解析概論/第9章/Riemann積分との比較

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[編集] 120.Riemann 積分との比較

Lebesgue 積分と Riemann 積分との関係を考察するに当って,解説を透明にするために,予備的の説明から始める.

R^n の有界なる集合 E において,有界なる任意の函数 f(x) が与えられているとする.点 x の近傍 U(すなわち x を内点とする開集合)と E との共通部分における f(x) の値の上限 \textstyle \sup_{x\in U}f(x)[* 1] U が縮小するとき,減少(不増大)するであろう.すべての U に関するそれの下限


  \bar{f}(x)=\inf_U(\sup_{x\in U}f(x))

は点 x において確定する.xE 内を動くとき,\bar{f}(x)E における函数である.大小の関係を逆にすれば,同様にして函数


  \underline{f\!}\,(x)=\sup_U(\inf_{x\in U}f(x))

が確定する.上記において任意の U の代りに,単調に x に収束する開区間の列 W_1\supset W_2\supset\cdots\supset W_n\supset\cdots を取ってもよい.任意の U の内に或る W_n が含まれ,また任意の W_n の内に或る U が含まれているから,それは明らかであろう.さて

\underline{f\!}\,(x)\leqq f(x)\leqq \bar{f}(x)

で,点 x_0 において f(x) が連続なることは,すなわち

\underline{f\!}\,(x_0)=f(x_0)=\bar{f}(x_0)

である.もしも等号が一方のみ成り立つときは f(x)x において半連続という(f=\bar{f} ならば上半連続,f=\underline{f\!} ならば下半連続). 今 E の全局において,一律に \bar{f}(x),\underline{f\!}\,(x) を定めるために §116 に述べたような基準格子系列 \{\mathrm{G}^{(n)}\} を取るならば,各点 x は格子 \mathrm{G}^{(n)} において一定の(半開)区間 w^{(n)} に属する.そこで


  M^{(n)}(x)=\sup_{x\in w^{(n)}}f(x),\quad
  m^{(n)}(x)=\inf_{x\in w^{(n)}}f(x)

と置けば[* 2]M^{(n)}(x),m^{(n)}(x) は階段的なる B 函数で,それらは,それぞれ,一定の x に関し,n と共に単調(広義)に減少または増大する.従って


  M(x)=\lim_{n\to\infty}M^{(n)}(x),\quad
  m(x)=\lim_{n\to\infty}m^{(n)}(x)

とすれば,M(x),m(x) も B 函数である(§107). さて M(x),m(x)\bar{f}(x),\underline{f\!}\,(x) との関係はどうであるか.もしも点 x が格子系列の各 \mathrm{G}^{(n)} において,区間 w^{(n)} の内点であるならば(上記の W_nw^{(n)} の開核を代用してもよいから)


  M(x)=\bar{f}(x),\quad m(x)=\underline{f\!}\,(x)

であるが,もしも x が或る \mathrm{G}^{(n)} において,従って \mathrm{G}^{(m)}\,(m\geqq n) において,区間 w^{(n)} の境界上(格子線上)にあるならば,(Uw^{(n)} に限定されるために)


  M(x)\leqq \bar{f}(x),\quad m(x)\geqq \underline{f\!}\,(x)

ではあるが,そのような除外点(すなわちすべての格子線上の点)は零集合(B 系)だから,

(1)

  M(x)\simeq \bar{f}(x),\quad m(x)\simeq \underline{f\!}\,(x).

従って \bar{f}(x),\underline{f\!}\,(x) は B 函数である[* 3]

以上を前置きとして,Riemann 積分の考察に移る.§90 に連絡して有界なる f(x) が有界なる区間 K において与えられているとする.§90 で述べたように,分割 \Delta は基準格子系列 \mathrm{G}^{(n)} によるものに限定してよいから,s_\Delta,S_\Delta の代りに s^{(n)},S^{(n)} と書く.そうすれば,それらは階段函数の L 積分として,次のように表わされる.


  S^{(n)}=\int_K M^{(n)}(x)dm,\quad s^{(n)}=\int_K m^{(n)}(x)dm,

従って n\to\infty の極限へ行って(定理 90),


  S=\int_K M(x)\,dm,\quad s=\int_K m(x)\,dm.

従って (1) から


  S=\int_K \bar{f}(x)\,dm,\quad s=\int_K \underline{f\!}\,(x)\,dm.

このように,Darboux の和 S,s は L 積分として表わされる.そこで,Riemann 積分可能の条件 S=s

\int_K(\bar{f}(x)-\underline{f\!}\,(x))dm=0

であるが,\bar{f}(x)\geqq f(x)\geqq\underline{f\!}\,(x) だから,これは K において

\bar{f}(x)\simeq f(x)\simeq \underline{f\!}\,(x)

ということに帰する(§115).換言すれば:

定理 112.
有界なる区間 K において有界なる f(x)Riemann 積分が可能なるために必要かつ十分なる条件は,K における f(x) の不連続点が零集合をなることである.その場合 Riemann 積分は Lebesgue 積分に等しい. この意味において Lebesgue 積分は Riemann 積分の拡張である.
零集合は区間を含みえない.Riemann 積分可能なる函数は,任意の区間内に連続点を有することを 96 頁で述べたが,それは当然である.Riemann 積分可能なる函数は,ほとんど各所連続である.
[注意] 
上記,Riemann 積分は本来の意味でいう.いわゆる広義積分で絶対収束をしないもの(一次元)は §109 の意身で \infty-\infty の形になって Lebesgue 積分としては成り立たない(例えば \textstyle\int_0^\infty \frac{\sin x}x dx=\infty-\infty).それを除けば,絶対収束の場合,広義の Riemann 積分は Lebesgue 積分である(§94 および定理 88 参照).

  1. \sup の下の x\in Ux\in U\cap E の意.以下同様.
  2. M^{(n)}(x) は,x\in w^{(n)} のとき t\in[w^{(n)}] に関する f(t)\sup の意.m^{(n)}(x) も同様.
  3. 格子系列の原点を動かしてみればわかる.
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