オウム真理教事件・麻原彰晃に対する判決文/chapter two
Ⅱ B1事件(殺人)
(平成7年11月10日付け追起訴状記載公訴事実)
[犯行に至る経緯]
1 B1(昭和42年12月26日生)は,昭和63年6月ころ,教団に出家し,CSI内の電気 班に所属し,電気関係のワークに従事していた。
2 D1は,在家信徒として,同年9月下旬ころ,富士山総本部道場で修行していた際, 奇声を発するなど異常な行動に及んだ。大師のA4らは,その旨の報告を受けた被告人 の指示に基づき,D1に水を掛けるなどしていたところ,誤って同人を死亡させてしまっ た。被告人は,このことを警察その他の関係機関に連絡するか否かについて,もしこの件 を公にすると教団による救済活動がストップしてしまうなどと言いながら,A4ら教団幹部 の同意を求めてこの件を警察等に連絡しないことに決め,同人らに命じて,ドラム缶にD 1の遺体を入れ護摩壇で焼却した(以下「D1事件」という。)。D1事件には,A4のほか, A6,A7,A8らがかかわり,B1も遺体の焼却に関与していた。
3 被告人は,同年12月中旬ころ,教団の発行する書籍等を出版しているE4の責任者 であるA4に指示し,B1をその営業に従事させた。しかし,B1が,「このような営業をやっ ても功徳にならない。在家信徒のままで家に帰って自分なりに修行したい。」などと不満 を述べるようになったことから,A4は,平成元年1月上旬ころ,被告人にその旨報告し, 被告人の指示により,サティアンビル4階の被告人のもとに連れていった。
被告人は,会議室で,B1と二人で話をした後,A4ら居合わせた大師に対し,B1が変 なことを言うなどと言い,その後,B1を富士山総本部の道路を隔てた向かいにある静岡 県富士宮市c1所在の空き地に設置された独房修行用に改造したコンテナ内に入れ,そ の両手や両足をロープで縛り,被告人の説法が録音されたテープを聞かせるなどして翻 意させようとした。
しかし,逆に,B1は,教団から脱会する旨主張し,被告人を殺すとまで言うようになり, 被告人は,A6を介するなどして,そのことを知った。
4 被告人は,自分を殺すとまで言うB1に憤慨するとともに,D1事件に関与したB1をこ のまま教団から脱会させると,B1により同事件が公表されるおそれがあり,そうなれば組 織を拡大しようとしている教団が多大な痛手を受けるなどと考え,B1が翻意しない以上B 1を殺害するしかないと決意した。
そこで,被告人は,同年2月上旬ころの深夜,サティアンビル4階の図書室に,A4,A 6,A8,A7及びA9らを集め,同人らに対し,B1が教団から脱会することを考え,被告人 を殺すとも言っている旨説明した上,「まずいとは思わないか。B1はD1のことを知ってい るからな。このまま,わしを殺すことになったとしたら,大変なことになる。もう一度,おまえ たちが見にいって,わしを殺すという意思が変わらなかったり,オウムから逃げようという考 えが変わらないならばポアするしかないな。」「ロープで一気に絞めろ。その後は護摩壇 で燃やせ。」などと言って,B1が翻意しない場合にB1を殺害することなどを命じ,A4らは 全員これを承諾し,ここに,被告人及びA4らは,B1の殺害について共謀を遂げた。
5 A4,A6,A8,A7及びA9は,直ちに,B1の入れられている前記コンテナまで行 き,A9はコンテナの外で見張りをすることとし,他の4名はコンテナ内に入り,両手や両足 を縛られたままあぐらを組んで座っているB1に対し,その意思を確認したが,B1から,教 団に残って修行しようとは思わないなどと言われ,翻意する旨の回答を得ることができな かったことから,被告人の前記の指示に従い,B1の殺害を実行することとした。
[罪となるべき事実]
被告人は,A4,A6,A8,A7及びA9と共謀の上,B1(当時21歳)を殺害しようと企 て,平成元年2月上旬ころ,静岡県富士宮市c1に設置されたコンテナ内において,B1に 対し,その頸部にロープを巻いて絞め付け,さらに,両手で同人の頸部を強くひねるなど し,よって,そのころ,同所において,同人を頸髄,延髄又は脳幹部損傷による呼吸又は 循環停止により死亡させて殺害したものである。
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