プラタヌナの葉のやうに

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本文[編集]

プラタヌナの葉のやうに
萩原恭次郎

電報通信紙
●●————●●●秋は過ぎる!
恋人の髪の匂ひ!
  今朝も私を抱いた!
———「自殺は罪悪よ!」
———「早く帰つてね。」
———「時計は何故遅く動くの?」
歩道で煙草のヤニが匂ふ!
電車のカーブ!
  子供は葱くさい!
  太陽は果物よりも匂はしい!
私はすつかり墓場を忘れてゐる!
———お嬢さん!
十字架は屋根の向ふに光る!
空は音もなく無限でいゝ!
空気は無信仰の頭を休ませる!
飽くなき安らひを欲する!
何もかも忘れてしまいたい!
私はプラタヌナの葉のやうに無言のまゝ地上であそびたい!

解題[編集]

作者:萩原恭次郎

底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1

表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。