解析概論/附録I/極限

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[編集] 6.極限

ここまできたところで,一応第 1 章の基本定理を一つ一つ検討してみよう.

実数の大小の定義から Dedekind の原則(定理 1)および Weierstrass の定理(定理 2)が導かれることはすでに述べた(459,460 頁).その上に今実数の加法減法が定義されたから,数列の極限の定義(§4)およびそれに基づく第 1 章の定理 67 および Cauchy の判定法(定理 8)が確定する.

ただし,数列 \{\alpha_n\} の上極限,下極限の定義は大小の関係だけでできる.従って,それらが一致する場合として極限も定義される.ただ,Cauchy の収束条件は差を使わないでは,うまく行かない.無理数論において加法が重要なる役をするのは,そこにある.

なお定理5(§4)に関しては (1º)(2º) はよいが,我々はまだ実数の乗法を定義していないから,(3º)(4º) は未決である.

ここで中間的に次の定理を述べておく.

定理 12
実数 \alpha に収束する有理数列が存在する.
[証]
この存在証明のついでに,\alpha を十進数として表現する方法を述べる. n を一つの自然数(\geqq 0),a を任意の整数として \textstyle \frac{a}{10^n} なる有理数

 \ldots,\, \frac{-3}{10^n},\,\frac{-2}{10^n},\,\frac{-1}{10^n},\,0,\,\frac{1}{10^n},\,\frac{2}{10^n},\,\frac{3}{10^n},\,\ldots
を取れば,そのうちで

  \frac{a_n}{10^n}\leqq \alpha < \frac{a_n+1}{10^n}
なる整数 a_n が確定する.然らば

 0 \leqq \alpha-\frac{a_n}{10^n}<\frac{1}{10^n}.
さて \varepsilon>0 とするとき,\varepsilon>r>0 なる有理数 r を取れば十分大なる n に関して \textstyle r>\frac{1}{10^n}(有理数の性質:\textstyle n>\frac{1}{r} とすれば \textstyle 10^n>n>\frac{1}{r}). 従って
 0\leqq \alpha-\frac{a_n}{10^n}<\varepsilon.
すなわち
\lim_{n\to\infty}\frac{a_n}{10^n}=\alpha.

これで[定理 12]は証明されたのであるが,上記 a_n の意味から


 10a_{n-1}\leqq a_n < 10a_{n-1}+10,\quad (n=1,2,\cdots).

故に a_n = 10a_{n-1}+c_n と置けば


 \frac{a_n}{10^n}=\frac{a_{n-1}}{10^{n-1}}+\frac{c_n}{10^n},\quad 0\leqq c_n \leqq 9.

すなわち


 \frac{a_n}{10^n}=a_0+\frac{c_1}{10}+\frac{c_2}{10^n}+\cdots+\frac{c_n}{10^n}.

従って


 \alpha=a_0+\frac{c_1}{10}+\frac{c_2}{10^2}+\cdots+\frac{c_n}{10^n}+\cdots.

これが十進数としての \alpha の表現である.

このような表現は一般には一意であるが,ただ \textstyle \alpha=\frac{a_n}{10^n}, c_n\ne 0,なるとき,最後の項 \textstyle \frac{c_n}{10^n}\textstyle \frac{c_n-1}{10^n}+\frac{9}{10^{n+1}}+\frac{9}{10^{n+2}}+\cdots に換えることができる.これは周知である.

10 の代りに 1 よりも大なる任意の自然数 t を取って,同様の方法によって実数 \alphat 進展開

 \alpha=a_0+\frac{c_1}{t}+\frac{c_2}{t^2}+\cdots,\quad (0\leqq c_n < t)
を得る.
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