1.
が整係数の多項式であるとき,合同式
(1)

を満足せしめる未知の整数
を求めることを合同式を解くという.
をこの合同式の一つの解とし,
とすれば

即ち
を法として
と同類なる数はすべて (1) の解である.
故に合同式を解くとは,それを満足せしめる整数の類を求めることである.
由って(1)のすべての解を求めるには,
なる
個の値を当てはめて見れば宜しい.
(故にどのような合同式が与えられてあるとしても,手数さえ厭わねば,それを解くことは出来るのである.)
定理 1.13.
一次合同式

は,
なるときは,一つの解を有する.
なるときは,
が
で割り切れるときに限って解を有する.
その解の数は
である.解の数は,
を法としての類に関していう.
[証]
(一)
の場合.
に
を法としての剰余系

の値を与えるときに,
の値

はやはり
としての剰余の一組であることは明白である.
実際,
となるのは
が
で割り切れるときに限り,
仮定に由って
であるから,
.それは,
なるときに限る.
由って
が如何なる整数であっても,
の中の唯一つに由って

が満足せしめられねばならぬ.
(二)
の場合.
(1)

に解があるとすれば,
であるから,
は
で割り切れねばならぬ.
が
で割り切れるとすれば,

と置くとき,(1) は
(2)

に帰する(定理 1.12).
ここでは
であるから,
(2) を満足せしめる
は
を法としての一つの類である.
それを
とすれば,
(2)の解は
(3)

に由って与えられる.ここで
は任意の整数である.
の二つの値
に関して,これらが
を法として合同になるのは

が m で割り切れるとき,すなわち
が
で割り切れるときに限るから,
(3) に於いて
なる値を与えるときに,
を法としての (1) のすべての解が得られる.
即ち解の数は
である.
[例]
を解くこと.
[証]
であるから,一つの解がある.その解を
とする.
を用いる為に,両辺に
を掛けて

[1]
両辺に
を掛けて与えられたる合同式の両辺に加えて

を得る.
即ち解があれば,それは
でなければならないが,解があることがわかっているから,
これが即ち求める解である.
[験算]

このようにして
を解くまでもなく,
を得たのである.
実際は上記のようにして
の解を求めるのが近道である.
即ち一つの解が
であるから,一般の解は
である.[2]
読者は自ら任意の合同式を提出して解いて見るが宜しい.このような練習が整数論を理解するのに必要である.
2.
次の定理も後に引用されるものである.(補遺 5 参照)
が二つずつ互いに素で,
は任意の整数であるとき
(4)

を満足せしめる
は
を法として唯一つ存在する.
[証]
第一の合同式を満足せしめる
は
(5)

である.それが第二の合同式をも満足せしめるのは

即ち
(6)

なるときである.仮定に由って
であるから
(6) の解は

のような,
を法としての一類である.
これを (5) に代入すれば,

即ち
[4]
である.この一つの合同式で
(4)の最初の二つの合同式を置き換えてよい.
由ってこれを(4)の第三の合同式と組みあわせて同様の方法を行うことが出来る.
次第にこのようにして竟に(4)と等値なる

を得る.
或いは又ガウスが
Disquisitiones に述べたように,すべての
を
対称的に取り扱う方法もある.
前のように

とし,
(7)

と置いて
(8)

なる
を求める.
然らば(4)の解は

実際、(8) に由って、右辺の第一項
[5]
で,
第二項以下は(7)に由って
が
で割り切れるから,
.
に関しても同様であるから,
(4)は満足せしめられる.
(4)の解が
に関して唯一つに限ることは始めから明白である.
を(4)の解とすれば
だから,
は
で割り切れ,
従ってそれらの最小公倍数なる
で割り切れる.
即ち
.
上記の解では、
,従って
が
に関係なく定められる.
は即ち
の中で
だけが
で,
その他は
なる場合に於ける(4)の解であって,
それらの一次的結合として,任意の
に関する(4)の解が得られるのである.
[例]

とすれば
[6]



ゆえに

の解は

.
例えば,
で割れば
が残り,
で割れば
が残り,
で割れば
が残るような数
は

或いは一般に

.
命題 1.
法
の最大公約数を
,最小公倍数を
とすれば,

が解を有する為に必要且つ充分なる条件は
である.
解があれば,
を法として唯一つである.
[例]



命題 2.
前の問題を一般化して
個の合同式

を考察する.
解があるために必要且つ充分なる条件は

である.解は
の最小公倍数を法として唯一つである.
[証]
条件が必要であることは明らかである.
由って条件が成り立っていると仮定する.この場合仮に
の最小公倍数を
で表すことにする.
然らば問題1に由って二つの合同式

の解を
のような形で合同式で表すことができる.これと第三の合同式とを組み合わせたときに,

それが
を法として唯一つの解を有することを示そう.それが出来れば,以下同様に進んで問題が解決される.
さて仮定に由って
,
ゆえに
,
従って
,
即ち
は
で割り切れる,
同様に
でも割り切れる.従ってs
で割り切れる.
吾々の目的の為には
が
で割り切れてくれればよいのであるから,

ならば十分である.幸いにしてこの等式は成り立つ (問題.10).
- ↑
officious:
,
,
一方,
,
両辺を引いて
- ↑
officious:
に
を代入して
を得る.
- ↑
officious: 「中国の剰余定理」
- ↑
officious:
が
に反映されている.
- ↑
officious:
- ↑
officious:特にこの場合は「百五減算」として和算においても知られていた.
- ↑
officious:
において、
すわなち
これを他式に代入、
, すなわち最終的に
, 前節までにもみたように
を定数とするとき、式
の
をいかように変化させても、
は
の整数倍の刻みでしか値をとらないし、
の整数倍の中で必ず解を持つ(等式を満たす
の組が存在する.)
すなわちもとに戻って、
を満たす
が存在する必要十分条件は、
が
の整数倍であること、すなわち
である.
- ↑
辺々加えて