資格なし

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『資格なし』("Disqualified")
作者:チャールズ・L・フォントネイ

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太陽系議会の惑星援助担当の調査員、タードとペオは、朝の視察を終えて城に戻った。城は領地を見下ろすように丘の上に建っていた。

二人は壮麗な昼食会でもてなされた。城主のサランタは、この惑星のこの辺りでは富裕な領主であるようだった。食事は美味であった。風味の良いワインソースのかかった、厚さ一インチはある柔らかなステーキが供された。添え物は半ダースに及ぶ種類の風変わりな野菜(この惑星の原産品である)で、デザートには冷えた果物が出された。

「私の報告は、あなたたちにとってかなりの重要性を持つことになるでしょう」食べながらタードが言った。「順調にいけばすぐに宇宙船から技術支援が行なわれます。むろん、太陽系議会は徹底的な調査が済むまで高度な機器を提供しませんが」

「私どもの文化は至って原始的ですから、農地均分論者から反対があるかもしれませんね」とサランタが控えめに言った。

「それはあまり考えなくても良いでしょう。議会は、各星系には個別の歴史的事情があることを理解しています。もちろん基本的な要件はありますが。異常な宗教が幅を利かせていないこと、奴隷制度が無いこと、……ええと、お分りでしょうか」

「私たちは、本当によくやって来たつもりですよ。昔の…千年前にこの世界を開拓したご先祖様の時代からね」ワイングラスをこねくり回しながらサランタが言った。にこやかな召使いがタードとペオのグラスにおかわりを注いだ。「ご存知の通り、植民船はこの星系に辿り着くのが精一杯で、ここ以外の惑星を探検する燃料がありませんでしたし、着陸後は錆びてゆくだけでした。太陽系からはかなりの距離があるので、あなたたちが来るまで他の船が来るようなことは一度もありませんでした」

「とは言っても、あなたたちは幸運に恵まれたようですね」ペオが言った。彼は議会の宇宙船の航宙士で、タードの視察旅行にちょっと同行するよう頼まれてここにいるのだった。「着陸した惑星が不毛という可能性もあったわけですし」

「あー、はい、開拓者たちはごく初期の探検で、ここが居住可能であることに気付きました」とサランタ。「もちろん困難はありました。この惑星は、植生は豊かですが動物が全く生息していなかったのです。そのうえ我々は家畜になる動物を連れてきておりませんでした。犂を引くことは、男に課せられたきつい仕事となっています。」

「その困難を、あなたたちは人道的な方法で解決したのですか?」タードは相手を鋭く見つめながら尋ねた。「つまり、奴隷制度に頼ったということは?」

サランタは笑みを浮かべて両手を軽く広げた。

「あなたにはここが奴隷社会に見えますか?植民者はみな、一致協力して惑星を住みよくすることを望んでいました。働くことを渋る者はいませんでした」

「確かに奴隷は見かけなかった。それは事実です」とタード。「しかし二日という期間は、充分な視察には短いものです。私はあなたや他の君主たちの態度から結論を出さねばなりません。ここの使用人はどのような待遇です?」

「給料は出しています」サランタは答え、悲しげに言い足した。「額が不足だと考える者もいますが……ご存知の通り労働者には組合もあります」

タードは笑い声を上げた。

「明らかに、地球から引きずってきた遺物的風習だな」と彼はつぶやいた。「そして、もう一つの変わった点はテクノロジーの欠如だ」

食事が終わると、宇宙船でやってきた二人の男は領地の視察旅行に案内された。領地はこぎれいな農村で、広い面積を持ち、建物はしっかりとした造りをしていた。サランタの城の近くでは芸術家や職人がのどかに市を出していた。

タードがこんな短い視察で見出そうとしているものは何か、ペオは考えてみた。厳しい訓練を受け、長年の経験を積んだ調査員はどんな要素に目を付けるのだろう。常人が気に留めないようなごく小さなことだろうか。ペオには想像が付かなかった。

タードは奴隷制の問題に集中しているようだった。ペオはその印を探したが、何も見つからなかった。もちろん、この惑星の人々にはものを隠す時間があった。しかしタードとペオが村で見た人々は、奴隷とは思えない独立不羈の空気をまとっていた。

サランタは、この惑星に徒歩以外の交通手段が存在しないことを謝り、そして言い足した。

「私たちがテクノロジーを発達をさせられなかった理由がこれでおわかりでしょう。輸送機関が無いことです。最初に頂ける支援の項目に、輸送機関が含まれていることを望むばかりです」

タードは畑について尋ねた。

「働いている人が見当たりませんが……畑仕事は村人の仕事ですか?」

「労働力は臨時雇いで供給されます」一瞬のためらいの後、サランタが答える。「だいたいの労働者――賃金労働者です――は今現在は隣の町か、そのまた隣にいるはずです」

ペルセウス座アルファ星が西の空に沈むころ、タードとペオはサランタに別れを告げて、自分たちが乗ってきた惑星着陸艇へと足を向けた。

「いい惑星のようだね」ペオが言った。「明日の視察結果も良好なら、技術支援を開始してもいいんじゃないか?」

「明日は視察をしないよ。ぼくは支援には反対の報告を出す」とタードは答えた。「もう充分に見たからな」

「どういうことだい?」

「この惑星には、二つの階級の人間がいる。ぼくらは片方しか見ていない」とタード。「つまり、自由人のほうしかね。もう片方はけだもの並みの扱いだよ。われわれ太陽系議会は、抑圧者を援助してその悪行を助長するようなことは断じて行なわない」

「見ていないなら、どうしてもう一つの階級があると確信してるんだい?」ペオが問いただす。「何の証拠もないじゃないか」

「証拠ってのはよく隠されるものだ。が、きみの胃が事実に耐えられるのであれば、教えよう。この星の歴史を覚えているかな?千年前、植民船は動物を乗せずにここに来た。植民者は現地の動物に頼らなくてはいけなかった。そしてこの星には動物がいなかった」

「サランタもそう言ってたね。だけどそれが何か……」

「さっきのステーキは旨かったよな?」タードが静かに指摘した。