コーヒー一杯で午前は終わつた

提供: Wikisource
ナビゲーションに移動 検索に移動

Wikisource:文学 < 『死刑宣告

本文[編集]

コーヒー一杯で午前は終つた
萩原恭次郎

疲れた虫が
もの倦い花弁の中を游いでゐる
接吻も飽いた
コーヒー一杯で午前は終つた

天気の悪い日だ
肉体が死を思ふ
肉体のはなれゆく悲哀を
厭しつけるやうな重い憂欝の抱擁でつづけた
女は赤いキモノをつけて笑つてゐた
古びたくつしよんの上で
ピエローは死につゝある

一日は終つた
黄色い電灯が部屋へやつて来た

解題[編集]

作者:萩原恭次郎

底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1

表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。