コンテンツにスキップ

不法入国者等退去強制手続令

提供:Wikisource

公布時

[編集]
不法入国者等退去強制手続令をここに公布する。

御名御璽


昭和二十六年二月二十八日
内閣総理大臣 吉田  茂

政令第三十三号

不法入国者等退去強制手続令
内閣は、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件(昭和二十年勅令第五百四十二号)に基き、この政令を制定する。
(目的)

第一条 この政令は、外国人登録令(昭和二十二年勅令第二百七号。以下「登録令」という。)、北緯三十度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令(昭和二十五年政令第二百二十七号。以下「臨時措置令」という。)に規定する退去強制等に関する公正な手続を定め、もつて人権の保障を確保することを目的とする。

2 この政令の規定は、いかなる場合においても、人身保護法(昭和二十三年法律第百九十九号)の規定に基いて救済を請求する権利を否認するものと解釈してはならない。

3 この政令に基いて収容されている者には、収容所の保安上支障がない範囲内においてできる限りの自由が与えられなければならない。

(定義)

第二条 この政令において「退去強制」とは、登録令第十六条及び臨時措置令第五条の規定により退去を強制することをいう。

2 この政令において「当該職員」とは、入国警備官、警察官、警察吏員、海上保安官その他の司法警察職員をいう。

3 この政令において「本邦」とは、登録令第三条に規定する本邦をいう。

4 この政令において「長官」とは、出入国管理庁長官をいう。

5 この政令において「中央審査会」及び「地方審査会」とは、それぞれ出入国管理庁設置令(昭和二十五年政令第二百九十五号)第十一条に規定する「中央審査会」及び「地方審査会」をいう。

6 この政令において「外国人」とは、登録令に規定する外国人をいう。

(この政令の適用を受ける者)

第三条 この政令は、左の各号の一に該当する者に適用する。

一 登録令第十六条各号に該当する者又は臨時措置令第五条の適用を受ける者
二 連合国最高司令官の許可を受けて本邦の港又は飛行場に入る船舶又は航空機に乗つていた外国人又は北緯三十度以南の南西諸島(口之島を含む。)に本籍を有する者(以下「南西諸島人」という。)で、出入国監理官の許可を受けないで、その船舶若しくは航空機から降り、又は港若しくは飛行場の区域外に出たもの
三 連合国最高司令官の許可を受けて本邦の港又は飛行場に入る船舶又は航空機に乗つていた外国人又は南西諸島人で、出入国監理官が発給する一時上陸許可書又は通過上陸許可書に記載された期限を経過して本邦に残留するもの
四 連合国最高司令官の許可を受けて本邦に入つた外国人又は南西諸島人で、本邦内における滞在許可期限又は滞在延期許可期限を経過して本邦を出国しないもの
(運送業者又はその代理人の報告及び防止の義務)

第四条 連合国最高司令官の許可を受けて本邦に入る船舶若しくは航空機の属する運送業者又はその代理人は、前条第二号若しくは第三号に該当する行為をし、又はしようとした者を知つたとき、及び本邦にあるその船舶又は航空機に乗つている密航者を知つた時は、すみやかにその旨を所轄の入国審査官に報告しなければならない。その密航者がその船舶又は航空機から降りようとしなかつた場合においても、同様とする。

2 前項に掲げる運送業者は、同項の船舶又は航空機の乗客(通過者を含む。)、船員、密航者その他の者で、連合国最高司令官から本邦に入国し、又は滞在することの許可を受けなかつたものが本邦に入国し、又は滞在する目的で船舶又は航空機を降りることを防止しなければならない。

(収容)

第五条 入国審査官は、登録令第三条又は臨時措置令第一条の規定に違反した者がある場合において、その者を退去強制するかどうかを決定するために必要があるときは、第七条に規定する収容令書を発付して入国警備官にその者を収容することを命ずることができる。

2 検察官は、登録令第三条又は臨時措置令第一条の規定に違反する罪に係る事件又は登録令第十六条第三号に該当する者に係る事件を受理した場合においては、起訴するかどうかをなるべくすみやかに決定しなければならない。

3 検察官は、前項の場合において起訴しないと決定するときは、直ちにその旨を所轄の入国審査官に通知しなければならない。

4 入国審査官は、前項の通知を受けた場合においては、直ちに事案を調査し、退去強制をするかどうかを決定するために、当該被疑者に対して収容令書を発付するかどうかを決定しなければならない。

5 入国審査官は、前項の場合において当該被疑者に対して収容令書を発付しないと決定したときは、直ちにその旨を検察官に通知しなければならない。この場合においては、検察官は、直ちに当該被疑者を釈放しなければならない。

6 入国審査官は、第四項の場合において当該被疑者に対して収容令書を発付したときは、直ちにその旨を検察官に通知しなければならない。

7 検察官は、前項の通知を受けた場合においては、当該被疑者を釈放して、入国警備官に引き渡さなければならない。検察官は、その者を入国警備官に直ちに引き渡すことができない場合においては、一時的に警察官又は警察吏員に引き渡すことができ、警察官又は警察吏員は、なるべくすみやかに入国警備官にその者を引き渡すものとする。

第六条 登録令第三条若しくは臨時措置令第一条の規定に違反した者で有罪の判決を受けたもの又は登録令第十六条第二号から第四号までに該当する者が執行猶予の言渡、刑期の満了、又は刑の執行の停止その他の事由に因り釈放されるときは、検察官は、直ちにその旨を当該入国審査官に通知しなければならない。

2 前条第四項から第七項までの規定は、前項の場合に準用する。

(収容令書)

第七条 収容令書を発付する場合においては、あらかじめ当該入国審査官が地方審査会に収容を必要とする充分な理由を明示してその承認を得なければならない。

2 収容令書には、その発付を受ける者の氏名、住所地、身分、理由となる事実、収容すべき場所、発付の年月日その他外務省令で定める事項を記載し、且つ、入国審査官がこれに記名押印しなければならない。

3 収容令書によつて収容することができる期間は、十四日以内とする。但し、地方審査会の承認を得た場合においては、十四日以内において、その期間を更新することができる。

4 前項に規定する収容期間は、第十三条第四項若しくは第十四条に規定する差もどしに基く審理又は不可抗力に因る事由のために必要な最少限度の期間を限つて更に延長することを妨げない。

5 収容令書によつて収容することができる場所は、入国者収容所、収容場その他長官又はその委任を受けた者が指定する適当な場所とする。

(退去強制令書の発付)

第八条 入国審査官は、収容令書を発付した場合においては、その発付を受けた者が左の各号の一に該当するかどうかをすみやかに審査しなければならない。

一 登録令第十六条各号の一に該当する者であること。
二 臨時措置令第五条の適用を受ける者であること。

2 入国審査官は、収容令書の発付を受けた者が前項各号の一に該当する場合においては、その者に対し退去強制令書を発付することができる。

3 入国審査官は、退去強制令書を発付した場合においては、すみやかにその旨を収容令書の発付を受けた者に通知するとともに、あわせて長官に報告しなければならない。

4 前条第二項の規定は、退去強制令書について準用する。

(地方審査会に対する不服の申立)

第九条 前条第二項の規定による退去強制令書の発付を受けた者は、その処分に不服がある場合においては、その通知を受けた日から三日以内に地方審査会に対し書面により不服の申立をすることができる。この場合においては、その申立書の写一通を当該入国審査官に提出しなければならない。

2 前項に規定する期間内に不服の申立がない場合においては、入国審査官は、長官に対し第十五条の規定による退去強制令書の執行の承認を求めなければならない。

(地方審査会による口頭審理)

第十条 地方審査会は、前条第一項の規定による不服の申立を受理した場合においては、その申立をした者に対し、日時及び場所を期日の二日前までに通知してすみやかに口頭審理を行わなければならない。

2 前項の口頭審理にあたつては、不服の申立をした者は、一人の代理人、知人又は親族の出頭を求めて自己に有利な証拠を提出し、及び自己に不利益な証人を尋問することができる。

3 地方審査会は、証人、鑑定人その他の者の出頭を命じ、又は証拠を所持する者に証拠の提出を命ずることができる。この場合においては、民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第二百七十一条から第二百七十六条まで、第二百八十条から第二百八十二条まで及び第二百八十五条から第二百九十二条までの規定は証人の尋問について、同法第三百一条から第三百十条までの規定は鑑定人の鑑定について、同法第三百十一条から第三百十七条まで、第三百十九条から第三百三十条まで、第三百三十三条、第三百三十四条及び第三百三十五条第一項の規定は証拠の提出について、それぞれ準用する。

(地方審査会の判定)

第十一条 地方審査会は、口頭審理をした場合においては、すみやかに不服の申立に理由があるかどうかを判定してその結果を長官に報告するとともに、その判定書の写一通を不服の申立をした者及び当該入国審査官に送付しなければならない。この場合において、入国審査官に対しては、口頭審理の記録の写二部をあわせて送付しなければならない。

(中央審査会に対する不服の申立)

第十二条 前条の規定による地方審査会の判定に不服がある退去強制令書の発付を受けた者又はその判定に不服がある入国審査官は、同条の規定による通知又は送付を受けた日から三日以内に、中央審査会に対し、書面により不服の申立をすることができる。この場合においては、その申立書の写一通を長官に提出するものとし、退去強制令書の発付を受けた者が不服を申し立てるときは、その写一通をあわせて当該入国審査官にも提出しなければならない。

2 前項の規定による不服の申立が行われなかつた場合においては、入国審査官は、長官に対し第十五条の規定による退去強制令書の執行の承認を求め、又は退去強制令書の発付を受けた者を即時放免しなければならない。

(中央審査会の判定)

第十三条 入国審査官は、前条の規定により中央審査会に不服の申立があった場合においては、退去強制令書及び地方審査会の判定書の写並びに外務省令で定める関係書類を中央審査会に提出しなければならない。

2 中央審査会は、事件に関係のあるすべての書類及び不服の申立書をすみやかに審査しなければならない。但し、退去強制令書の発付を受けた者又は入国審査官の要求があつた場合において特に必要があると認めるときは、退去強制令書の発付を受けた者の一人の代理人、知人若しくは親族又は出入国管理庁の一人の代表者による口頭審理を許すことができる。この場合においては、中央審査会の定めるところにより、書面による事実の主張及び証拠の提出をあわせてさせることができる。

3 中央審査会は、不服の申立を受理した場合においては、すみやかに審査を行い、不服の申立に理由があるかどうかを判定して、その結果を長官に報告するとともに、その判定書の写一通を退去強制令書の発付を受けた者及び当該入国審査官に送付しなければならない。

4 中央審査会は、新たに証拠が発見された場合において必要があると認めるときは、これに基いて口頭審理を行わせるために事件を地方審査会に差しもどすことができる。

(中央審査会の判定に対する長官の承認及び不承認)

第十四条 長官は、前条第三項の報告を受けた場合においては、中央審査会の判定を承認するかどうかをすみやかに決定し、その結果に基き、事件の差もどし又は退去強制令書の発付を受けた者の即時放免若しくは退去強制を命じなければならない。この場合において、長官は、中央審査会の判定を承認しない旨の決定をしたときは、その理由を決定書に記載しなければならない。

(退去強制令書の執行の承認)

第十五条 退去強制令書は、その執行に対する長官の承認があるまでは、執行することができない。

2 入国審査官は、前項の長官の承認があつたときは、すみやかに入国警備官に退去強制令書の執行を命じなければならない。

3 入国審査官は、第三条第二号又は第三号に掲げる者に対して退去強制令書を発付した場合においては、運送業者又はその代理人に対し第二十一条の規定によりこれらの者がすべき事項を通知しなければならない。

(退去強制令書の執行)

第十六条 退去強制令書は、陸上においては入国警備官が、海上においては海上保安官が、それぞれ執行する。

2 警察官又は警察吏員は、入国審査官が入国警備官が足りないため必要と認める場合においては、退去強制令書の執行をすることができる。

3 当該職員は、退去強制令書を執行する場合においては、退去強制令書の執行を受ける者に退去強制令書又はその写を示してその者を入国者収容所に収容し、又は送還しなければならない。但し、第三条第二号又は第三号に掲げる者は、第二十一条の規定による送還のために運送業者又はその代理人に引き渡すことができる。

4 退去強制令書により入国者収容所に収容された者は、なるべくすみやかにその者の本国に送還されなければならない。但し、第二十条第一項に規定する出訴期限を経過するまで及び同項の訴の提起があつた場合においてその訴訟が終るまでは、送還することができない。

5 前項に規定する訴を提起した者には、収容所の保安上支障がない範囲内において、訴訟の準備をするために代理人その他の者と面会する機会が与えられなければならない。

(仮放免)

第十七条 収容令書又は退去強制令書の執行を受けて収容されている者又はその者の代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、その者の仮放免を請求することができる。

第十八条 入国審査官又は入国者収容所所長は、前条の規定による請求があつた場合においては、外務省令で定めるところにより、罪の性質、収容令書又は退去強制令書の執行を受けている者の情状及び仮放免の請求の理由となる証拠並びにその者の性格及び資産等を考慮し、且つ、その者の出頭を保障するに足りる充分で且つ適当な保証金額を定め、及びその者の住居を制限する等その適当と認める条件を附してその者を仮放免することができる。

(仮放免の取消)

第十九条 仮放免された者が逃亡し、逃亡すると疑うに足りる相当な理由があり、召喚を受け正当な理由がなくて出頭せず、又は住居の制限その他の仮放免に附された条件に違反した場合においては、入国審査官又は入国者収容所所長は、決定をもつて仮放免を取り消すことができる。

2 入国審査官又は入国者収容所所長は、仮放免を取り消した場合においては、決定をもつて保証金の全部又は一部を没取することができる。

3 入国警備官は、仮放免の取消の決定があつた場合においては、入国審査官又は入国者収容所所長の指揮を受けて再収容書又はその写を仮放免を取り消された者に示して、その者を収容しなければならない。

4 当該職員は、再収容書又はその写を所持しない場合においても急速を要するときは、前項の規定にかかわらず、仮放免の取消があつた旨を告げて仮放免を取り消された者を収容することができる。この場合においては、当該職員は、なるべくすみやかに再収容書又はその写をその者に示さなければならない。

(訴訟)

第二十条 退去強制令書に対する取消の訴は、その退去強制令書又はその写を示された日から十四日以内に、その者の収容地を管轄する地方裁判所に、退去強制令書を発付した入国審査官を被告として提起しなければならない。

2 入国審査官は、訴状の送達があつた日から七日以内にその訴を提起した者に係るすべての審査(口頭審理を含む。)の記録又はその写を当該地方裁判所に送付しなければならない。

3 裁判所は、必要がある場合に限り、当該事件に係るすべての事実の再審理を行い、且つ、訴を提起した者又は入国審査官の代理人による事実の主張又は証拠の提出を適宜に許すものとする。

4 長官がその執行を承認した退去強制令書は、退去強制の手続(口頭審理を含む。)が公正に行われたものであり、事実の認定が充分な証拠によつて裏付けられており、且つ、法令の規定の違反がないと裁判所が判断した場合においては、裁判所を拘束する。裁判所が、これと異なる判断をした場合においては、裁判所は退去強制令書を取り消さなければならない。この場合においては、当該退去強制の手続のうち再審理すべき点を指示して事件を当該行政庁に差しもどすことができる。この場合においては、新たな処分が確定するまでは、第一項の訴を提起した者を収容することを命じなければならない。

5 第一項に規定する地方裁判所の判決に対しては、控訴をすることはできないが五日以内に最高裁判所に上告することができる。最高裁判所は、上告を受理した場合においては、必要と認めるときは、当該地方裁判所に対し、当該事件の記録の全部又は一部の提出を命じることができる。

6 裁判所がした退去強制令書を取り消す旨の判決が確定した場合においては、退去強制令書の執行を受けている者は、直ちに放免されなければならない。

7 退去強制令書を適法とする判決が確定した場合においては、その執行を受けている者は、できるだけすみやかに送還されなければならない。

8 前各項に規定するものを除く外、第一項の訴訟については、行政事件訴訟特例法(昭和二十三年法律第八十一号)の定めるところによる。

(運送業者又はその代理人による不法入国者の送還及び生活費用の負担)

第二十一条 第四条に規定する運送業者又はその代理人は、入国審査官から第十五条第三項の通知を受けた場合においては、第三条第二号又は第三号に掲げる者を本邦外に送還し、及び送還の時までの間におけるこれらの者の生活費用を負担しなければならない。

(財産の処分)

第二十二条 登録令第三条又は臨時措置令第一条の規定に違反して収容令書又は退去強制令書の発付を受けた者が収容された場合においては、入国審査官は、その者が収容されている間は、外務省令で定めるところにより、収容所内で私用に供するものを除き、保管料を徴し、且つ、保管証を交付して、その者の占有する者[1]を保管しなければならない。この場合において、保管に適しないものがあるときは、換価処分をしてその代金を保管することができる。

2 前項の場合において、不法入国に使用されたすべての兵器、軍用物件、軍用装備、軍用資材、飛行機又は船舶があるときは、当該職員は、これらのすべてを保管するとともに、すみやかにその旨をもよりの連合国軍の機関に報告しなければならない。この場合において、保管に適しないものがあるときは、連合国軍の機関の指示に従い、これを連合国軍の機関に引き渡し、換価処分してその代金を保管し、又は没取することができる。

(第二十一条の規定に違反した運送業者又はその代理人の営業許可の取消)

第二十三条 第二十一条の規定によつてすべき送還又は費用の負担を怠つた運送業者又はその代理人の本邦における営業の許可は、取り消すことができるものとする。

(罰則)

第二十四条 収容令書又は退去強制令書によつて身柄を拘束されている者が逃走し、又は逃走を企てたときは、一年以下の懲役に処する。

第二十五条 第四条に規定する運送業者又はその代理人が同条の規定による報告をせず、又は防止をしなかつたときは、二十万円以下の罰金に処する。

第二十六条 第十条第三項の規定に違反して正当な理由がなくて出頭せず、証言若しくは鑑定を拒否し、又は虚偽の証言若しくは鑑定をした者は、三万円以下の罰金に処する。

(細目の委任)

第二十七条 この政令の規定を実施するために必要な事項は、外務省令で定める。

附 則

1 この政令は、公布の日から施行する。但し、第五条から第二十条まで、第二十二条、第二十四条、第二十六条、附則第二項中登録令第十六条から第十八条までに関する部分、附則第三項中臨時措置令第五条及び第六条に関する部分並びに附則第四項中出入国管理庁設置令附則第三項に関する部分を除く同令に関する部分は、昭和二十六年四月一日から施行する。

2 外国人登録令の一部を次のように改正する。

第三条第二項の次に次の一項を加える。
不法入国者等退去強制手続令(昭和二十六年政令第三十三号)第三条第二号から第四号までに掲げる外国人は、前項の規定の適用については、連合国最高司令官の承認を受けないで本邦に入つた外国人とする。
第十六条第一項中「出入国管理庁長官は、左の各号の一に該当する外国人に対し、退去を強制することができる。」を「入国審査官は、左の各号の一に該当する外国人に対し、不法入国者等退去強制手続令に規定する手続により、退去を強制することができる。」に改め、同条第二項を削る。
第十七条及び第十八条を削る。

3 北緯三十度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令の一部を次のように改正する。

第一条に次の一項を加える。
2 前項の規定の適用については、同項に掲げるもの及び不法入国者等退去強制手続令(昭和二十六年政令第三十三号)第三条第二号から第四号までに掲げる者は、連合国最高司令官の許可を受けないで、別表に定める地域に渡航した者とする。
第五条を次のように改める。
第五条 入国審査官は、第一条の規定に違反した者に対し、不法入国者等退去強制手続令に規定する手続により、退去を強制することができる。
第六条を削る。

4 出入国管理庁設置令の一部を次のように改正する。

第三条を次のように改める。
第三条 出入国管理庁は、出入国の管理に関する政令(昭和二十四年政令第二百九十九号)による出入国の管理、外国人登録令(昭和二十二年勅令第二百七号)による外国人の登録並びに同令及び北緯三十度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令(昭和二十五年政令第二百二十七号)による退去強制に関する事務を行うことを任務とする。
第四条第十一号中「(昭和二十四年政令第二百九十九号)」を削る。
第四条第十二号を次のように改め、同条第十三号を削り、第十四号を第十三号とする。
十二 不法入国者等退去強制手続令(昭和二十六年政令第三十三号)による収容、退去強制その他の処分をすること。
第五条第三項第二号を次のように改める。
二 不法入国者等退去強制手続令による収容令書及び退去強制令書(以下それぞれ「収容令書」及び「退去強制令書」という。)の発付に関すること。
同条同項第三号中「退去強制令書」を「収容令書及び退去強制令書」に改める。
第六条を次のように改める。
(出入国監理官)
第六条 税関に、出入国監理官を置く。
2 出入国監理官は、大蔵大臣が長官と協議して任命する税関職員とする。
3 出入国監理官は、出入国に際し、権限のある公的機関が発行する旅券又はこれに代るべき書類に対する証印、出国の許可その他出入国の管理に関する法令の規定によりその権限に属せしめられた事務を行う。
4 長官は、出入国監理官の行う事務について税関長を指揮監督し、税関長は、長官に対しその執行の責任を負うものとする。
5 出入国監理官が置かれる税関は、大蔵大臣が長官と協議して定める。
第七条第二項及び第三項、第八条第二項並びに第十条第二項第二号中「退去強制令書」を「収容令書及び退去強制令書」に改める。
第十一条から第十四条までを次のように改める。
(附属機関)
第十一条 出入国管理庁に、左の附属機関を置く。
中央審査会
地方審査会
入国者収容所
(中央審査会)
第十二条 中央審査会は、不法入国者等退去強制手続令第十三条に規定する判定を行う機関とする。
2 中央審査会は、前項に規定する事務の外、長官の諮問に応じて不法入国者等退去強制手続令に規定する事項について調査審議することができる。
3 中央審査会は、東京都に置く。
4 中央審査会の組織及び運営は、政令で定める。
(地方審査会)
第十三条 地方審査会は、不法入国者等退去強制手続令第七条、第十条及び第十一条に規定する事項について、それぞれ承認、口頭審理及び判定を行う機関とする。
2 地方審査会は、第十五条第二項の表に定める出張所の所在地に置く。
3 地方審査会の組織及び運営は、政令で定める。
(入国者収容所)
第十四条 入国者収容所(以下「収容所」という。)は、退去強制令書又は収容令書の執行を受ける者を一時収容する機関とする。
2 収容所に、所長及び所員を置く。所長は、長官の指揮監督を受け、所務を掌理し、所員を指揮監督する。
  所員は、所長の命を受けて収容所の維持管理に関する事務に従事する。
3 収容所の名称及び位置は、左の通りとする。
大村入国者収容所 長崎県大村市
横浜入国者収容所 神奈川県横浜市
4 前三項に規定するものを除く外、収容所の内部組織、被収容者の処遇、収容所における警備その他収容所に関し必要な事項は、長官が定める。
第十五条第二項の表を次のように改める。
名称 位置 管轄区域
仙台出張所 仙台市 北海道 宮城県 福島県 岩手県 青森県 山形県 秋田県
東京出張所 東京都 東京都 新潟県 埼玉県 群馬県 千葉県 茨城県 栃木県 静岡県 山梨県 長野県
横浜出張所 横浜市 神奈川県
名古屋出張所 名古屋市 愛知県 三重県 岐阜県 福井県 石川県 富山県
神戸出張所 神戸市 大阪府 京都府 兵庫県 奈良県 滋賀県 和歌山県
高松出張所 高松市 香川県 愛媛県 徳島県 高知県
松江出張所 松江市 鳥取県 島根県
下関出張所 下関市 広島県 岡山県 山口県
福岡出張所 福岡市 福岡県 佐賀県 熊本県 大分県
大村出張所 大村市 長崎県(但し、対馬及び壱岐は、福岡出張所の管轄とする。)
鹿児島出張所 鹿児島市 宮崎県 鹿児島県
第十五条第三項を第五項とし、同条第二項の次に次の二項を加える。
3 出張所には、口頭審理を行うべき場所及び収容令書の執行を受ける者を収容する収容場を設けるものとし、収容された者には、収容場の保安上支障がない範囲内において、その者の代理人、知人又は親族の一人に面会して、口頭審理又は訴訟の準備をするための機会が与えられなければならない。
4 前項に規定する収容場における収容者の処遇、警備その他収容場に関し必要な事項は、長官が定める。
附則第三項中「昭和二十六年二月二十八日までの間で政令で定める日まで」を「昭和二十六年二月二十八日まで」に改める。
内閣総理大臣 吉田  茂
法 務 総 裁 大橋 武夫
外 務 大 臣 吉田  茂
大 蔵 大 臣 池田 勇人
運 輸 大 臣 山崎  猛

備考

[編集]
  1. 対象が財産であることから「占有する者」でなく「占有する物」とされるべきであるが、本政令廃止に至るまで正誤訂正は行われなかった。

改廃経過

[編集]
  • 不法入国者等退去強制手続令の一部を改正する政令(昭和26年政令第75号)(ポツダム政令): 附則第1項但書中「但し、」を「但し、附則第四項中出入国管理庁設置令第十四条第三項及び同令第十五条第二項の改正規定は、昭和二十六年四月一日から、」に、「附則第四項中出入国管理庁設置令附則第三項に関する部分」を「附則第四項中出入国管理庁設置令第十四条第三項、第十五条第二項及び同令附則第三項に関する部分」に、「昭和二十六年四月一日」を「昭和二十六年五月十六日」に改める(昭和26年3月31日施行)。
  • 不法入国者等退去強制手続令の一部を改正する政令(昭和26年政令第155号)(ポツダム政令): 附則第1項中「昭和二十六年五月十六日」を「政令で定める日」に改める(昭和26年5月15日施行)。
  • 出入国管理令(昭和26年政令第319号)(ポツダム政令): 廃止(昭和26年11月1日施行)

施行経過

[編集]

このポツダム政令の施行経過は次のとおり。

施行期日 対象条項
公布の日
(昭和26年2月28日)
第1条から第4条まで
第21条
第23条
第25条
第27条
附則第1項
附則第2項中外国人登録令第3条の改正規定
附則第3項中北緯三十度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令第1条の改正規定
附則第4項中出入国管理庁設置令附則第3項の改正規定
昭和26年4月1日 附則第4項中出入国管理庁設置令第14条第3項及び第15条第2項の改正規定
政令で定める日
(未施行のまま廃止)
第5条から第20条まで
第22条
第24条
第26条
附則第2項中外国人登録令第16条から第18条までの改正規定
附則第3項中北緯三十度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令第5条及び第6条の改正規定
附則第4項中出入国管理庁設置令第3条から第8条まで及び第10条から第15条まで(第14条第3項及び第15条第2項を除く。)の改正規定

関連項目

[編集]

この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 法律命令及官公󠄁文󠄁書
  2. 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
  3. 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁

この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。