凹凸の皺

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本文[編集]

凹凸の皺
萩原恭次郎

目には幻む武蔵野原の秋草よ!
青草原が踏みにぢられてより
生活の路上に
いくた祖先の生死の明滅が激昂せる世紀に呻いたであらう

見よ
無数車輪の叫喚
蹴りゆく靴鋲
方寸の隙なく
一瞬の安意なく
疾駆狂奔する
高熱患者の
利器の狂怒に
あゝ 絶えず
いぢりつけられるゝ道路の皺よ!

荒き凹凸の皺よ!
そは絶えまなき神経的な
都会の狂痴にまかしをる地の母のかなしき微笑!

あゝ われらが生活はかく黄色の煙りを吐きちらし
目に青き草丘は消え
赤熱の汽鑵にも似たる叫喚か!

たどれば首府東京の曇空には
無数の黒煙と飢餓の夕なり!