル規定ヲ設クヘシ該規定中ニハ委員會ノ起債ニ依リ又ハ其ノ他ノ原因ニ依リ生シタル「ザール」河流域地方政廳ノ債務ノ衡平ナル分配ヲ含ムヘシ

施政委員會ノ權能ハ新制度實施ノ時ヨリ消滅ス但シ本附屬書三十五(イ)號ニ規定スル場合ハ此ノ限ニ在ラス

四十

本附屬書ニ揭クル一切ノ事項ニ關スル國際聯盟理事會ノ決定ハ過半數ニ依ル

第五款 「アルザス、ロレーヌ」[編集]

締約國ハ仏蘭西國ノ權利ニ對シ竝「ボルドー」會議ニ於ケル「アルザス」及「ロレーヌ」代表者ノ嚴重ナル抗議ニ拘ラス祖國ヨリ分離セラレタル右兩州人民ノ希望ニ對シ千八百七十一年獨逸國ノ加ヘタル非行ヲ是正スヘキ德義上ノ義務アルコトヲ認メ

左ノ諸條ヲ約定ス

第五十一條[編集]

千八百七十一年二月二十六日「ヴェルサイユ」ニ於テ署名セラレタル講和豫備條約及千八百七十一年五月十日ノ「フランクフルト」條約ニ依リ獨逸國ニ譲渡セラレタル地域ハ千九百十八年十一月十一日ノ休戦條約締結ノ日以後仏蘭西國主權ノ下ニ復歸ス

千八百七十一年以前ニ於ケル國境劃定ニ關スル諸條約ノ規定ハ其ノ效力ヲ囘復スヘキモノトス

第五十二條[編集]

獨逸國政府ハ仏蘭西國主權ノ下ニ復歸シタル地域ノ民政、軍政、財政、司法其ノ他ニ關スル一切ノ記錄、登錄簿、圖面、證書其ノ他各種ノ文書ヲ遅滞ナク仏蘭西國政府ニ引渡スヘシ若シ以上ノ文書、記錄、登錄簿、證書又ハ圖面中他ニ移シタルモノアルトキハ獨逸國政府ハ仏蘭西國政府ノ請求ニ應シ之ヲ還付スヘシ

第五十三條[編集]

第五十一條ノ地域ニ於ケル住民ノ利益殊ニ其ノ私權、營業及業務執行ニ關シテハ仏蘭西國ト獨逸國トノ間ニ別個ノ取極ヲ締結スヘシ但シ獨逸國ハ今後本款附屬書ニ揭ケタル右地域內ノ住民又ハ原住者ノ國籍ニ關スル規定ヲ承認受諾シ、既ニ仏蘭西人タルコトヲ何等ノ理由ニ依ルヲ問ハス宣明セラレタル者ニ對シテハ如何ナル時又ハ如何ナル場所ニ於テモ之ヲ獨逸國民ナリト主張スルコトナク、其ノ他ノ者ハ總テ之ヲ其ノ領土內ニ引取リ且第五十一條ノ地域ニ於ケル獨逸國民ノ財產ニ付テハ第十編(經濟條項)第二百九十七條及同第四款附屬書ノ規定ニ準據スヘキコトヲ約シタルモノトス

獨逸國民ニシテ仏蘭西國國籍ヲ取得スルコトナクシテ仏蘭西國政府ヨリ前記地域內ニ居住スルノ許可ヲ受ケタル者ニ對シテハ同條ノ規定ヲ適用セス

第五十四條[編集]

本款附屬書一ニ依リ仏蘭西國國籍ヲ囘復シタル者ハ本款ノ適用ニ付テハ之ヲ「アルザス、ロレーヌ」人ト看做ス

附屬書二ニ揭クル者ハ其ノ仏蘭西國國籍ヲ請求シタル日ヨリ之ヲ「アルザス、ロレーヌ」人ト看做スヘク其ノ效力ハ千九百十八年十一月十一日ニ溯及ス其ノ請求ヲ却下セラレタル者ハ却下ノ日ニ於テ其ノ特權ヲ喪失スヘシ

法人ニシテ仏蘭西國行政官憲又ハ司法裁判ニ依リ其ノ資格ヲ有スト認定セラレタル者ハ亦「アルザス、ロレーヌ」人タルノ資格ヲ享有スヘシ

第五十五條[編集]

第五十一條ノ地域ハ第九編(財政條項)第二百五十五條ニ規定スル條件ニ依リ一切ノ公債ヲ負擔スルコトナク仏蘭西國ニ復歸スヘシ

第五十六條[編集]

仏蘭西國ハ第九編(財政條項)第二百五十六條ノ規定ニ依リ第五十一條ノ地域內ニ於テ獨逸帝國又ハ獨逸各邦ノ所有スル一切ノ財產及土地ヲ取得スヘク之カ爲該地域ヲ譲渡スル各邦ニ對シ支拂ヲ爲シ又ハ債權ヲ認ムルコトナカルヘシ

本規定ハ獨逸帝國、獨逸各邦又ハ其ノ行政區劃ニ屬スル公私ノ財產タル一切ノ動產又ハ不動產竝一切ノ權利ニ之ヲ適用ス

帝室財產及前獨逸皇帝其ノ他ノ獨逸君主ノ財產ハ之ヲ公財產ト同視スヘシ

第五十七條[編集]

獨逸國ハ其ノ版圖ノ他ノ部分ニ於テ均シク適用セラルルニ非サル極印其ノ他立法上又ハ行政上ノ措置ニ依リ本條約署名ノ日ニ於テ法定通用力ヲ有シ且其ノ日ニ於テ仏蘭西國政府カ所有スル獨逸國ノ金錢證券又ハ貨幣ノ法律上ノ價値又ハ償還力ヲ毀損スヘキ何等ノ手段ヲ執ルコトヲ得ス

第五十八條[編集]

戰時中「アルザス、ロレーヌ」又ハ「アルザス、ロレーヌ」ニ於ケル公共團體カ獨逸帝國ノ爲獨逸帝國ノ法律ニ從ヒ支出シタル特別戰時費例ヘバ動員者ノ家族手當、徴發、軍隊宿舎料、追放民救助費等ニ對シ「麻」ヲ以テスル辨償ノ條件ハ特別協定ヲ以テ之ヲ定ムヘシ

右費用ニ充ツル爲獨逸帝國ニ對シ「アルザス、ロレーヌ」カ貢納スヘカリシ金額ハ前記金額ヲ決定スルニ當リ之ヲ獨逸國ノ貸方ニ計上スヘシ尤モ右貢納額ハ千九百十三年ニ於ケル「アルザス、ロレーヌ」ヨリ生シタル獨逸帝國ノ歳入ノ割合ニ依リ之ヲ算定スヘシ

第五十九條[編集]

第五十一條ノ地域ニ於テ賦課シ得ヘキ各種ノ獨逸帝國ノ租稅、賦課金及手數料ニシテ千九百十八年十一月十一日ノ休戰條約ノ當時未徴收ニ係ルモノハ仏蘭西國政府自己ノ爲ニ之ヲ徴收スヘシ

第六十條[編集]

獨逸國政府ハ遅滯ナク「アルザス、ロレーヌ」人(自然人、法人及營造物法人)ニ對シ千九百十八年十一月十一日ニ於テ其ノ所有シタル一切ノ財產、權利及利益ニシテ獨逸國版圖內ニ存スルモノヲ還付スヘシ

第六十一條[編集]

獨逸國政府ハ休戰條約ニ規定シタル「アルザス、ロレーヌ」ニ關スル財政條項ノ實行ヲ繼續シ且之ヲ遅滯ナク完了スルコトヲ約ス