解析概論/附録I/実数の集合の一つの性質

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[編集] 9.実数の集合の一つの性質

有理数の全部には番号がつけられる(可算,abzählbar[* 1]countable).番号といっても,それは大小の順序とは無関係である.――有理数に大小の順序に従って番号をつけることは,稠密性が許さない.今正の有理数を自然数の商として n/m の形に書いて,それに平面上の格子点 (m,n) を対応させるならば,それらの格子点に 173 頁に述べたようにして,番号がつけられる.同一の有理数に無数の格子点が対応するけれども,重複するものを除いて番号を繰上げればよい.

例えば 173 頁,右の図のようにすれば,番号順は次のようになる.

\frac11,\frac12,\frac21,\frac13,\frac31,\frac14,\frac23,\frac32,\frac41,\frac15,\frac51,\ldots.

正の有理数に a_1,a_2,a_3,\ldots のように番号がつけば,0 および負の有理数をも入れて,例えば

0,a_1,-a_1,a_2,-a_2,\ldots

のようにして,すべての有理数の順番がきめられる.

然るに,実数の全体に関しては,たとえそれを一定の区間内に限っても,決して漏れなく番号をつけることはできない.それを手軽に証明するために,かりに区間を (0,1) として,区間内のすべての実数に \alpha_1,\alpha_2,\ldots,\alpha_n,\ldots のように番号がつけられたと仮定して,これらの実数を十進法で表わして

\begin{align}
  \alpha_1 &= 0\cdot c_1^{(1)}\!c_2^{(1)}\!\!\ldots c_n^{(1)}\!\!\ldots,\\
  \alpha_2 &= 0\cdot c_1^{(2)}\!c_2^{(2)}\!\!\ldots c_n^{(2)}\!\!\ldots,\\
  \ldots   &  \ldots\ldots\ldots\ldots\ldots\ldots,\\
  \alpha_n &= 0\cdot c_1^{(n)}\!c_2^{(n)}\!\!\ldots c_n^{(n)}\!\!\ldots,\\
  \ldots   &  \ldots\ldots\ldots\ldots\ldots\ldots
\end{align}

とおいてみる.ただし十進数として二様に書かれるものは,正規の記法を取ることとする(例えば 0.5000\ldots のように書いて,0.4.999\ldots のようには書かない).

さて上記のような表が与えられているとき,その表に漏れている数が区間 (0,1) に必らずあることが,次のようにして示される.今十進法で

\alpha = 0\cdot c_1c_2\ldots c_n\ldots

と置いて,数字 c_1,c_2,\ldots を次のようにきめる.すなわち,各〻の位 n に関して \alpha_n の数字 c_n^{(n)} が偶数(0 をも含めていう)ならば c_n=1,また c_n^{(n)} が奇数ならば c_n=2 とする.そうすれば,\alpha\alpha_1 とは第一位の数字が違い,\alpha_2 とは第二位の数字が違い,一般に \alpha_n とは第 n 位の数字が違って,しかも \alpha の数字は 12 かで,999\ldots で終ることはないから,\alpha\alpha_1,\alpha_2,\ldots,\alpha_n,\ldots のどれとも違う.この \alpha は区間 (0,1) にあるけれども,上記の表にはない.すなわち番号がついていない.

これが Cantor の有名な対角線論法である.

任意の区間 a<x'<b においても同様である.それをみるには変換 x'=a+(b-a)x によって区間 (0,1) 内の x(a,b) 内の x' との間に一対一対応を作ればよい.もしも (a,b) 内の x' に番号がつけきれるならば,x' に対応する x に同じ番号を与えて (0,1) 内の x に番号をつけてしまえるはずであるが,それは不可能である.

それよりも重要なのは,無理数だけを取っても,すでに番号づけができないことである.――もし或る区間内のすべての無理数に,b_1,b_2,\ldots,b_n,\ldots のように,番号がつけられるならば,同じ区間内の有理数に a_1,a_2,\ldots,a_n,\ldots のように番号をつけて,双方を交代に a_1,b_1,a_2,b_2,\ldots のように入れ交ぜて,区間内のすべての実数の順番がきめられるであろう.それは不合理である.

大小の順序においては,有理数も無理数も各〻稠密に,かつ交錯して配列されているが,無理数は圧倒的に濃厚に分布されているといわねばなるまい.

ここまでくれば,\sqrt2 などによらないで,無理数の存在が自然にわかるのであった.


  1. abzählbar(かずがよめる)は Georg Cantor の造語である.それの英訳は denumerable, countable,仏訳は dénombrable
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