解析概論/第9章/III
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[編集] III.集合函数の微分法
[編集] 122.微分法の定義
において,集合函数
が与えられたとき,点
における
の密度ともいうべきものを考察して,
における点函数を導き出すことができる.例えば,
を中心とする
次元立方体(区間の意味でいう)を
として,
が
に収束するとき

の極限を考察する.そうして
のとき,

を点
における
の上・下微分商といい,両者が一致するとき,その共通の値

を単に微分商という.
が変動するとき,これらの微分商を点
の函数とみて,それを
の導函数という[* 1].
上記の定義において,
に収束させる
を立方体に限る必要はない.例えば,
を中心とする
次元の球としてもよい.これらはいわゆる対称的微分商であるが,最も一般には,
を含む任意の集合
を取ってもよい.ただし
なるとき,
の形に若干の制限を加えることが適切でもある.
があまりに極端な形を取ることを防ぐためには,集合
を包む最小の立方体を
として,

をかりに
の正則性の指数 と名づけて,それが
でないことを要求する.これは十分寛大な制限である.以下,我々は
に収束する閉集合の列
において,
が一定の正数(
)よりも小でないとき,
を正則といい,
の下限
を
の正則性の指数という[* 2].
以下,集合函数
は少なくともすべての B 集合に対して定義されているものとし,また微分商に関しては
に収束する集合
を正則なる閉集合に限定して


を一般的に上,下,または単に導函数という.極限値として
を許容すれば,
は各点
において確定するが,
は必らずしも存在しない.
が存在するとき,
は
において微分可能であるという.通例は
を要求するが,広義では
をも許容する.
導函数を導くために集合
に課せられる制限が加重するに従って,
は増大(不減少)し,
は減少(不増大)することは当然である.
の意味は明瞭であろうけれども,念のために説明をする.簡明のために
を
と略記する.
を含んで
に収束する正則なる閉集合を一般的に
と書いたのだが,なお精密に
を中心とする半径
の円(二次元に即していう)に含まれる
の全体を
とする(点
をも正則なる閉集合と見られないでもなかろうが,それは
から除外する).そうして
に属する
に対する
の値の集合(値域)の上限を
とすれば,それは
が減少するに従って単調に減少する.そこで
とすれば,

これが (1) の意味である.
はまた数列の
に基づいて

としても定義される.ここで
は
に収束する正則なる閉集合の列である.(3) は (1) の左の式と同等である.実際,まず
を含む上記の円の最小半径を
とすれば
.従って
.故に
.
さて,一方において,
とすれば,
なる
があるが,
の極限へ行って
,
は任意に取れるから
.すなわち (3) における
は実は
で,
は或る集合列
に関する
に等しい.
に関しても同様である.
- ↑ 微分法,微分商,導函数は,意味よりも言葉の響きにたよって,仮用する.元来,点
における
等も,その
を動かして生ずる点函数
等も,統一的に dérivée(導き出されたもの)と呼ぶフランス式が最も簡潔である.この意味では,
を(微分商の代りに)導来数,
を導来函数,また集合函数
から点函数
を導き出す算法を(微分法の代りに)導出法(derivation)とでもいうべきであろう.ここでは,単独に‘微分’というものはない.従って微分係数も困る.我々は思想の実質を重視して,用語の詮議にあまり多くの関心を有しないが,
など,明確な表現があるから,安心である! - ↑
だけが要求される場合,
の定義において
を,立方体の代りに,球にしてもよい.
[編集] 123.Vitali の被覆定理
において任意の集合
の各点
に収束する正則なる閉集合の列が与えられたとき,それらの集合の中から単純列
を抽き出して,それだけで,ほとんど全く
を覆うことができる.すなわち
に含まれない
の点は零集合を成すのである:

と総称する.
は有界で,集合
に正則性の指数は一定の正数
より大きいとする.
を含む一つの有界なる開集合を
として,集合
は
に含まれるもののみをとっても差し支えない.
から任意に一つの集合
を取り出して,
に触れない集合
の径の上限を
とし,それらの集合
の中から
の径
なる一つの集合
を取り出す.同じようにして,次々に
を定めて行く.すなわちすでに
までが定められたとき,
なる閉集合がまだ全く
を覆っていないならば,それに触れない集合
の径の上限
だから,その中から
なる
が取り出されるのである.このようにして,
から取り出される有限または無限の単純列
が定理の条件 (1) に適合するのである.
まず仮定によって,
を包んで
なる円
があるが[* 1],
だから,
は収束する.従って
のとき,(円
の直径)
,故に
.
さて,
に属して
に属しない点
があるとして,その
に収束する集合
の中の任意の一つを
とすれば,
は
の中のどれかと交わる.――さもなければ,すべての
に対して
で,
に矛盾する.

を同心の
にまで
倍(
,後述)に拡大するとき,
は収束するから,十分大きい
に対して,


がある.この点
は
に属しないから,
を含んで
に交わらない
の集合
があるが,前にいったように,
は
の中のどれかと交わるのだから,
の中で
と交わる最初のものを
とすれば,
で,
は
とは交わらない.従って

は
には属しないのだから,
は
の外部の点
を含む.また
は
内にある
と交わるから,
の内部の点をも含む.従って

とすれば,これは (3) と矛盾する.すなわち
は不合理である.故に (1) が成り立つ.
を中心とする半径
の円の内部を
とする.
の点
が
に含まれ,かつ
に収束する
の集合列の正則性の指数が
よりも大きいとして,そのような点
の集合を
とする.従って
は増大列で,
. さて 1º によって,集合
の単純和
でほとんど
が覆われる.すなわち

は有界だから
は収束する.よって十分大きく
を取って

と置くとき



は開集合
に含まれ,その各点に正則性の指数が
より大きい集合
の列が収束するから,前と同じようにして,それらの
集合の中から単純なる有限列
を取り出して

は閉集合
の外にあるから,

は集合
の有限単純列で,

から始めて,どこまでも続けられるから,記号を変えて,集合
の或る単純列
に関し,各〻の
に対して,(6) が成り立つと見てよい.そのとき,(7) によって
は増大列だから,

は集合
の単純和で,

を決めておいて,任意に
を取れば,
から


は任意であったから,
を得る.これから
を用いて

をもって,(1) を得る.- ↑
は正則性の指数
に関係する定数.二次元では
でよい.
[編集] 124.加法的集合函数の微分法
準備として,B 集合に関する次の考察を挿入する.
を正なる加法的集合函数[* 1]とする.一般的に開集合を
,閉集合を
で表せば,

であるが,B 集合
に関しては

が成り立つ.それを見るために,(1) を成立せしめる L 集合
の一類を
とする.
任意の閉区間
は
に属する.実際,
なる列
があるから,定理 95によって,

さて,
は σ 系をなす.
から
だから,
と共に余集合
が
に属する.次に,
とすれば,
である.実際,
とすれば,(1) によって,
から

なる
がある.今,
とすれば,


然るに
は閉集合の増加列の極限だから,

なる
があって(定理 95),
である.すなわち

なる
がある.
は任意だから,(1) が成り立ち,
である.
任意の閉区間が
に属するから,
は少なくともすべての B 集合を含む.すなわち
が B 集合なら (1) が成り立つ.
を正なる加法的集合函数とし,任意の集合
の各点において
とすれば,
で,
を含む B 集合
関して,
.
を集合
を含む B 集合とする.然らば,任意の
に対応して,(1) によって,

なる開集合
がある.また任意に
なる
を取れば,仮定によって,
の各点
に収束する正則なる閉集合
の列があって,
.これらの集合の中から
に含まれる単純列
を取って,ほとんど
を覆うことができる(定理 113).故に (2) から

仮定により
だから
,また
は任意,
も任意だから,
.
において
ならば,
.実際,この場合,任意の
に関して
.
は有限だから
.
は前の定理の通りとする.任意の集合
において
,ならば,ほとんど
を覆う B 集合
が存在して

として証明すればよい.そのとき任意の
に対して,

とする.
とすれば,仮定によって,
の各点に収束する正則なる閉集合
の列があって,
だが,それらのうち,
に含まれる単純列
を取って,ほとんど
を覆うことができる(定理 113).そこで
とすれば

今,
に対応する
を
と書いて,改めて
とする.すなわち

従って
とすれば,

を加法的なる集合函数とする.今

なる点
の集合を
とする.もしも
とするならば,或る有理数
に関して

なる点
の集合を
とするとき,
.また,
(定理 114).
然らば,ほとんど
を覆う或る B 集合
に関して(定理 115)

一方,
から(定理 114)

従って

だから,これは不合理である.故に
,すなわち

の符号が一定でないならば,

で,
.故に定理は成り立つ.
が加法的集合函数の単調列で,

ならば

を増大列として,

と置けば(減少列の場合には
と置く),
で,
は減少列である.故に
も
に関して減少列である.そこで

を示せばよい.
もしも,これが真でないとするならば,或る
に関して

なる集合
が存在すべきである.然らば(定理 114),
なる任意の B 集合
に対して,

だからこれは不合理である.
は加法的で,L 集合
の内で常に 0 に等しいとする.すなわち
ならば
.然らば,
において
.
として十分である.或る B 集合
をとって,
とする(§117).
かつ
なる
の集合を
とすれば,
(定理 114).仮定により
だから,
.さて,
なる
の集合は
の合併であるから,それは零集合である.故に
において
.然るに
だから,
において
.
に関しては
.- ↑ L 集合に対して定義される,完全に加法的で,有限なる集合函数の意.以下同様.
はもちろん L 測度である.
[編集] 125.不定積分の微分法
の定義函数を
として,
と書けば,

すなわち
の内では
,余集合
の内では
.
と置けば

故に
が微分可能なる点において,すなわち,ほとんど各所(定理 116),

さて,
においては
.従って(定理 118)
.また
においては
,従って
,従って (1) から
.[* 1]
を積分可能(有限)なる点函数,

とすれば,

の導函数
は積分可能で,
は
の不定積分と一つの特異函数との和に等しい.右辺の積分において,
内の或る零集合
では
が存在しないこともありうるが,そのような
は積分範囲
から除くべきである.それを了解の上で,上記のように書いた.
は常に存在して,

であるから,積分記号の下へ
または
を入れてもよい.
以上,我々は
を 446 頁に述べた一般的の意味に取ったが,あるいはそれを狭義にしても,結果は同じである.狭い意味を,かりに記号
で示せば,

[編集] 126.有界変動・絶対連続の点函数
において加法的なる集合函数
に対応して点函数
が定義される.すなわち
なるとき
とするのである.今最も興味ある場合として,
を連続と仮定する.すなわち
なるとき
とするのである.
は集合
の径,すなわち
においては,
を含む区間の幅(長さ)の下限である.故に
が一点から成り立つとき,
で,
は点函数として連続である.
さて,
が有界なる
に対して有限,したがって有界(定理 94)であることを仮定するならば,
に対応する
は
において有界変動である.
の正負の変分
および絶対変分
に対応する点函数を,それぞれ
および
と書けば,

で,
は単調増大である(§111). さて,
を既述の意味([[解析概論/第9章/絶対連続性 特異性|§112)で絶対連続とする.すなわち
なるとき,
.
の加法性のために,それは
のとき,
を意味するのであった(419 頁).
のこの絶対連続性は,それに対応する点函数
の性質として次のようにいい表わされる.――今互に重なり合わない小区間
の有限列の合併を
とし,それら小区間
における
の変動の絶対値の和を

と書くならば,

で,
の絶対連続性によって,
のとき,
.詳しくいえば,任意の
に対応して
が定められて,
なるとき 
ならしめうるのである.函数
のこの性質を Vitali が絶対連続と名づけた.これが絶対連続という用語の由来である.すなわち,Vitali の意味で絶対連続なる点函数に対応する集合函数
が絶対連続と名づけられたのである.
逆に
が絶対連続ならば,
も絶対連続である.――まず
が絶対連続だから,(1) において
を固定して,それに対応する
を取って,任意の区間を長さが
を超えない小区間に分けて,それらの区間の数を
とするならば,その区間における任意の小区間群
に関して,
だから,
は有界変動である.故に
が単調増大なる場合を考慮すればよいが,そのとき
だから,今
とするならば,
なる開集合
の列があって,
.故に
.すなわち
は絶対連続である.
同様の意味で,特異なる集合函数
に対応する点函数
をも特異というならば,
に関しては,
を任意の区間とするとき,任意の
に対して
で,
なる区間列
が
内に存在する.
において
を連続とする.その区間内で
を固定し,
を動かして,





は‘
’の略記,
は‘
’の略記である.もしも 1),2) が一致するならば,その共通の値を
と書く.それは
における
の右への微分商である.同様に3),4)が一致すれば,その共通の値
は左への微分商である.もしも 1)―4)がすべて一致すれば,その共通の値
はすなわち
における
の微分商で,その場合
は
において微分可能である.狭い意味では,
が有限なることを要求し,広い意味では
をも許容する.
今,
が集合函数
に対応するとするならば,1)―4)は §122 に述べた
の微分商の特別の場合,あそこの
を
または
に限定した場合で,これらの
の正則性の指数は
である.
このように
が限定された結果として,導函数は B 函数である.例えば
に関していえば
の意味によって,
を有理数に限ってもよいが,
の連続性から,
は
に関して連続で、
は連続函数列の
として B 函数である(§117).
以上を前置きとして,
を区間
において連続かつ有界変動として,
に対応する(完全)加法的集合函数
(§121 参照)に §§124,125 の定理を適用すれば,次のような結果が得られる.
において連続かつ有界変動なる函数
は,ほとんど常に微分可能で,微分商はほとんど常に有限である.
において
が連続かつ有界変動ならば,
によって定義される曲線はほとんど各点で接線を有する.
の点を
とすれば

は前頁 1)―4)の四つの微分商の中のどれでもよい.
は
における L 積分で,
は特異函数である. 特に
が
の Lebesgue の意味の不定積分であるためには,
が絶対連続であることが必要かつ十分である.最後に,特異函数
のなるべく手近な実例を作るために,§115 に述べた三進集合
を考察する.区間
において三進集合
を作るために,次々に
から取り去った区間は第
回には
個であったが,それらの区間において
の値を左から順に
とする.すべての
に関して,このように
の値を決めるならば,
は
において稠密に分布される
(余集合)において決定するが,それを
において連続なる
に拡張することができる.この
は
において単調に
から
まで増大し,零集合
以外の各点では
.
の点では一般に
であるが,
を組成する区間の端では,右または左への微分商が
になるであろう.
における
等も,その
から点函数
など,明確な表現があるから,安心である!
だけが要求される場合,
の定義において
は正則性の指数
でよい.
とする.ただし
は
だから,これは全空間で成り立つ.
はもちろん L 測度である.
なるとき,
とする.然らば
を
の定義函数とすれば,



として証明すればよいから,
の増大列の極限とする(



は特異函数である.故に