解析概論/第9章/Vitaliの被覆定理

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[編集] 123.Vitali の被覆定理

定理 113.
R^n において任意の集合 A の各点 x に収束する正則なる閉集合の列が与えられたとき,それらの集合の中から単純列 \{E_n\} を抽き出して,それだけで,ほとんど全く A を覆うことができる.すなわち \textstyle\sum E_n に含まれない A の点は零集合を成すのである:
(1)
m\!\left(A-\sum E_n\right)=0.
これを Vitali の被覆定理という.
[証]
二次元に即して,Banach の証明法を紹介する.言語節約のために,定理にいう閉集合を \mathrm{C} と総称する.
1º.
A は有界で,集合 \mathrm{C} に正則性の指数は一定の正数 a より大きいとする.

A を含む一つの有界なる開集合を S として,集合 \mathrm{C}S に含まれるもののみをとっても差し支えない.

\mathrm{C} から任意に一つの集合 E_1 を取り出して,E_1 に触れない集合 \mathrm{C} の径の上限を \delta_1 とし,それらの集合 \mathrm{C} の中から E_2 の径 \delta E_2>\tfrac12\delta_1 なる一つの集合 E_2 を取り出す.同じようにして,次々に \{E_n\} を定めて行く.すなわちすでに E_n までが定められたとき,E_1+E_2+\cdots+E_n なる閉集合がまだ全く A を覆っていないならば,それに触れない集合 \mathrm{C} の径の上限 \delta_n>0 だから,その中から \delta E_{n+1}>\tfrac12\delta_n なる E_{n+1} が取り出されるのである.このようにして,\mathrm{C} から取り出される有限または無限の単純列 \{E_n\} が定理の条件 (1) に適合するのである.

まず仮定によって,E_n を包んで mE_n>cmW_n なる円 W_n があるが[* 1]\textstyle\sum mE_n\leqq mS だから,\textstyle\sum mW_n<mS/c は収束する.従って n\to\infty のとき,(円 W_n の直径)\delta W_n\to 0,故に \delta E_n\to 0

さて,A に属して \textstyle\sum E_n に属しない点 x があるとして,その x に収束する集合 \mathrm{C} の中の任意の一つを E とすれば,E\{E_n\} の中のどれかと交わる.――さもなければ,すべての n に対して 0<\delta E\leqq\delta_n<2\delta E_{n+1} で,\delta E_n\to 0 に矛盾する.

今かりに (1) が成り立たないとして,

  A'=A-\sum E_n,\quad \bar{m}A'>0.
とするならば,上記の各円 W_n を同心の W_n' にまで k 倍(k\geqq 5,後述)に拡大するとき,\textstyle\sum mW_n'=k^2\sum mW_n<\tfrac{k^2}{c}mS は収束するから,十分大きい N に対して,
\sum_{n>N}mW_n'<\bar{m}A'.
故に
(2)

  x\in A',\quad x\notin\bigcup_{n>N}W_n'
なる点 x がある.この点 x\textstyle\sum E_n に属しないから,x を含んで E_1,E_2,\ldots,E_N に交わらない \mathrm{C} の集合 E があるが,前にいったように,E\{E_n\} の中のどれかと交わるのだから,\{E_n\} の中で E と交わる最初のものを E_p とすれば,p>N で,EE_1,E_2,\ldots,E_{p-1} とは交わらない.従って
(3)
\delta E\leqq\delta_{p-1}.
そうして xW_p' には属しないのだから,EW_p' の外部の点 x を含む.また EW_p 内にある E_p と交わるから,W_p の内部の点をも含む.従って

   \delta E\geqq \frac12(k-1)\delta W_p
  \geqq\frac12(k-1)\delta E_p > \frac14(k-1)\delta_{p-1}.
k\geqq 5 とすれば,これは (3) と矛盾する.すなわち \bar{m}A'>0 は不合理である.故に (1) が成り立つ.
2º.
一般の場合.原点 O を中心とする半径 n の円の内部を S_n とする.A の点 xS_n に含まれ,かつ x に収束する \mathrm{C} の集合列の正則性の指数が \tfrac1n よりも大きいとして,そのような点 x の集合を A_n とする.従って \{A_n\} は増大列で,\textstyle A=\lim_{n\to\infty}A_n. さて によって,集合 \mathrm{C} の単純和 \textstyle\sum E_i でほとんど A_n が覆われる.すなわち
(4)

  \bar{m}\!\left(A_n-\sum_{i=1}^\infty E_i\right)=0.
単純和 \textstyle\sum_{i=1}^\infty E_i は有界だから \textstyle\sum_{i=1}^\infty mE_i は収束する.よって十分大きく p を取って
(5)

  \sum_{i>p}mE_i <\frac{1}{n}
とする.然らば \textstyle F_n=\sum_{i=1}^p E_i と置くとき
(6)

  \bar{m}(A_n-F_n)<\frac{1}{n}
である.実際,

  A_n-F_n\subset\left(A_n-\sum_{i=1}^\infty E_i\right)+\sum_{i>p}E_i
だから,(4)(5) によって

  \bar{m}(A_n-F_n)\leqq
  \bar{m}\!\left(A_n-\sum_{i=1}^\infty E_i\right)+\sum_{i>p}mE_i
   <\frac{1}{n},
すなわち (6) が成り立つ. さて,集合 A_{n+1}-F_n は開集合 S_{n+1}-F_n に含まれ,その各点に正則性の指数が \tfrac{1}{n+1} より大きい集合 \mathrm{C} の列が収束するから,前と同じようにして,それらの \mathrm{C} 集合の中から単純なる有限列 \textstyle\sum_{i=1}^q E_i' を取り出して

  \bar{m}\!\left(A_{n+1}-F_n-\sum_{i=1}^q E_i'\right)<\frac{1}{n+1}
にすることができる.ここで E_i' は閉集合 F_n の外にあるから,
(7)

  F_{n+1}=F_n+\sum_{i=1}^q E_i'
と置けば,F_{n+1} は集合 \mathrm{C} の有限単純列で,

  \bar{m}(A_{n+1}-F_{n+1})<\frac{1}{n+1}.
このような操作は,n=1 から始めて,どこまでも続けられるから,記号を変えて,集合 \mathrm{C} の或る単純列 \{E_n\} に関し,各〻の n に対して,(6) が成り立つと見てよい.そのとき,(7) によって \{F_n\} は増大列だから,

  B=\lim_{n\to\infty}F_n=\sum_{i=1}^\infty E_i
と置けば,B は集合 \mathrm{C} の単純和で,
(8)
\bar{m}(A-B)=0.
実際,n を決めておいて,任意に r>n を取れば,F_r\subset B,A_n\subset A_r から

  A_n-B\subset A_n-F_r\subset A_r-F_r,

  \bar{m}(A_n-B)\leqq\bar{m}(A_r-F_r)<\frac{1}{r}.
r は任意であったから,\bar{m}(A-B)=0 を得る.これから \textstyle A-B=\bigcup_n(A_n-B) を用いて

  \bar{m}(A-B)\leqq\sum_n\bar{m}(A_n-B)=0
を得る.よって (8) が成り立ち,\textstyle B=\sum_{i=1}^\infty をもって,(1) を得る.

  1. c は正則性の指数 a に関係する定数.二次元では c=2a/\pi でよい.
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