南支派遣軍による軍慰安所以外の接客業者取締要領、健康診断および通報

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• 底本： 昭和14年8月第2旬衛生旬報、pp.84-91

1. 軍慰安所以外ノ接客業者取締要領

第１　軍慰安所以外ノ邦人^{[注釈 1]}接客業者ニ対スル取締

本取締ハ軍憲兵隊及日本総領事館之ヲ実施シ軍衛生機関之ニ協力ス
1. 健康診断及検微ノ実施

1. 接客業婦（芸妓、酌婦^{[注釈 2]}、女給）ニ対シ毎月1回健康診断ヲ芸妓・酌婦ニ対シ毎週1回検微ヲ実施ス
2. 健康診断及検微ハ所要ニ応シ衛生機関之ヲ援助ス

2. 有疾者ノ処置

患者ハ一切接客ヲ禁止シ其実施ヲ厳ニ取締リ禁ヲ犯スモノアルトキハ営業停止等厳重ニ処分スルコトアリ

3. 予防設備

枕席ヲ用意スル営業者ヲシテ必ス予防設備ヲ完備セシム

4. 必要ト認ムルトキハ総領事館所管区域ニ対シ軍ニ於テ直接接客業婦ノ健康状態及衛生施設ヲ検査ス
5. 女給ノ淫売行為ハ之ヲ禁止スルト共ニ之カ取締ヲ励行シ禁ヲ犯スオノアルトキハ営業停止等厳重ニ処分ス
6. 報告通報

1. 総領事館ハ所管区域内ノ接客婦ノ人名（芸名、本名共ニ）ハ異動ノ都度軍憲兵隊ニ軍属兵隊ハ軍司令部及関係各部隊ニ報告通報ス
2. 検微成績ハ検査担当者ヨリ別ニ定ムル所ニ依リ軍憲兵隊ニ軍憲兵隊ハ軍司令官部及関係各部隊ニ報告通報ス
3. 総領事館ハ所管区域内ノ女給取締状況ヲ毎月1回軍憲兵隊ニ軍憲兵隊ハ軍司令部及関係各部隊ニ定期報告ス
4. 軍ニ於テ実施セル検査ノ所見ハ関係各機関ニ通報ス

第２　軍特殊慰安所以外ノ支那接客業者ニ対スル取締

本取締ニ関シ軍特務機関ハ支那側諸機関ヲ指導シテ之カ実行ヲ容易ナラシメ軍憲兵隊ハ支那側諸機関及日本人ノ実行ヲ取締ルモノトス
1. 軍特殊慰安所以外ノ支那娼婦ハ之ヲ軍隊宿営地ヨリ遠隔セル地点ニ於テ一地若ハ数地ニ集結シ公娼トシテ適宜ノ方法ニ依リ定期検微ヲ実施スル如ク指導ス
軍人軍属ノ上記地域出入ヲ許サス
2. 日本人ノ蛋民船内等ニ出入シ水上接客業者ニ接スルコトヲ許サス
3. 前２項ノ取締状況ハ毎月1回軍憲兵隊ヨリ軍司令部ニ定期報告スルモノトス
以上ハ主トシテ広東市内及其付近ノ接客業者ニ対スル取締ナルモ各兵団（隊）ハ本取締要領ニ基キ自己警備区域ノ飲食店、カフェー等ヲ取締リ毎月1回其状況ヲ軍司令部ニ定期報告ス

別紙第5　南支医第845号　市内接客業者健康診断実施ニ関スル件通牒

昭和14年8月16日　南支派遣軍医部長

広東博愛会医院長殿
別紙南支参通丁第103号１ノ２ニ基ク広東市内邦人接客業者ニ対スル健康診断及検微ハ自今下記ノ要領ニ依リ貴院ニテ之カ実施ヲ担当相成度

下　　記

1. 健康診断ハ毎月1回検微ハ毎週1回実施スルモノトス
2. 健康診断ニハ慢性伝染病ノ早期発見ニ重点ヲ志向シ尿検査要スレハ喀痰検査及血液検査（黴毒反応）ヲ実施スルモノトス
3. 有疾者ハ務メテ之ヲ収容入院治療トスルモノトス
4. 検査成績ハ別紙様式ニ依リ週末統合ノ上本職及軍憲兵隊、領事館ニ提出スルモノトス

検査書見上取締等ニ関スル参考意見アラハ付記スルモノトス

5. 検査医官ノ氏名、検査実施日割ハ本職宛予メ通報スヘシ
6. 実施ノ細部ニ関シテハ直接憲兵隊、領事館警察ト連絡協定スルモノトス
追而実施ニ関シ勤務カ収容カ等ニツキ意見アラハ速ニ申出ラレ度申シ添フ

別紙第6 通報

昭和14年8月17日

於　　関　　東

1. 軍ハ最近軍慰安所以外ノ接客業者取締ニ関スル事項ヲ定メ南支参通第103号関係各部隊ニ通牒セリ其ノ中直接軍人軍属ニ関スル事項下ノ如シ

1. 女給ノ売淫行為ハ之ヲ禁止スルト共ニ之カ取締ヲ励行シ禁ヲ犯スモノアルトキハ営業禁止等厳重ニ処分ス
2. 軍特殊慰安所従業婦以外ノ支那娼婦ハ之ヲ其ノ区域内ニ集結シ軍人軍属ノ之特ニ接スルコトヲ厳禁ス就中蛋民船等ニ出入シ水上接客業婦ニ接スルコトハ危険ヲ伴ウヲ以テ日本人全般ニ対シ之ヲ厳禁ス

上ハ畢竟軍人軍属ノ花柳病予防ノ実績ヲ向上センカ為メ引イテ戦力ノ低下ヲ防止セントスル意図ナルヲ以テ各部隊ハ上ノ規則ヲ厳守セシムル如キ指導相成度又之ト併行シテ精神教育ヲ徹底セシムルト共ニ花柳病予防方法ノ実行ヲ必ス厳守セシムル如ク指導シ両方相俟ツテ目下軍ノ最モ恥辱トスル花柳病ノ多発ヲ防止スルノミナラス更ニ之カ撲滅ヲ期シ度ヲ以テ以上ノ主旨ヲ具現スル如ク各隊ニ於テ特ニ御努力相成度

注釈

1. 内地人、朝鮮人および台湾人。
2. 実際は娼妓。大日本帝国外では廃娼運動を考慮し、娼妓を酌婦と呼んだ。