ある男と道を歩き乍ら

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本文[編集]

ある男と道を歩き乍ら
萩原恭次郎

八角時計が俺の顔だと云ふのか!
バツトの中からすり切れたビラが出てきた!
貴様は———
耳の膣へホースを向けろ!
脳石灰は高熱だ!
————午砲だ!
カラーを乾せ!
赤い旗だ!天気予報は狂つてゐる!
ギリギリ ギリギリ
鎖と憎悪と憤怒はねぢれ合ふ!
●●●電車は胴ぶるいして登つてゆく!
俺は貴様には———符牒でないと物が云へない!
足は義足でないと厄介だらうさ!
煙草を吸ひたまへ!
煙草が腹の中へぢりぢり火のついたまま落ちた!
貴様だな————コツコツコツコツツツツ!
————言葉は絶してゐるんだ!
————行動は絶してゐるんだ!
骸骨の俺等の上を歩く長靴の髯は手前だな!
俺はピストルのやうな正確な行動をもつてゐるんだぜ!
右と左————一!二! 一!二!
ダブリユウ! ダブリユウ!
ルク ルク ルク ルク
ゲツケル ゲツケル

  丸善アテナインキ


解題[編集]

作者:萩原恭次郎

底本:萩原恭次郎『死刑宣告』日本図書センター〈愛蔵版詩集シリーズ〉(2004年3月25日初版第1刷発行) ISBN 978-4-8205-9599-1

表記について:旧仮名遣いは初版本(1925年10月18日発行、長隆舎書店)のまま、漢字は常用漢字に改めてある。本文最終行の「アテナインキ」は、原文では「ア」「ナ」「ン」が右に90度、「テ」「イ」「キ」が左に90度回転している。