人間の断層

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本文[編集]

人間の断層
彼等は抱き合ひつゝ地下に埋まる
萩原恭次郎

闇~~~~~~~~~~<<<<
倦怠は地下に埋まつてゐる骸骨だ!
堆積された鉛板と煉瓦の虐殺の底に!
瓦斯●●●
コンクリートのビルデイングに圧せられた重力!
鉛管の底に———無数に動いてゐる顔!
カンテラは揺れる!
人間の断層!
まつくら暗の泥濘にたほれた馬よ!
終電車から起き上がつた男よ!
病院から出て来る腕を繃帯した職工!
高圧線!
瓦斯!
呼吸は瓦斯!
機械は止まつて———工場は蒼つ白い!
針金さ———眼も唇も胸も両足も!
肉感なんか———豚にキスした方がましだ!
誰が●●の変りに
薔薇と百合の花をもつて仕事する奴があるものか!
愛は現在を占ふトランプぢやない!
瓦斯●●鉄●疲労———混入した脳髄!
———大きな眼球の女が落ちて来る!
クク●クク●クク●
キイ●キイ●キキ●キキ●ウフエラ!
笑ひ声が曇り空の電線にひつかゝる———
スパークの支離滅裂だ!
×××××
●●●●●
ぷす ぷす ぷす 洩れる 洩れる 洩れる 洩れる 洩れる
朝———「疲れた夜」のゆき過ぎた後を
一線を引いた白煙!
病人●殺人●死人●ピストル
倦怠は地面一面にもみくちやにされてゐる!

解題[編集]

作者:萩原恭次郎

底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1

表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。