解析概論/附録II
[編集] 附録 II 二,三の特異な曲線
区間
において
が連続であるとき
)
の集合(軌跡)として,一つの平面曲線
を定義するならば,我々が直観的に連続曲線と考えるものはみなこの定義に適合するが,逆にこの定義に適合するものをすべて線というならば,意外なものが線の名目の下に包括される.その一例が Peano の曲線で,それは平面上の区域の各点を通過する.すなわち一つの曲線で或る面積が塗りつぶされるのである.このようなものを曲線の仲間に入れるのは迷惑であるとするならば,上記連続函数
による曲線
の定義が悪いのである,不十分なのである.
Peano の曲線の実列を作る簡明な方法を Knopp が考案した.次にその要領を述べる.
一つの線分
と,一つの二等辺直角三角形
とを取る.媒介変数
が
上を動くとき,曲線
をして
を塗りつぶさせようとするのである.
線分
を
に二等分し,また
の直角頂から斜辺への垂線を引いて
を
に二等分して,
にそれぞれ
を対応させる.
次に線分
を
に,また
を
に二等分し,同時に
および
をそれぞれ
および
に二等分して,四つの線分
にそれぞれ
を対応させる.ただし四つの線分は上記の順に並び,互に接する線分には,一辺をもって互に接する三角形が対応するようにするのである.すなわち対応は次の図のようになる.
同じ条件の下で,今一回二等分をすれば,八つの線分
と八つの三角形
とが次のように対応する.
このような手順を続けるならば,線分
は記号
を二進数
と見るときの大きさの順に並んで,相接する線分には,一辺をもって相接する三角形が対応する.
において,変数
を二進数で


に収束する.今三角形
の平面において,任意に座標系をきめて(例えば斜辺上に
軸を取って直角の頂点を
とする),
の座標を
とすれば,上記のようにして,
の函数として

ただし,このところ,
(線分の分点)に関する二進法の二意性にかかわらず,
に対応する点
は一意的に定まる.例えば


このようにして定義された函数
が連続であることは,その構成によって明白であろう.実際,
とするならば,
に対応する
の距離は
よりも小さい.また,三角形
の各点
は (2) のような区域列に属するから,区間
の
の値 (1) に対応することは明白である.しかし
と
との対応は一対一ではなくて,同一の点
が
の相異なる値に対応することが可能で,そのような点
が三角形
の辺および各分割線上に稠密に分布されている.例えば
には
が対応する.
こんどは底角
の二等辺三角形
から出発する.その底辺を三等分して
を三つの三角形に分割して,中の三角形を捨てて,両端の二つの三角形を
とする.それらは
と相似である.
を同様に分割して,四つの三角形
および
を得る.
この操作をくりかえして無数の
を得る.番号のつけ方は前回と同様で,接続する線分に対応する三角形は,その一つの頂点において互に接続する.


に収束して,座標
)
と
との間に一対一の対応が成り立って,
は Jordan 曲線になる.それを次の図のように三つ繋げば,一つの Jordan 閉曲線を得る.
この曲線の特色は,その各点において接線が存在しないことである.実際今 (1) に対応する点を
とすれば,
は (2) の無数の三角形
に属するが,それらの三角形の各頂点
が曲線
の点なのだから,弦
は一定の方向に収束しない.従って
において接線は不可能である.
が
の辺上にあっても,またはその頂点であっても同様である.
上記の作図において,二等辺三角形の底角を
とする必要はない.一般に底角を
,
として,
の頂角を
の三つに分ければ
等,逐次に作られる三角形は
と相似である.このような三角形の連鎖からも Koch の曲線が得られる.
なる極限の場合には Peano の曲線が生ずるが,その場合,中間の三角形が消滅するために,連鎖の三角形が接着して,
と
との間の一対一対応が失われるのである.
が相似でなくとも,その辺(点集合としての径)が,ついに限りなく小さくなれば,Jordan 曲線を得る.特に毎回取り除くべき中央の三角形の面積を,適当な速度で小さくして行くならば,Osgood が指摘したような,Jordan 曲線で囲まれて,しかも面積が確定でない区域の簡単な例が作られる.今作図の各階段において,三角形
の中央から除くべき三角形の面積の比率
を適当にあんばいして,無限積
ならしめるならば(例えば
),最初出発の三角形の面積を
として,曲線
の外面積が
に等しい(§91).従って,このような Jordan 曲線を境界とする区域は面積確定(Riemann 式)である.