俺は泥靴で泥の道を歩つてゆく

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本文[編集]

俺は泥靴で泥の道を歩つてゆく
萩原恭次郎

カツト飛び出した太陽
街中を驚奇盤的光線の舞踏場にする
驚いた馬が飛び上つてゐる

古びたシルクハツトが馬車を走らしてゐる
道路は青黒い血だ
はねくり返る車輪の後から血のついた首がはねくり返つて落ちて来る
シルクハツトの眼鏡にまで血がとびつく
鵞鳥のやうな首は労働者の首だ

青黒い娘の顔はパチツと窓が開けて閉めた
くるくるくるつと三角形の眼ぶたと目玉が動いて
青い煙草の煙りがすつと流れた

俺は泥靴で泥の道を歩つてゆく
あやふくシルクハツトの目をよけて
誰も誰もが歩くやうに俺は泥靴で泥の道を歩つてゆく
太陽はデツトマスクのやうに笑つてゐる

解題[編集]

作者:萩原恭次郎

底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1

表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。

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