ヨハネ聖福音書1 (ラゲ訳)

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<聖書<我主イエズスキリストの新約聖書

『公敎宣敎師ラゲ譯 我主イエズスキリストの新約聖書』公敎會、

1910年発行

〔ローマ・カトリック訳〕

ラゲ訳新約聖書エミール・ラゲ(Emile Raguet,MEP)

ヨハネ聖福音書-1

第1章[編集]

1元始はじめ御言みことばあり、御言みことばかみ御許おんもとり、御言みことばかみにてありたり。 2これ元始はじめかみ御許おんもとありたるものにして、 3萬物ばんぶつこれりてれり、りしもののひとつも、これらずしてりたるはあらず。 4これがうちに生命せいめいありて、生命せいめいまた人間にんげんひかりたりしが、 5ひかりやみるといへども、やみこれさとらざりき。 6かみよりつかはされて、をヨハネとへるひとありしが、 7そのきたりしは證明しようめいためにして、ひかり證明しようめいし、すべてのひとをしておのれりてしんぜしめんためなりき。 8かれひかりあらずして、ひかり證明しようめいすべきものたりしなり。 9[御言みことばこそ、]この出來いできたすべてのひとらすまことひかりなりけれ。 10かつり、またこれりてりたれども、これらず、 11おのかたきたりしも、そのやからこれけざりき。 12れどこれけし人々ひとびとにはおのおのかみとなるべき権能けんのうさづけたり。これすなはそのしんずるもの13血統ちすぢらず、にくらず、ひとらず、かみりてうまたてまつりたるものなり。 14かく御言みことばにくりて、われうち宿やどたまへり、われその光榮くわうえいたてまつりしが、ちちよりきたれる獨子ひとりごごと光榮くわうえいなりき、すなは恩寵おんちよう眞理しんりとにたまひしなり。 15ヨハネはかれきて證明しようめいし、よばはりていはく、われよりのちきたるべきひとは、われさきだちてそんしたるがゆゑわれよりさきにせられたり、とひてかつ指示さししめししはこれなり、と。 16かくわれみなその充満じゆうまんせるところよりさづかりて、恩寵おんちよう恩寵おんちようくはへられたり。 17けだし律法りつぱふはモイゼをもつあたへられたるも、恩寵おんちよう眞理しんりとはイエズス、キリストをもつりたるなり。 18たれかつかみたてまつりしひとはあらず、ちちおんふところましま獨子ひとりごみづかあらはたまひしなり。 19そもそもヨハネの證明しようめいつぎごとし。ユデアじんがエルザレムより司祭しさいおよびレヴィじんかれつかはして、なんぢたれなるぞ、とはしめしとき20かれ宣言せんげんせしが、いなことなくして、われキリストにあらずと宣言せんげんせり。 21彼等かれらしからばなんぞや、なんぢはエリアなるか、とひしに、かれしからずとひ、[かの]預言よげんしやなるか、とひしに、いなこたへたり。 22かく彼等かれらなんぢたれなるぞ、われつかはしし人々ひとびとこたふることしめよ、みづかおのれなんしようするぞ、とひしかば、 23かれひけるは、われ預言よげんしやイザヤのひしごとく、「なんぢしゆみちたひらにせよ」とよばはるものこゑなり、と。 24このつかはされし人々ひとびとはファリザイのともがらなりしが、 25またヨハネにひて、しからばなんぢはキリストにもあらず、エリアにもあらず、[かの]預言よげんしやにもあらざるに、なんせんするや、とひしに 26ヨハネこたへてひけるは、われみづにてせんすれども、なんぢうちに、なんぢらざる一個ひとりひとてり、 27これわがのちきたるべきものわれよりさきにせられたるものにして、われそのはきものひもくにだもへず、と。 28このことは、ヨハネのせんしつつありしヨルダン[がは]の彼方かなた、ベタニアにてりき。 29明日あくるひヨハネ、イエズスのおのれきたたまふをひけるは、かみこひつじを、つみのぞたまものを。 30かつて、われよりのちきたものあり、われよりさきそんしたるがゆゑわれよりさきにせられたり、とひて指示さししめししはこれなり。 31われもとこれらざりしかど、みづにてせんしつつきたれるは、かれをイスラエルにおいあらはれしめんためなり、と。 32ヨハネまた證明しようめいしてひけるは、われは[せい]れいはとごとてんよりくだりてかれうへとどまたまふをたり。 33われもとかれらざりしかど、われつかはしてみづにてせんせしめたまへえるもの、われのたまひけらく、なんぢ[せい]れいくだりてひとうへとどまたまふをば、これ聖霊せいれいにてせんするものなる、と。 34かくわれこれ目撃もくげきして、かれかみ御子おんこたること證明しようめいしたるなり、と。 35翌日よくじつヨハネ又弟子またでし兩人ふたりともて、 36イエズスのあゆたまふをかみこひつじを、とひしかば、 37二人ふたり弟子でしかたるをきて、イエズスにしたがひきしに、 38イエズス回顧ふりかへりてそのしたがへるをこれのたまひけるは、なんぢなにもとむるぞ、と。彼等かれら、ラビ――やくせばよ――何處いづこたまふぞ、とひしかば、 39イエズス、よ、とのたまへり、彼等かれらきてイエズスのたまところその其處そことどまれり。とき四時よじごろなりき。 40シモンペトロの兄弟きやうだいアンデレアは、ヨハネよりきてイエズスにしたがひし兩人ふたりその一人ひとりなりしが、 41まづその兄弟きやうだいシモンにいでひてこれひけるは、われメッシア――やくせばキリスト――にへり、と。 42かくこれをイエズスのもとつれきたりしに、イエズスこれ熟視みつめてのたまひけるは、なんぢはヨナのシモンなり、ケファ――やくせばペトロ――となづけられん、と。 43次日つぎのひガリレアにかんとして、フィリッポにたまひしかば、イエズス、われしたがへ、とのたまひしが、 44フィリッポは、アンデレアとペトロとの故郷こきやうなる、ベッサイダのひとなりき。 45フィリッポナタナエルにひてひけるは、われモイゼの律法りつぱふにも預言よげんしやたちにもかきしるされしひとへり、すなはちナザレトのヨゼフのイエズスなり、と。 46ナタナエル、何等なんらものかナザレトよりづるをんや、とひしかば、フィリッポ、よ、とへり。 47イエズスナタナエルのおのれきたるをたまひ、これして、これ野心やしんなきイスラエルじんなり、とのたまへば、 48ナタナエル、如何いかにしてわれたまふぞ、とひしに、イエズスこたへてのたまひけるは、フィリッポがなんぢまへに、われなんぢ無花果いちじくのしたるをたり、と。 49ナタナエルこたへて、ラビなんぢかみ御子おんこなり、イスラエルのわうなり、とひしかば、 50イエズスこたへてのたまひけるは、なんぢしんじたるは、われなんぢ無花果いちじくのしたるをたりとげしによりてなり。なんぢこれよりもさらおほいなることん、と。 51またこれのたまひけるは、まことまことなんぢぐ、なんぢてんひらけてかみ使つかひたちひとうへのぼりくだりするをるべし、と。

第2章[編集]

1三日みつかにガリレアのカナに婚筵こんえんありて、イエズスのはは其處そこれるに、 2イエズスも弟子でしたちともまぬかれたまへり。 3さけきければ、ははイエズスにむかひ、彼等かれらさけなし、とひしに、 4イエズス、婦人ふじんよ、われなんぢとになにかある、わがときいまきたらずとのたまひしかば、 5はは給仕きふじむかひて、かれなんぢところは、なににもあれこれせ、といひけり。 6てユデアじんきよめ習慣ならはししたがひて、其處そこに二三いりいしがめ六個むつそなへありしが、 7イエズス給仕きふじに、みづかめてよ、とのたまひければ、彼等かれらくちまでたししに、 8イエズスまたいまくみりて筵司ふるまひつかさもちけ、とのたまひしかばすなはもちけり。 9筵司ふるまひつかささけくわしたるみづむるや、給仕きふじそのりてきたところれどもおのれこれらざれば、新郎はなむこび、 10これむかひて、たれまづさけいだして、人々ひとびとへるにいたりておとれるものいだすに、なんぢよきさけいままでとりけるよ、とへり。 11これイエズスの奇蹟きせきはじめにして、これをガリレアのカナにおこなひ、おの光榮くわうえいあらはたまひしかば、弟子でしたちこれ信仰しんかうせり。 12そののちイエズス、はは兄弟きやうだいおよ弟子でしたちともに、カファルナウムにくだたまひしが、みな其處そことどまことひさしからざりき。 13ユデアじん過越すぎこしのまつりちかづきければ、イエズスエルザレムにのぼり、 14[しん]殿でんうちにてうしひつじ鴿はと人々ひとびとおよせる兩替りやうがえとうたまひしかば、 15なわもつむちめきたるものつくり、彼等かれらことごとく[しん]殿でんより逐出おひいだし、ひつじうしをも逐出おひいだし、兩替りやうがえかねまきちらしてそのつくゑくつがへし、 16鴿はと人々ひとびとむかひて、このものどもとり退けよ、わがちちいへ商買あきなひいへすな、とのたまへり。 17弟子でしたちは、かきしるして「なんぢいへたいする熱心ねつしんわれくひつくせり」とあるをおもひいだせり。 18かくてユデアじんこたへてイエズスにひけるは、なんぢ如何いかなるしるしあらわしてこれことすぞ、と。 19イエズスこたへて、なんぢこの[しん]殿でんこぼて、われ三日みつかうちこれおこさん、とのたまひしかば、 20ユデアじんひけるは、この[しん]殿でんは、つくるに四十六としえうせしに、なんぢ三日みつかうちこれおこすべきか、と。 21ただしイエズスは、おのからだの[しん]殿でんしてのたまひしなり。 22れば死者ししやうちより復活ふくくわつたまへるのち弟子でしたちこののたまひたりしことおもひいだして、聖書せいしよとイエズスののたまひし御言おんことばとをしんぜり。 23イエズス過越すぎこし祭日さいじつあたりてエルザレムにたまあひだおほくのひとそのたまへる奇蹟きせきて、御名みなしんじたり。 24れどイエズスは、これうちまかたまはざりき、みづかすべてのひとり、 25またひとこころことたまへば、ひとつき他人たにん證明しようめいえうたまはざるゆゑなり。

第3章[編集]

1ここにファリザイじんうちにニコデモとばれて、ユデアじんかしらだちたるものありしが、 2よるイエズスのもといたりてひけるは、ラビ、われなんぢかみよりきたりたる教師けうしなることれり、何人なにびとも、かみこれともいますにあらざれば、なんぢせるごと奇蹟きせきおこなざればなり。 3イエズスこたへてのたまひけるは、まことまことなんぢぐ、ひとあらたうまるるにあらずば、かみくにることあたはず。 4ニコデモひけるは、ひとすでいたるにいかでかうまるることべき、あにふたたはは胎内たいないいりあらたうまるるをんや。 5イエズスこたたまひけるは、まことまことなんぢぐ、ひとみづれいとよりあらたうまるるにあらずば、かみくにことあたはず。 6にくよりうまれたるものにくなり、れいよりうまれたるものれいなり。 7なんぢふたたうまれざるべからずとなんぢげたるをあやしむことなかれ。 8かぜおのままなるところく、なんぢそのこゑくといへども、何處いづこよりきたりて何處いづこくかをらず、すべれいよりうまれたるものまたしかり、と。 9ニコデモこたへて、このこと如何いかにしてかべき、とひしかば、 10イエズスこたへてのたまひけるは、なんぢはイスラエルにおいたるものなるに、これことらざるか。 11まことまことなんぢぐ、われれるところかたり、たるところしようす、れどなんぢその證言しようげんけざるなり。 12地上ちじやうことかたりてすらなんぢしんぜざるものを、天上てんじやうことかたるともいかでかこれしんぜんや。 13てんよりくだりたるもの、すなはてんひとほかは、たれてんのぼりしものなし。 14またモイゼが荒野あれのにてへびげしごとく、ひとかならげらるべし、 15これすべこれ信仰しんかうするひとの、ほろびずして永遠えいえん生命せいめいためなり。 16けだしかみこのあいたまへることは、おん獨子ひとりごたまほどにして、これすべこれ信仰しんかうするひとほろびずして永遠えいえん生命せいめいためなり。 17すなはかみ御子おんここのつかはしたまひしは、審判しんぱんせしめんためあらず、かれりてすくはれんためなり。 18かれ信仰しんかうするひと審判しんぱんせられず、しんぜざるひとすで審判しんぱんせられたり、かみおん獨子ひとりご御名みなしんぜざればなり。 19審判しんぱんとはこれなり、すなはひかりすできたりたるに、ひとおのれおこなひあしために、ひかりよりもむしろやみあいしたるなり。 20すべあくひとひかりにくみ、おのおこなひめられじとてひかりきたらず。 21れど眞理しんりおこなひとは、おのおこなひあらはれんためひかりきたる、かみうちおこなはれたればなり、と。 22そののちイエズス弟子でしたちとユデア地方ちはういたり、ともとどまりてせんたまひしが、 23ヨハネもサリムにちかきエンノンにみづおほかりければ、其處そこにてせんしつつあり、人々ひとびときたりてせんせられたり。 24すなはちヨハネいま監獄かんごくれられざりしなり。 25しかるにヨハネの弟子でしたちとユデアじんとのあひだに、洗禮せんれいきて議論ぎろんおこりしかば、 26彼等かれらヨハネのもときたりてひけるは、ラビ、ヨルダン[がは]の彼方かなたなんぢともりしときなんぢより證明しようめいせられたるかのひとは、いまみづかせんして、ひとみなこれおもむくなり、と。 27ヨハネこたへてひけるは、ひとてんよりたまはりたるにあらずば、なにものをもみづかくるあたはず、 28なんぢみづかわれきてしようするごとく、われかつて、われはキリストにあらず、ただそのさきつかはされたるのみ、とげたりき。 29新婦はなよめてるひとこそ新郎はなむこなれ。新郎はなむこともとしてちてこれひとは、新郎はなむここゑためよろこびによろこぶ。ればわれこのよろこび円満えんまんなり。 30かれさかゆべくわれおとろふべし。 31うへよりきたれるひと衆人しゆうじんかみたり、よりのひとぞくして地上ちじやうことかたる、てんよりきたれるひと衆人しゆうじんかみたるなり。 32かれそのみづかかつきしところしようすといへども、一人ひとりその證言しようげんけず、 33その證言しようげんけたるひとは、かみ眞實しんじつにてましまことしよういんせるものなり。 34すなはかみつかはしたまひしものかみ御言おんことばかたる、かみは[せい]れいたまふに制限せいげんなければなり。 35ちち御子おんこあいして萬物ばんぶつそのたまへり。 36御子おんこ信仰しんかうするひと永遠えいえん生命せいめいいうす。れど御子おんこしんぜざるひと生命せいめいざるべく、かみいかりかえつかれうへとどまる、と。

第4章[編集]

1ときにイエズス、おの弟子でしつくひとせんすること、ヨハネよりもおほよしの、ファリザイじんみみりしをたまひしかば、 2――ただしせんせるはイエズスにあらずして、弟子でしたちなりき―― 3ユデアをりてふたたびガリレアにたまへり。 4しかるにサマリアをとほらざるをざりしければ、 5ヤコブがそのヨゼフにあたへし土地とちちかき、サマリアのシカルとへるまちいたたまひしが、 6此處ここにヤコブのゐどありけるに、イエズスたびつかれて、そのままゐどうへたまへり、ときは十二ころなりき。 7ここにサマリアの一人ひとりをんなみづみにきたりしかば、イエズスこれむかひて、われませよ、とのたまへり。 8これ弟子でしたち食物しょくもつはんとてまちきたればなり。 9そのときサマリアのをんなひけるは、なんぢはユデアじんなるに、なんぞサマリアのをんななるわれ飲物のみものもとむるや、と。これユデアじんはサマリアじんまじはらざるゆゑなり。 10イエズスこたへてのたまひけるは、なんぢもしかみたまものり、またわれませよとなんぢへるものたれなるかをらば、かならかれもとめ、かれけるみづなんぢあたへしならん。 11をんなひけるは、きみよ、なんぢものたず、ゐどふかし、るを何處いづこよりしてけるみづてるぞ。 12われちちヤコブこのゐどわれあたへ、みづからもその子等こどもその家畜かちくこれよりみしが、なんぢかれよりまされるものなるか。 13イエズスこたへてのたまひけるは、すべこのみづものまたかわくべし、しかれどもあたへんとするみづもの永遠えいえんかわかず、 14これあたふるみづは、かえつかれおいて、永遠えいえん生命せいめい湧出わきいづるみづみなもととなるべし。 15をんなひけるは、きみよ、かわことなく此處ここみにもきたらざるやう其水そのみづわれあたへよ。 16イエズスのたまひけるは、きてをつとよびきたれ。 17をんなこたへて、われをつとなし、とひしかば、イエズスのたまひけるは、くこそをつとなしとひたれ、 18をつとは五にんまでちたりしに、いまあるはなんぢをつとあらず、なんぢしかひしはまことなり。 19をんなひけるは、きみよ、われるに、なんぢ預言よげんしやなり。 20われ先祖せんぞこのやまにて禮拝れいはいしたるに、なんぢふ、禮拝れいはいすべきところはエルザレムなりと。 21イエズスのたまひけるは、をんなよ、われしんぜよ、なんぢこのやまとなくエルザレムとなく、ちち禮拝れいはいせんとききたるなり。 22なんぢらざるもの禮拝れいはいし、われりたるもの禮拝れいはいす、すくひはユデアじんうちよりづればなり。 23まこと禮拝れいはいしやが、れいじつとをもつちち禮拝れいはいすべきとききたる、いますでそのときなり。ちちも、おのれ禮拝れいはいするひともとたまへばなり。 24かみれいにてましませば、これ禮拝れいはいするひとは、れいじつとをもつ禮拝れいはいせざるべからず、と。 25をんなイエズスにひけるは、われはメッシア(所謂いはゆるキリスト)のきたるをる。ればかれきたらば萬事ばんじわれぐべし。 26イエズスこれのたまひけるは、なんぢかたりつつあるわれすなはそれなり、と。 27やが弟子でしたちきたり、イエズスのをんなかたたまへるをあやしみしかど、たれなにをかもと何故なにゆゑかれかたたまふ、とものなかりき。 28かくをんなその水瓶みづがめのこしてまちき、其處そこなる人々ひとびとむかひ、 29よ、ししことのこらずわれひたるひとを、はキリストならんか、とひしかば、 30彼等かれらまちよりでてイエズスのもときたれり。 31そのひま弟子でしたちイエズスにひて、ラビしよくたまへ、とひしに、 32のたまひけるは、われにはなんぢらざる食物しょくもつしよくすべきあり、と。 33弟子でしたちたれ食物しょくもつもちきたりしぞ、とへるを、 34イエズスのたまひけるは、食物しょくもつは、われつかはしたまひしもの御旨みむねおこなひてそのげふまつたうすることこれなり。 35なんぢは、なほ箇月かげつあひだあり、そののち収穫かりいれとききたる、とふにあらずや。われなんぢぐ、げて田畑たはたよ、最早もはやかりるべくしらみたり。 36ひとむくいけて永遠えいえん生命せいめいいたるべきをさむれば、ひとひとともよろこぶべし。 37ことわざ一人ひとり一人ひとりるとへることここおいまことなり。 38われなんぢつかはして、勞作らうさせざりしものらしめたり。すなは人前ひとまへ勞作らうさして、その勞作らうさしたるところを、なんぢうけぎたるなり、と。 39かのまちにては、かのひとししことのこらずわれげたり、としようしたるをんなことばによりて、おほくのサマリアじんイエズスをしんぜしかば、 40人々ひとびと御許おんもときたりて、此處こことどまたまはんことをへり、れば此處こことどまたまこと二日ふつかにして、 41なほおほくのひと御言おんことばによりてこれ信仰しんかうせり。 42かくかのをんなむかひ、われ最早もはやなんぢかたところによりてしんずるものあらず、すなはみづかかれきて、そのまこと救世主きうせいしゆたることれり、とたり。 43しかるに二日ふつかのち、イエズス其處そこでてガリレアにたまへり。 44預言よげんしやその本國ほんごくたふとばれず、とみづかしようたまひしが、 45ガリレアにいたたまひしに、ガリレアじんは、かつ祭日さいじつにエルザレムにておこなたまひし一切いつさいことたりければ、イエズスを歓迎くわんげいせり、彼等かれら祭日さいじつきてありしなり。 46かくてイエズスふたたび、さきみづさけくわたまひしガリレアのカナにいたたまひしに、一人ひとりわうくわんあり、そのカファルナウムにてければ、 47イエズスユデアよりガリレアにたまふときて、御許おんもといたり、くだりておのいやたまはんことせつねがたり、かのまさなんとすればなり。 48イエズスこれのたまひけるは、なんぢしるし奇蹟きせきとをざればしんぜず、と。 49くわんじんイエズスにむかひて、しゆよ、わがなざるまへくだたまへ、とひしに、 50イエズス、け、なんぢく、とのたまひしかば、このひとイエズスのおのれのたまひし御言おんことばしんじてきたり。 51くだみちに、しもべゆきひて、そのきたるよしげければ、 52その回復くわいふくせし時刻じこくひしに、彼等かれら昨日きのう午後ごごねつれり、とふにぞ、 53ちちあたかもイエズスがなんぢくとおのれのたまひしと同時どうじなりしをり、その一家いつかこぞりて信仰しんかうせり。 54このだい二の奇蹟きせきは、イエズスユデアよりガリレアにいたたまひしときおこなたまひしなり。

第5章[編集]

1そののちユデアじん祭日さいじつありしかば、イエズスエルザレムにのぼたまへり。 2てエルザレムには、ひつじもんほとりに、ヘブレオにてベテスダとへるいけあり、これ付属ふぞくせるいつつらうありて、 3そのうちおびただしき病人びやうにん瞽者めしひ跛者あしなへ*瘋ちゆうぶしやどもしてみづうごくをれり。 4ときとしてしゆ使つかひいけくだり、みづためうごことあり、みづうごきてのち眞先まつさきいけくだりたるもの如何いかなるやまひかかれるもゆればなり。 5ここに卅八年來ねんらいやまひうれふるひとありしが、 6イエズスかれせるをかつそのうれふることひさしきをたまひしかば、なんぢえんことほつするか、とのたまひしに、 7病者びやうしやこたへけるは、きみよ、みづさわときわれいけるるひとなし、ればうちひとわれさきだちてくだるなり、と。 8イエズスこれむかひ、きよ、なんぢ寝台ねだいりてあゆめ、とのたまへば、 9そのひとたちまえ、寝台ねだいりてあゆみたり。その安息日あんそくじつなりければ、 10ユデアじんそのえたるひとむかひ、安息日あんそくじつなり、なんぢ寝台ねだいたづさふべからず、とへるを、 11かれは、われいやししひとなんぢ寝台ねだいりてあゆめとひたるなり、とこたへければ、 12彼等かれらなんぢ寝台ねだいりてあゆめとひしひとたれぞ、とひたれど、 13えたるひとそのたれなるをらざりき、はイエズスすでこの雑踏ざつたふたまひたればなり。 14のちイエズス[しん]殿でんにてかれひ、よ、なんぢいやされたり、またつみおかすことなかれ、おそらくはなほおほいなるわざはひなんぢおこらん、とのたまひけるに、 15かのひときて、おのれいやししはイエズスなりとユデアじんげしかば、 16ユデアじんは、安息日あんそくじつかかことたまふとて、イエズスをたり。 17イエズス、わがちちいまいたるまではたらたまへば、われはたらくなり、とこたたまひければ、 18ユデアじんいよいよイエズスをころさんとはかれり、ただ安息日あんそくじつおかたまふのみならず、かみわがちちしようして、おのれかみひとしきものとしたまへばなり。ればイエズスこたへて彼等かれらのたまひけるは、 19まことまことなんぢぐ、ちちたまことほかに、みづか何事なにごとをもあたはず。けだしすべちちたまことは、またおなじくこれす。 20すなはちちあいして、みづかたまところことごとこれしめたまふ、またさらなんぢおどろくばかり、一層ひとしほおほいなるわざこれしめたまはんとす。 21けだしちち死人しにんおこしてかしたまごとく、またおもものかすなり。 22またちちたれをも審判しんぱんたまはず、審判しんぱんことごとたまひたり。 23これひとみなちちたふとごとたふとばんためなり。たふとばざるひとは、これつかはしたまひしちちたふとばざるものなり。 24まことまことなんぢぐ、わがことばきてわれつかはしたまひしものしんずるひとは、永遠えいえん生命せいめいいうし、かつ審判しんぱんいたらずして、よりせいうつりたるものなり。 25まことまことなんぢぐ、とききたる、いまこそそれよ、すなは死人しにんかみこゑくべく、これきたるひとくべし。 26けだしちち生命せいめいおのれうちいうたまごとく、にもまた生命せいめいおのれうちいうすることさせたまへり。 27かつひとたるにより、審判しんぱんする権能けんのうこれたまひしなり。 28なんぢこれあやしむなかれ、はかうちなるひとことごとかみこゑとききたらんとす。 29かくぜんししひとは、でて生命せいめいいたらんがため復活ふくくわつし、あくおこなひしひとは、審判しんぱんけんがため復活ふくくわつせん。 30われみづからは何事なにごとをもあたはずして、くがまま審判しんぱんす、しかわれ審判しんぱん正當せいたうなり、われおのこころもとめず、われつかはしたまひしもの思召おぼしめしもとむればなり。 31われもしみづかおのれ證明しようめいせば、證明しようめいまことならずとも、 32わがため證明しようめいするものほかにあり、しかしてわれそのわがため證明しようめいまことなるをれり。 33なんぢかつひとをヨハネにつかはししに、かれ眞理しんり證明しようめいせり。 34われひとよりの證明しようめいくるものあらざれども、これかたるはなんぢすくはれんためなり。 35かれかつかがやけるともしびなりしが、なんぢ暫時しばらくそのあかりによりてたのしみしまんとせり。 36しかれどもわれはヨハネのにまさりておほいなる證明しようめいいうす。すなはちちまつたうせよとてわれさづたまひしげふしつつあるげふそのものが、ちちわれつかはしたまひしことしようするなり。 37われつかはしたまひしちちも、またみづかわがためしようたまひしなり、れどなんぢかつおんこゑきしことなく、御姿おんすがたことなく、 38また御言おんことばこころとどむることなし、これそのつかはしたまひしものしんぜざればなり。 39なんぢ聖書せいしよ永遠えいえん生命せいめいいうすとおもひてこれさぐる、彼等かれらまたわれ證明しようめいするものなり、 40れどなんぢ生命せいめいためわがもときたことがへんぜず。 41われ名誉めいよひとよりくるものあらず、 42しかなんぢれり、すなはなんぢこころかみあいすることあらざるなり。 43われわがちちりてきたれるに、なんぢわれけず、もしほかおのれりてきたひとあらば、これをばくるならん。 44たがひ名誉めいよけて、しかゆゐいつかみよりづる名誉めいよもとめざるなんぢなれば、あにしんずることをんや。 45われなんぢちち御前みまへうつたへんとすとおもふことなかれ、なんぢうつたふるものあり、なんぢたのめるモイゼこれなり。 46なんぢもしモイゼをしんずるならば、かならわれをもしんずるならん、かれわがことかきしるしたればなり。 47れどもしかれしよしんぜずば、いかでかわがことばしんぜんや、[とのたまへり]。

第6章[編集]

1そののちイエズスきて、ガリレアのうみすなはちチベリアデのうみ彼方かなたわたたまひしに、 2める人々ひとびとたまへる奇蹟きせきて、群衆ぐんしゆうおびただしくしたがひければ、 3やま引退ひきしりぞきて、弟子でしたちとも其處そこたまへり。 4ときはユデアじん過越すぎこし祭日さいじつちかころなりき。 5イエズスげて、無數むすう群衆ぐんしゆうわがもときたるをたまひしかば、フィリッポにのたまひけるは、この人々ひとびとしよくすべきぱんわれ何處いづこよりふべきか、と。 6のたまへるは、かれこころたまはんためなりき、けだしみづからはそのさんとするところたまへるなり。 7フィリッポこたへけるは、二百デナリオのぱんは、おのおの些少いささかづつをくるも、この人々ひとびとにはらざるなり、と。 8弟子でし一人ひとりなる、シモン、ペトロの兄弟きやうだいアンデレア、イエズスにむかひて、 9ここ一人ひとり童子わらべあり、大麦おほむぎぱんいつつさかなふたつとをてり、れどおびただしきひとうちに、そのなにになるぞ、とひしかば、 10イエズス、人々ひとびとせしめよ、とのたまひ、此處このところくさおほかりければ、男子だんししたるに、そのかず五千にんばかりなりき。 11イエズスやがぱんり、しやたまひてのちせる人々ひとびとわかち、さかなをも彼等かれらほつするにまかせてわかたまへり。 12人々ひとびと満腹まんぷくせしとき、イエズス弟子でしたちむかひ、のこれるくずすたらざるやうひろへ、とのたまひしかば、 13しよくせし人々ひとびとあましたるいつつ大麦おほむぎぱんくずひろひて、十二のかごたせり。 14かく人々ひとびと、イエズスのたまひたる奇蹟きせきて、これこのきたるべき預言よげんしやなる、とひしが、 15イエズス彼等かれらまさおのれとらへてわうさんとするをさとたまひしかば、またひとやまのがたまへり。 16日没ひぐれおよび、弟子でしたちうみくだりて、 17ふねり、カファルナウムにむかひてうみわたるに、すでくらけれどもイエズスいま彼等かれらところきたたまはず、 18うみ大風おほかぜきてたり。 19かくおよそ四五十ちやうこぎいだしたるとき人々ひとびとイエズスのみづうへあゆみてふねちかづきたまふをおそれしが、 20イエズスわれなるぞ、おそるることなかれ、とのたまひしかば、 21彼等かれらこれふねせんとしたるに、ふねたちまところけり。 22明日あくるひいたりて、うみ此方こなたてる群衆ぐんしゆうふね一艘いつそうほかあらざりしに、イエズス弟子でしたちともそのふねたまはずして、弟子でしたちのみきしことみとめたり。 23おりしもべつふねどもチベリアデよりきたり、しゆしやたまひておのれぱんしよくせしところちかきしかば、 24人々ひとびとイエズスと弟子でしたちとの其處そこらざるをそのふねり、イエズスをたずねてカファルナウムにいたれり。 25かく彼等かれらうみわたり、イエズスを見付みつけて、ラビ何時いつ此處ここきたたまひしぞ、とひしかば、 26イエズス彼等かれらこたへてのたまひけるは、まことまことなんぢぐ、なんぢわれたずぬるは、奇蹟きせきゆゑあらず、ぱんしよくしてあきりしゆゑなり。 27はたらことつるかてためにせずして、永遠えいえん生命せいめいいたるまでそんするかてすなはひとなんぢあたへんとするかてためにせよ、ちちなるかみかれしようしるたまひたればなり、と。 28ここおい人々ひとびとイエズスにむかひ、かみわざはたらかんためには、われなにすべきぞ、とひしに、 29イエズスこたへてのたまひけるは、なんぢそのつかはしたまひしものしんずるは、これかみわざなり、と。 30ここおい彼等かれらまたひけるは、しからばわれをしてなんぢしんぜしめんために、如何いかなるしるしなにおこなたまふぞ。 31われ先祖せんぞ荒野あれのにてマンナをしよくせり、かきしるして「彼等かれらてんよりのぱんあたへてしよくせしめたまへり」とあるがごとし、と。 32そのときイエズス彼等かれらのたまひけるは、まことまことなんぢぐ、モイゼはてんよりのぱんなんぢあたへず、わがちちこそてんよりのまことぱんなんぢたまふなれ。 33けだしかみぱんとは、てんよりくだりて生命せいめいあたふるものこれなり、と。 34かく人々ひとびとしゆよ、このぱんつねわれあたへよ、とひしかば、 35イエズスのたまひけるは、われ生命せいめいぱんなり、われきたひとゑず、われしんずるひとは、何時いつかわかざるべし。 36しかれどもすでなんぢげしごとく、なんぢわれたれども、なほしんぜざるなり。 37すべちちわれたまものわれきたらん、われきたひとわれこれ逐出おひいださじ、 38これてんよりくだりしは、我意わがいさんためあらずして、われつかはしたまひしもの思召おぼしめしさんためなればなり。 39われつかはしたまひしちち思召おぼしめしは、すべわれたまひしものわれがううしなはずして、をはりこれ復活ふくくわつせしむべきことこれなり。 40またわれつかはしたまひしわがちち思召おぼしめしは、すべこれ信仰しんかうするひと永遠えいえん生命せいめいことこれなり。かくわれをはりこれ復活ふくくわつせしむべし、と。 41ここおいてイエズスが、われてんよりくだりたるぱんなり、とのたまひしために、ユデアじんかれきてつぶやきつつ、 42これヨゼフのイエズスにして、その父母ちちははわれれるものならずや。しかるを如何いかんぞ、われてんよりくだれりとふや、とひければ、 43イエズスこたへてのたまひけるは、なんぢつぶやふことなかれ、 44われつかはしたまひしちちたまふにあらずば、何人なにびとわれきたことず、[きたひとは]われをはりこれ復活ふくくわつせしめん。 45預言よげんしやたち[のしよ]にかきしるして、「みなかみをしへらるるものとならん」とあり。ちちきてまなべるひとみなわれきたる、 46ちちひとたてまつりしにはあらず、ただかみよりもののみちちたてまつりたるなり。 47まことまことなんぢぐ、われしんずるひと永遠えいえん生命せいめいいうす。 48われ生命せいめいぱんなり。 49なんぢ先祖せんぞは、荒野あれのにマンナをしよくしてせしが、 50てんよりくだぱんにして、ひとこれしよくせばせざらんためなり。 51われてんよりくだりたるけるぱんなり。ひともしこのわがぱんしよくせば永遠えいえんくべし。[52]しかしてあたへんとするぱんは、このかさんためわがにくなり、と。 52[53]ここおいてユデアじんあひあらそひ、このひといかでかおのにくわれあたへてしよくせしむるをんや、とひしかば、 53[54]イエズスのたまひけるは、まことまことなんぢぐ、なんぢひとにくしよくせずそのまずば、なんぢうち生命せいめいいうせざるべし。 54[55]わがにくしよくわがひと永遠えいえん生命せいめいいうす、しかしてわれをはりこれ復活ふくくわつせしむべし。 55[56]けだしわがにくじつ食物しょくもつなり。わがじつ飲物のみものなり。 56[57]わがにくしよくわがひとわれとどまり、われまたこれとどまる。 57[58]けるちちわれつかはしたまひて、わがちちりてくるごとく、われしよくするひとまたわれりてきん。 58[59]これてんよりくだりしぱんなる、なんぢ先祖せんぞがマンナをしよくしてしかせしがごとくならず、このぱんしよくするひと永遠えいえんくべし、と。 59[60]イエズスカファルナウムなる會堂くわいどううちにてをしへつつのたまひしに、 60[61]弟子でしたちうちには、これきて、このものがたりかたし、たれこれくことをん、とものおほかりしが、 61[62]イエズス彼等かれらこれきてつぶやけるをみづかりてのたまひけるは、このことなんぢつまづかしむるか、 62[63]ればなんぢもしひともとりしところのぼるを如何いかん63[64]かすものはれいにして、にくえきするところなし、なんぢかたりしことばれいなり生命せいめいなり。 64[65]しかれどもなんぢうちにはしんぜざるものあり、と。これイエズスもとより、しんぜざる人々ひとびとたれなるか、おのれるべきひとたれなるかをたまへばなり。 65[66]かくのたまひけるは、ればこそわれかつて、ひとわがちちよりたまはりたるにあらずばわれきたることをず、となんぢげたるなれ、と。 66[67]こののちは、弟子でしたちおほ退しりぞきて、最早もはやイエズスとともあゆまざりしかば、 67[68]イエズス十二にんむかひ、なんぢらんとほつするか、とのたまひしに、 68[69]シモン、ペトロこたへけるは、しゆよ、われたれにかかん、なんぢこそ永遠えいえん生命せいめいことばいうたまふなれ。 69[70]われなんぢかみ御子おんこキリストなることしんかつさとれり、と。 70[71]イエズス彼等かれらこたたまひけるは、われなんぢ十二にんえらみしにあらずや、しかるになんぢ一人ひとり惡魔あくまなり、と。 71[72]はシモンのイスカリオテのユダをのたまへるものにて、かれは十二にん一人ひとりながら、イエズスをるべきものなればなり。

第7章[編集]

1ユデアじんころさんとはかれるにり、イエズスそののちはユデアをめぐることをこのたまはず、ガリレアをめぐたまひしが、 2ユデアじん幕屋まくや祝日しゆくじつちかづきければ、 3兄弟等きやうだいたちイエズスにむかひ、なんぢおこなへるわざ弟子でしたちせんため此處ここりてユデアにけ、 4けだしおおやけれんこともとめながら、しかひそかことひとはあらず、かかことうへおのれあらはせかし、とへり。 5これその兄弟等きやうだいたちこれしんぜざりしゆゑなり。 6ればイエズス彼等かれらのたまひけるは、なんぢときつねそなはれども、わがときいまいたらず、 7なんぢにくあたはざるにわれをばにくめり、われこれきて、その所業しわざあしきことをしようすればなり、 8なんぢこの祭日さいじつのぼれ、わがときいまたざれば、われこの祭日さいじつのぼらず、と。 9のたまひてガリレアにとどまたまひしが、 10兄弟等きやうだいたちのぼりたるのちみづからもあらはならずしのびたるやうにて祭日さいじつのぼたまへり。 11れば祭日さいじつあたりて、ユデアじんかれ何處いづこるぞとてこれさがし、 12また群衆ぐんしゆううちこれきてささやものおほかりき。すなはあるひとかれ善人ぜんにんなりとひ、あるひといな人民じんみんまどはすのみとたり、 13れどいづれもユデアじんおそろしさに、かれきてあらはかたひとなかりき。 14かく祭日さいじつなかばに、イエズス[しん]殿でんのぼりてをしたまひければ、 15ユデアじん驚嘆きやうたんして、かのかつまなばざるに如何いかにして文字もんじれるぞ、とたるを、 16イエズス彼等かれらこたへてのたまひけるは、わがをしへわれのにあらず、われつかはしたまひしものの[をしへ]なり。 17その思召おぼしめしあへさんひとは、このをしへかみよりせるかまたわたくしもつものいへるかをさとらん。 18おのわたくしもつかたひとおのれ光榮くわうえいもとむれども、おのれつかわししもの光榮くわうえいもとむるひとは、眞實しんじつにしてうち不義ふぎあることなし。 19モイゼは律法りつぱふなんぢさづけしに、なんぢうちこれおこなものなきはなんぞや、 20なんぢ如何いかんわれころさんとははかる、と。群衆ぐんしゆうこたへて、なんぢ惡魔あくまかれたり、たれなんぢころさんとはする、とひしかば、 21イエズスこたへてのたまひけるは、われひとつわざししになんぢみなこれいぶかれり、 22それモイゼ割禮かつれいなんぢさづけたれば、――モイゼよりいでしにあらずして先祖せんぞよりでたるものなるに、――なんぢ安息日あんそくじつにもひと割禮かつれいおこなひ、 23モイゼの律法りつぱふやぶらじとて、ひと安息日あんそくじつにも割禮かつれいくるに、安息日あんそくじつひと全身ぜんしんいやしたればとて、なんぢわれいきどほるはなんぞや。 24外見ぐわいけんによりて是非ぜひすることく、ただしき判断はんだんによりて是非ぜひさだめよ、と。 25ここおいてエルザレムのある人々ひとびとひけるは、これ人々ひとびところさんとはかれるものあらずや、 26公然こうぜん談話だんわすれどもひとこれなにをもはず。つかさたちかれがキリストたることまことみとめたるか、 27りながらわれこのひと何處いづこものなるかをれり、キリストのきたときにはその何處いづこよりせるかをひとあらじ、と。 28しかるにイエズス神殿しんでんにてよばはりつつをしへてのたまひけるは、なんぢわれり、また何處いづこよりきたれるかをれり、しかれどもわれおのれによりてきたりたるにはあらず、われつかはしたまひしもの眞實しんじつにてまします、なんぢこれらず、 29われこれれり、われかれよりでて、かれわれつかはしたまひたればなり、と。 30ここおい彼等かれらイエズスをとらへんとはかれども、たれくるものなかりき、かれときいまいたらざればなり。 31れど人民じんみんうちにはこれしんじたるものおほく、キリストきたればとてあにこのひとすよりおほくの奇蹟きせきさんや、とたり。 32人民じんみんがイエズスにきてささやけるよしファリザイじんみみりしかば、司祭しさいちやうとファリザイじんとは、下役したやくどもつかはしてイエズスをとらへしめんとせしを、 33イエズス彼等かれらのたまひけるは、われなほしばらなんぢともをりて、われつかはたまひもの御許おんもとかんとす、 34なんぢわれたずぬべけれどしかわれはじ、ところにはなんぢきたことあたはず、と。 35ここおいてユデアじんかたりひけるは、われかれはじとて、かれ何處いづこかんとするぞ、異邦いはうじんうち散在さんざいせる同邦どうはうじんもときて、異邦いはうじんをしへんとするか、 36そのことばに、なんぢわれたずぬべけれどしかわれはじ、ところにはなんぢきたことあたはず、とひしは何事なにごとぞや、と。 37まつりはてすなはそのだい祭日さいじつに、イエズスちてよばはりつつのたまひけるは、かわけるひとあらばわがもときたりてめ、 38われしんずるひとは、聖書せいしよへるごとく、けるみづかわそのはらより流出ながれいづべし、と。 39のたまひしは、おのれしんずる人々ひとびとたまはるべき[せい]れいことなりき、はイエズスいま光榮くわうえいたまはざるにより、[せい]れいいまたまものはざりしがゆゑなり。 40かくかの群衆ぐんしゆううちに、これことばきて、これまことかの預言よげんしやなり、とひとあり、 41これキリストなり、とひともありき。れどあるひとは、キリストはガリレアよりづべきものなるか、 42聖書せいしよにキリストはダヴィドのすゑより、またダヴィドのたりしベトレヘムのまちよりづ、とへるにあらずや、とひつつ、 43イエズスにきて群衆ぐんしゆううち諍論いさかひしやうじたり。 44なかにはイエズスをとらへんとほつするものありたれど、たれかけくるものなかりき。 45れど下役したやくどもは、司祭しさいちやうとファリザイじんとのもとかへりしに、なんかれひききたらざる、とはれて、 46下役したやくどもこのひとごとかたりしひといまかつてあらず、とこたへしかば、 47ファリザイじんこたへけるは、なんぢまたまどはされしか、 48かしらおよびファリザイじんうちに、一人ひとりだもかれしんじたるものありや、 49れど律法りつぱふらざるかの群衆ぐんしゆうのろはれたるものなり、と。 50かつよるイエズスにいたりしかのニコデモは、そのうち一人ひとりなりしが、彼等かれらむかひて、 51わが律法りつぱふは、まづそのひとにもききたださず、そのところをもらずして、これつみさだむるものなるか、とひしかば、 52彼等かれらこたへてひけるは、なんぢまたガリレアじんなるか、聖書せいしよさぐよ、預言よげんしやはガリレアよりおこるものにあらずとさとれ、と。 53かくおのおの自宅じたくかへれり。

第8章[編集]

1イエズス、橄欖かんらんざんき、 2黎明よあけまた[しん]殿でんいたたまひしに、人民じんみんみな御許おんもときたりければ、してこれをしたまひしが、 3律法りつぱふ學士がくし、ファリザイじん姦淫かんいんせるときとらへられたる一人ひとりをんなひききたりてこれ眞中まんなかたせ、 4イエズスにひけるは、よ、このをんないま姦淫かんいんせるところとらへられたり、 5モイゼは律法りつぱふおいかかものいしなげうことわれめいじたるが、なんぢこれなんふぞ、と。 6へるは、イエズスをこころみて、うつたふる條件かどためなりしが、イエズスはかがめ、ゆびもてものたまへり。 7しかるに彼等かれらひてまざりしかば、イエズス立上たちあがり、なんぢうちつみなきひとは、さきいしかれなげうつべし、とのたまひ、 8ふたたかがめて物書ものかたまへるに、 9彼等かれらきて、年長としよりはじめとして一人ひとり々々ひとり立去たちさり、ただイエズスと眞中まんなかてるをんなとのみのこりしかば、 10イエズス立上たちあがりてこれのたまひけるは、をんなよ、なんぢうつたたりし人々ひとびと何處いづこるぞ、たれなんぢつみさだめざりしか、と。 11をんなしゆたれも、とひしかば、イエズスのたまひけるは、われなんぢつみさだめじ、け、こののちまたつみおかすことなかれ、と。 12てイエズスふたた人々ひとびとかたりて、われひかりなり、われしたがひと暗黒くらやみあゆまず、かえつ生命せいめいひかりべし、とのたまひければ、 13ファリザイじんこれひけるは、なんぢみづかおのれ證明しようめいす、なんぢ證明しようめい眞實しんじつならず。 14イエズスこたへてのたまひけるは、われおのれ證明しようめいすれども、わが證明しようめい眞實しんじつなり、これ何處いづこよりきたりて何處いづこくかをればなり。れどなんぢは、何處いづこよりきたりて何處いづこくかをらず、 15なんぢ肉親にくしんによりて是非ぜひし、われたれをも是非ぜひせず、 16もし是非ぜひすることあれば、是非ぜひするところ眞實しんじつなり、われひとりあらずしてわれわれつかはしたまひしちちとなればなり。 17なんぢ律法りつぱふかきしるして、「二人ふたりしよう眞實しんじつなり」とあり、 18われおのれしようし、われつかはしたまひしちちまたわれしようたまふなり、と。 19彼等かれらすなはちイエズスにむかひ、なんぢちち何處いづこにかる、とひしかば、イエズスこたたまひけるは、なんぢわれをもわがちちをもらず、もしわれりたらばかならわがちちをもれるならん、と。 20イエズスがかたたまひしは、[しん]殿でんうち賽銭さいせんばこかたはらにてをしへつつありしときなれども、たれくるものなかりき、かれときいまいたらざればなり。 21ればイエズスふたた彼等かれらむかひ、われく、なんぢわれたずぬべけれども、おのつみうちせん、ところにはなんぢきたあたはず、とのたまひしかば、 22ユデアじんかれところにはなんぢきたあたはずとひしが、自殺じさつせんとするか、とひけるに、 23イエズスのたまひけるは、なんぢしたよりせるに、われうへよりせり、なんぢこのものなるに、われこのものあらず、 24われこれによりて、なんぢおのつみうちせんとへり、けだしなんぢもしそれなることしんぜずば、おのつみうちすべし、と。 25彼等かれらなんぢたれなるぞ、とひしかば、イエズスのたまひけるは、われすなはもとよりなんぢぐるところものなり。 26われなんぢきてふべきことさばくべきことおほし、りながらわれつかはしたまひしもの眞實しんじつにてましまし、りてかたところかれよりきしものなり、と。 27かくても彼等かれらは、イエズスがかみわがちちしようたまへることをさとらざりき。 28ればイエズス彼等かれらのたまひけるは、なんぢひとげたらんときそれなることさとり、またわたくしには何事なにごとをもさず、ちちをしたまへるままに、このことかたるをさとらん。 29われつかはしたまひしものわれともましまして、われひとりならしめたまはず、つね御意みこころかなへることせばなり、と。 30かたたまへるに、信仰しんかうするひとおほかりければ、 31イエズスおのれしんじたるユデアじんむかひ、なんぢもしわがことばとどまらばまことわが弟子でしにして、かつ眞理しんりさとり、 32眞理しんりなんぢ自由じいうならしめん、とのたまひしかば、 33彼等かれらこたへけるは、われはアブラハムの子孫しそんにしていまかつたれにも奴隷どれいたりしことなし、なんなんぢ自由じいうなるべしとふや、と。 34イエズス彼等かれらこたたまひけるは、まことまことなんぢぐ、すべつみおかひとつみ奴隷どれいなり、 35奴隷どれいかぎりなくいへとどまものあらず、こそかぎりなくとどまるなれ、 36ればもしなんぢ自由じいうならしめば、なんぢじつ自由じいうるべし。 37なんぢがアブラハムの子孫しそんなることわれこれれり、れどもわがことばなんぢうちれられざるによりて、なんぢわれころさんとす。 38われわがちちきてところかたり、なんぢおのちちきてところおこなふなり、と。 39彼等かれらこたへて、われちちはアブラハムなり、とひしかば、イエズス彼等かれらのたまひけるは、なんぢもしアブラハムの子等こどもならばアブラハムのわざせ、 40しかるになんぢいまかみよりきたる眞理しんりなんぢぐるひとたるわれころさんとはかる、これアブラハムのさざるところ41なんぢおのちちわざすなり、と。ここおい彼等かれらイエズスにひけるは、われ私通しつうによりてうまれしものあらず、われどくいつちちすなはかみあり、と。 42イエズスすなは彼等かれらのたまひけるは、かみもしなんぢちちならばなんぢかならわれあいするならん、われかみより出來いできたりたればなり、すなはわれわたくしきたりしにあらず、かみこそわれつかはしたまひしなれ。 43なんぢわがものがたりわきまへざるは何故なにゆゑぞ、これかたところざるゆゑなり。 44なんぢ惡魔あくまなるちちよりでてあへおのちちのぞみおこなふ、かれはじめより殺人さつじんしやにして眞理しんりたざりき、眞理しんりうちらざればなり、かれいつはりときおのれよりかたる、僞者いつはりものにしてしかいつはりちちなればなり。 45われ眞理しんりけどもなんぢこれしんぜず、 46なんぢうちたれわれつみあることしようせん。われなんぢ眞理しんりくもわれしんぜざるは何故なにゆゑぞ、 47かみよりのものかみ御言おんことばく、なんぢかざるはかみよりのものならざるによれり、と。 48かくてユデアじんこたへてイエズスにひけるは、われが、なんぢはサマリアじんにして惡魔あくまかれたるものなり、とへるはうべならずや。 49イエズスこたへけるは、われ惡魔あくまかれず、かえつわがちちたふとべるに、なんぢわれ侮辱ぶじよくす。 50ただしわれおのれ光榮くわうえいもとめず、これもとかつ審判しんぱんたまものべつり。 51まことまことなんぢぐ、ひともしわがことばまもらば永遠えいえんざるべし、と。 52ここおいてユデアじんひけるは、われなんぢ惡魔あくまかれたるをいまこそはさとりたれ、アブラハムもし、預言よげんしやたちせり、しかるをなんぢひともしわがことばまもらば永遠えいえんあじははじとふ。 53なんぢわれちちアブラハムよりもおほいなるものなるか、かれ預言よげんしやしたるに、なんぢおのれたれなりとするぞ。 54イエズスこたたまひけるは、われもしみづかおのれ光榮くわうえいせば、わが光榮くわうえい皆無かいむるべし、われ光榮くわうえいするものわがちちなり。すなはなんぢおのれかみしようするものなり。 55なんぢかれらざれどもわれかれれり、われもしかれらずとはば、なんぢひとしく僞者いつはりものたるべし、れどもわれかれかつその御言おんことばまもる。 56なんぢちちアブラハムは、わがんとたのしみしが、よろこべり、と。 57ここおいてユデアじんイエズスにむかひ、なんぢいまだ五十さいならざるに、しかもアブラハムをたりしや、とひたるに、 58イエズスのたまひけるは、まことまことなんぢぐ、われはアブラハムのうまるるにさきだちてそんす、と。 59ここおい人々ひとびといしりてイエズスになげうたんとしけるに、イエズスかくして[しん]殿でんよりたまへり。

第9章[編集]

1イエズスとおりかかりに、一人ひとりうまれながらの瞽者めしひたまひしかば、 2弟子でしたち、ラビこのひと瞽者めしひうまれしはたれつみぞ、おのれつみ兩親ふたおやつみか、とひたるに、 3イエズスこたたまひけるは、このひとそのおやつみおかししにあらず、かれうへかみわざあらはれんためなり。 4われつかはしたまひしものわざわれひるあひださざるべからず、たれわざあたはざるよるまさきたらんとす、 5われあひだひかりなり、と。 6のたまひて、イエズスつばきし、つばきもつどろつくり、これかれりて、 7のたまひけるは、シロエのいけいたりてあらへ、と。シロエとはつかはされたるものとやくせらる。かれすなはきてあらひしに、目明めあきてかへれり。 8かく隣人りんじんおよかつかれ乞食こつじきせるを人々ひとびとは、これすはりて乞食こつじきたりしものならずや、とへば、あるひとそれなりとひ、 9あるひといなそれたるひとなりとふをかれは、われそれなりとたり。 10れば彼等かれらなんぢ如何いかにしてきたるぞ、とへるに、 11かれこたへけるは、かのイエズスとしようするひとどろつくりてわがり、シロエのいけいたりてあらへとひしかば、われきてあらひて、ゆるなり、と。 12人々ひとびとそのひと何處いづこるぞとひしにかれわれこれらず、とへり。 13彼等かれらその瞽者めしひなりしひとをファリザイじんもとともなきしが、 14イエズスのどろつくりてそのたまひしは、安息日あんそくじつなりければ、 15ファリザイじんさらに、如何いかにしてゆるにいたりしぞ、とへるをかのこたへて、かのひとわがどろり、われこれあらひたればゆるなり、とひしかば、 16ファリザイじんあるものは、安息日あんそくじつまもらざるかのひとかみよりのものあらずとひ、あるものは、罪人つみびとなるものいかでかかか奇蹟きせきおこなふをんや、とひて彼等かれらあひだ諍論いさかひありき。 17ればかさねて瞽者めしひなりしひとに、なんぢそのけしひとなんふぞ、とへば、かれは、預言よげんしやなり、とへり。 18ユデアじんは、かれかつ瞽者めしひにして、ゆるやうになれるをしんぜざれば、ついかの目明めあきしひと兩親ふたおやび、 19ひてひけるは、瞽者めしひうまれしとなんぢへるそのこれなるか、しからば如何いかにしていまゆるぞ、と。 20兩親りやうしんこたへて、かれわがなることと、瞽者めしひうまれしこととは、われこれる、 21れど如何いかにしていまゆるかをらず、またそのけしものたれなるかは、われらざるなり、かれへ、かの年長としたけたればみづかおのことかたるべし、とへり。 22兩親ふたおやひしは、ユデアじんおそれたるゆゑにして、彼等かれらが、イエズスをキリストなりと宣言せんげんするひとあらば、これ會堂くわいどうより逐出おひいだすべし、といひあはせたるにれり、 23かれ年長としたけたればこれへ、と兩親ふたおやひしはこれためなり。 24ここおい彼等かれらふたたかの瞽者めしひなりしひと呼出よびいだして、なんぢかみ光榮くわうえいせよ、われかのひと罪人つみびとなることれり、とひしかば、 25かれひけるは、かれ罪人つみびとなりやはわれこれらず、ところひとつすなは瞽者めしひなりしにいまゆることこれなり、と。 26そのとき彼等かれらまたかのひとなんぢなにししぞ、如何いかにしてなんぢけしぞ、とひしに、 27かれわれすでなんぢげてなんぢこれけり、なにすれまたかんとはする、なんぢその弟子でしらんことほつするか、とこたへしかば、 28彼等かれらこれのろひてひけるは、なんぢ弟子でしにてあれ、われはモイゼの弟子でしなり、 29われかみがモイゼにかたたまひしことれど、かのひと何處いづこよりせるかをらず、と。 30瞽者めしひなりしひとこたへて、なんぢその何處いづこよりせるかをらざるこそかいしけれ、かれわがけしものを。 31われる、かみ罪人つみびとたまはず、れどかみ奉事ほうじして御旨みむねおこなひとあればこれたまふことを。 32開闢かいびやく以來いらいうまれながらなる瞽者めしひけしひとあることかず、 33かのひともしかみよりでたるにあらずば何事なにごとをもざりしならん、とひしかば、 34ファリザイじんこたへて、なんぢまつたつみうちうまれたるに、なほわれをしふるか、とひてこれおひだせり。 35イエズスそのおひだされしことき、これたまひしときなんぢかみ信仰しんかうするか、とのたまひしに、 36かれこたへて、しゆよ、これ信仰しんかうすべきものたれぞ、とひしかば、 37イエズスのたまひけるは、なんぢそれをたり、なんぢかたものすなはこれなり、と。 38かれしゆよ、われしんず、とひて平伏ひれふしつつイエズスを禮拝れいはいたてまつれり。 39イエズスのたまひけるは、われ審判しんぱんためこのきたれり、すなはえざるひとえ、ゆるひと瞽者めしひるべし、と。 40ファリザイじんうちイエズスとともりしものこれきて、われ瞽者めしひなるか、とひしかば、 41イエズス彼等かれらのたまひけるは、なんぢ瞽者めしひならばつみなかるべし、れどいまみづかゆとふにりて、なんぢつみのこるなり。

第10章[編集]

1まことまことなんぢぐ、ひつじおりるに、もんよりせずしてところよりゆるは、盗人ぬすびとなり強盗がうたうなり、 2もんよりるはひつじ牧者ぼくしやなり。 3門番もんばんかれひらき、ひつじそのこゑき、かれまたおのひつじ一々いちいち名指なざして引出ひきいだす、 4かくそのひつじいだせば、かのさきだちてひつじこれしたがふ、そのこゑればなり、 5しかれども他人たにんにはしたがはず、かえつこれく、他人たにんこゑらざればなり、と。 6イエズスこのたとへ彼等かれらのたまひしかど、彼等かれらそのかたたまところなんたるをさとらざりき。 7ればイエズスふたた彼等かれらのたまひけるは、まことまことなんぢぐ、われひつじもんなり、 8すできたりしひとみな盗人ぬすびと強盗がうたうにして、ひつじこれ聴從ききしたがはざりき。 9われもんなり、ひともしわれりてらばすくはれ、出入いでいりして牧場まきばべし。 10盗人ぬすびときたるはぬすみ、ころし、ほろぼさんとするにほかならざれども、 11きたれるはひつじ生命せいめいしかなほゆたかためなり。われ牧者ぼくしやなり、牧者ぼくしやそのひつじため生命いのちつ、 12れども牧者ぼくしやあらずしてひつじわがものあらざる被雇人やとはれびとは、おほかみきたるをればひつじててげ、おほかみひつじうばかつおひちらす。 13被雇人やとはれびとぐるは、被雇人やとはれびとにしてひつじいたはらざるゆゑなり。 14われ牧者ぼくしやにしてわがひつじり、わがひつじまたわれる、 15あたかちちわれたまひ、われまたちちたてまつるがごとし、かくわれわがひつじため生命いのちつ。 16われまたこのをりぞくせざるひつじてり、彼等かれらをもひききたらざるべからず、彼等かれらわがこゑき、かくひとつをりひとつ牧者ぼくしやとなるべし。 17ちちわれあいたまへるは、これふたたらんがためわが生命いのちつるにる、 18たれこれわれよりうばものはあらず、われこそみづかこれつるなれ。われこれつるのけんいうし、またふたたこれるのけんいうす、これわがちちよりけたるめいなり、と。 19これものがたりために、ユデアじんうちまた諍論いさかひおこれり、 20そのうちには、かれ惡魔あくまかれてくるへるなり、なんぢなんこれくや、とひとおほかりしが、 21ひとは、これ惡魔あくまかれたるものことばあらず、惡魔あくまあに瞽者めしひくことをんや、とたり。 22てエルザレムに奉殿ほうでん記念祭きねんさいおこなはれて、ときふゆなりしが、 23イエズス[しん]殿でんりてサロモンのらうあゆたまふに、 24ユデアじんこれとり圍みて、なんぢ何時いつまでわれこころ疑惑ぎわくせしむるぞ、なんぢもしキリストならば、明白あからさまわれげよ、とひければ、 25イエズス彼等かれらこたたまひけるは、われなんぢかたれどもなんぢしんぜざるなり、ちち御名みなもつおこなへるわざこれわれ證明しようめいするものなるに、 26なんぢなほこれしんぜず、これわがひつじかずらざればなり。 27わがひつじわがこゑき、われ彼等かれらり、彼等かれらわれしたがふ、 28かくわれ永遠えいえん生命せいめい彼等かれらあたふ、彼等かれら長久とこしなへほろびず、たれ彼等かれらわがよりうばはじ、 29これわれたまひたるわがちちは、一切いつさいすぐれて偉大ゐだいましまし、たれわがちち御手みてよりこれうばものなし、 30われちちとはひとつなり、と。 31ここおいてユデアじんいしりてイエズスになげうたんとせしかば、 32イエズス彼等かれらのたまひけるは、われわがちちれる善業ぜんげふおほなんぢしめししが、なんぢそのいづれためわれいしなげうたんとはするぞ。 33ユデアじんこたへけるは、われなんぢいしなげうつは善業ぜんげふためあらず、冒涜ばうとくためかつなんぢひとにてありながらおのれかみとするゆゑなり。 34イエズス彼等かれらこたたまひけるは、なんぢ律法りつぱふかきしるして「われへらく、なんぢかみなり」とあるにあらずや、 35かみことばげられたる人々ひとびとかみびたるに、しか聖書せいしよはいすべからず、われかみなりとひたればとて、 36なんぢは、ちち聖成せいせいしてつかはしたまひしものむかひて、なんぢ冒涜ばうとくすとふか、 37われもしわがちちわざさずばわれしんずることなかれ、 38れどわれもしこれさば、あへわれしんぜずともわざしんぜよ、らばちちわれいまわれちちことさとりてしんずるにいたらん、と。 39ここおい彼等かれらイエズスをとらへんとはかれるを、彼等かれらのがれて、 40ヨルダン[かは]の彼方かなた、ヨハネがはじめせんしつつありしところいたり、其處そことどまたまひしに、 41おほくのひと御許おんもときたりて、ヨハネはなん奇蹟きせきをもおこなはざりしかど、 42このひときてげしことことごとまことなりき、とひつつイエズスを信仰しんかうせるものおほかりき。